2015.10.22 | ニュース

インフルエンザは症状が出ていない人からも感染するのか?

香港で感染者を観察

from The Journal of infectious diseases

インフルエンザは症状が出ていない人からも感染するのか?の写真

咳やくしゃみがインフルエンザの感染を広げるとよく言われますが、潜伏期間にある人からも感染が広がる恐れはあるのでしょうか。香港の研究班が、症状の経過とともにウイルスの検査を行った結果を報告した、2010年の論文を紹介します。

◆インフルエンザにかかった人の家族に感染がどのように広がったか

研究班は、香港で健康な人を対象として、インフルエンザの感染について追跡調査を行いました。

症状と迅速検査からインフルエンザと見られた人が見つかった場合に、その人の家族に感染がどのように広がるかを調べるため、家族の全員について、症状があるかないかにかかわらず、鼻とのどから取ったサンプルにインフルエンザウイルスがいるかを調べました。

検査は日を開けて3回行い、インフルエンザの症状が現れるよりも前にインフルエンザウイルスが体から排出されているかどうかを推定しました。

 

◆症状が始まる前は「1%から8%」

次の結果が得られました。

ウイルス排出の大部分は症状が始まってから最初の2から3日間に起こった。我々は、症状が始まるよりも前に感染源性の1%から8%は発生すると推定した。RT-PCRでウイルス排出が検出できた感染例の14%だけが無症候性であり、これらの症例ではウイルス排出量が少なかった。

インフルエンザに感染した人がウイルスを排出するのは主に症状が始まったあとでした。ウイルスが見つかった人のうち症状が現れなかった人は14%であり、それらの人はウイルス排出の量が少ない傾向が見られました。

研究班は「この結果は、『静かな拡散者』、すなわち症状がないかまだ現れていない人で感染のもとになりうる人は、インフルエンザの流行の拡大において以前に考えられていたよりも重要でないことを示唆する」と述べています。

 

潜伏期間を心配するよりも、症状が現れたときに素早く気付くことが、感染予防のためには重要なのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Viral shedding and clinical illness in naturally acquired influenza virus infections.

J Infect Dis. 2010 May 15

[PMID: 20377412]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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