◆16の研究を統合し、脳梗塞に対するアスピリンの予防効果を検証
アスピリンの使用は出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)のリスクを高くすることが知られています。しかし、血の固まりができることで起こる心筋梗塞や脳梗塞を防ぐと考えられるため、それ以上の効果がある可能性も考えられます。
今回の研究は、最低1ヶ月のアスピリン投薬を行ったときについて、その後の脳卒中発症率を検証した論文をまとめ、アスピリンの効果を検証しました。
脳卒中は出血性脳卒中と虚血性脳卒中(脳梗塞)に分けられます。アスピリンは出血性脳卒中を増やす方向に、また虚血性脳卒中を減らす方向に働くことが予想できます。
◆心筋梗塞、虚血性脳卒中のリスクは減少、出血性脳卒中のリスクは増大
調査の結果、以下のことを報告しました。
アスピリンの平均用量は273mg/d、治療期間は37ヶ月であった。
アスピリン治療は、心筋梗塞で10,000人あたり137イベント(95%信頼区間107-167、p<.001)、虚血性脳卒中で10,000人あたり39イベント(95%信頼区間17-61、p<.001)の絶対リスク減少と関連していた。
しかしながら、アスピリン治療により、出血性脳卒中における10,000人あたり12イベントの絶対リスク増加(95%信頼区間5-20、p<.001)と関連していた。
アスピリン治療により、1万人あたり心筋梗塞では137、虚血性脳卒中では39の疾患発症を減らす一方で、出血性脳卒中は1万人あたり12の疾患発症を増やすという結果でした。
この結果をうけて著者らは、「これらの結果は、アスピリン治療が出血性脳卒中のリスクを増やすことを示しているが、多くの患者では、心筋梗塞と虚血性脳卒中に対するアスピリン使用の全体利益は、出血性脳卒中の有害作用に勝るであろう。」と述べています。
アスピリンは、出血性脳卒中のリスクを上げますが、メリットとデメリットを考えたうえで使用するのが良いという論文でした。この論文などを参照して、『脳卒中治療ガイドライン2015』では脳梗塞再発予防にアスピリンの使用を勧めています。
執筆者
Aspirin and risk of hemorrhagic stroke: a meta-analysis of randomized controlled trials.
JAMA. 1998 Dec
[PMID: 99851479]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。