◆あと何日、何週、何カ月生きるか予測しグループ分け
解析の対象は、2012年から2014年に全国の58医療機関が提供する緩和ケアを病院または自宅で受けた進行がん患者2,069人です。
これらの患者を、あとどれくらい生きるかを予測する指標に基づいて、以下の3グループに分けました。
- あと何日か生きると予測されたグループ
- あと何週か生きると予測されたグループ
- あと何カ月か生きると予測されたグループ
これらのグループ別に、病院で亡くなった患者と自宅で亡くなった患者が生きた日数を比較しました。
◆自宅のほうが生きた日数が長かった
解析から次の結果が得られました。
予後が日単位と予測された群では[...]、自宅で亡くなった患者群のほうが病院で亡くなった患者群に比べて生存期間は有意に長かった(推定生存期間の中央値 13日間(95%信頼区間10.3日間-15.7日間))vs 9日間(8.0日間-10.0日間、p=0.006)。
予後が週単位と予測された群でも、自宅で亡くなった患者群のほうが病院で亡くなった患者群に比べて生存期間は有意に長かった(推定生存期間の中央値 36日間(95%信頼区間29.9日間-42.1日間)vs 29日間(26.3日間-31.5日間、p=0.007)。
予後が月単位と予測された群では、生存期間に有意な差は見られなかった。
あと何日か、何週か生きると予測された患者では、病院よりも自宅で亡くなった患者のほうが、少し長く生きたことが分かりました。あと何カ月か生きると予測された患者では、自宅で亡くなった患者と病院で亡くなった患者の生きた日数に差はありませんでした。
◆患者・家族への説明に活用
がん患者がどれくらい生きるかには、がんの重症度、進行度、受けているケアなどが影響します。この研究は、研究に関わった筑波大学・神戸大学によるプレスリリース(https://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/160401hamano.pdf)にあるように、これらの要因を考慮しておらず、ランダム化比較試験でもありません。したがって、この研究から「自宅のほうが長生きできる」とは必ずしも言えません。
ただし、プレスリリースでは、「これらの知見は、『退院して自宅に戻ることが生存期間を縮めるのではないかと心配する臨床医や患者、家族に対して、「最期を迎える場によって生存期間が短くなる可能性は低い』という説明に活用できる」との考えが記されています。
執筆者
Multicenter cohort study on the survival time of cancer patients dying at home or in a hospital: Does place matter?
Cancer. 2016 Mar 28. [Epub ahead of print]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27018875※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。