2016.02.11 | コラム

うつ病で休職してから仕事復帰するまで

うつ病と復職について

うつ病で休職してから仕事復帰するまでの写真
1. うつ病で休職・退職する人はどれくらいいるのか?
2. うつ病治療の中で休職にはどんな役割があるか
3. うつ病で休職した後、仕事復帰/復職するまでの流れ

仕事、職場で頑張って働いているさなか、うつ病発症により、休職や退職となる人もいます。仕事に復帰するためにはどのような準備が必要なのでしょうか。家族など周囲の人も知っておくと良いことを解説します。

 

◆うつ病で休職・退職する人はどれくらいいるのか?

うつ病は、気分が落ち込んだり、物事への関心が低くなったりと様々な症状が見られる病気です。正確には「うつ症状」を特徴とする病気はうつ病だけではなく、また気分の落ち込みと「うつ」は同じではありません。さらに仕事や日常生活に影響するようなメンタルヘルスの問題は「うつ」以外にもさまざまです。とはいえ、「うつ」やうつ病を経験する人の数は非常に多く、また仕事のストレスなどとも関係することから、やはりうつ病は働く年代の多くの人にとって身近な問題と言えます。

うつ病が発症する人の数は、正確に把握されているわけではありません。さまざまな報告がありますが、たとえば厚生労働省による「患者調査」(平成26年)では、「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」に分類される患者の調査日1日あたりの数を推計しています。その人数はおよそ入院で2万8千800人、外来で8万3千400人とされています。気分障害にあたる代表的な病気のひとつであるうつ病で診察を受けている人も、この中に含まれています。さらに、この推計は5年ごとの年齢階級別にも計算されていて、幅広くどの年代にも患者がいるとされる中でも35歳から74歳で多く、うち40歳から44歳で最も推計人数が多くなっています。うつ病が一般に幅広い年代で発症すること、また仕事との関係が小さくないこととも一致する傾向です。

うつ病などのメンタルヘルスの問題で休職や退職が必要となる人は少なくありません。厚生労働省による「労働安全衛生調査」(平成28年)では、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休職した労働者の割合は0.4%、退職した労働者の割合は0.2%とされています。平成27年には労働安全衛生法の改正に基づいてストレスチェックが義務化されるなど、仕事の中でのメンタルヘルスに対して社会の関心が高まっています。

 

◆うつ病治療の中で休職にはどんな役割があるか

うつ病で休職が必要なほどの症状が現れてから、休養や治療で回復するまでには時間がかかります。その間は本人が主治医と相談して治療の見通しを立てることに加えて、家族や職場の理解と協力も非常に大切です。

うつ病の治療効果には個人差があります。中には薬などの治療をしても症状が残る人や、一度よくなった症状が再燃・再発する人もいます。休職についても、ただ休めば良いとは限りません。『日本うつ病学会治療ガイドライン』は、休職のメリットとデメリットの両方を指摘した意見を取り上げています。そこでは休職によって職業上のストレスなどを避けられるメリットの反面、職場で人と触れ合うことがなくなって孤立すること、長く休むことで復職への不安が高まることなどがありえるとされています。

主治医とよく相談して、病気の状態や生活環境など個人の状況に合わせ、休職を含めた治療の方針を決める必要があります。

 

◆うつ病で休職した後、仕事復帰/復職するまでの流れ

休職から仕事復帰/復職までの流れを説明します。

まず休養や薬物治療により症状の改善が見られた段階で、本人と主治医とで復職の意識確認をすることから始まります。主治医は、本人の病状から復職までの計画を立てます。その際、主治医に業務内容や通勤時間などの情報を提供することが必要です。また産業医等にも情報を提供することで、職場復帰支援の判断材料としてもらえる場合があります。適切な情報が作業管理や作業環境管理の改善に役立つ場合もあります。

治療の中では、復職に必要な生活リズムの改善や体力の改善を図ります。具体的には、通勤時間に合わせた生活をする、家事を行う、散歩や軽い運動を取り入れるなど、復職を意識した日常生活を送ります。

また医療機関などが行っている復職支援プログラム(リワーク)を利用できる場合もあります。

仕事復帰の準備が進んだ段階で、主治医の診察を受けて、復職が可能かどうか判断することになります。主治医の意見や産業医の意見、事業者の意見を合わせて復帰が判断されます。完全に元の働き方に戻る前に「試し出勤」などの段階を踏む方法もあります。また配置転換、業務内容の変更などの配慮が検討できる場合もあります。

いろいろ工夫をしても計画どおりに復帰が進まないこともあります。また復帰してから症状が再燃する場合もあります。そのため復職後も引き続き注意する点について主治医などと相談しておく必要があります。

 

仕事をしていてうつ病が発症し、休職すると、焦る気持ちや不安な気持ちに駆られるかもしれません。主治医、家族、職場と相談して、無理をせず回復に努めながら、仕事に復帰していく手段を柔軟に模索していくことが大事です。

 

参考:厚生労働省・労働者健康福祉機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

注:この記事は2016年2月11日に公開されましたが、2018年2月9日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

MEDLEY編集部

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る