◆慢性肝障害患者を経皮肝生検群と腹腔鏡下肝生検群にランダムに振り分け
今回の研究では、代償性の慢性肝障害患者126名を、体表上から針で肝生検(経皮肝生検)を行う群と、腹腔鏡を見ながら肝生検(腹腔鏡下肝生検)を行う群にランダムに振り分け、肝硬変の診断率を比較しました。
経皮肝生検では、生検の結果が確定的でないとき診断ができなかったと評価し、加えて腹腔鏡下肝生検を行うなどの方法で診断を確定させました。腹腔鏡下肝生検では、腹腔鏡で肝臓の表面を観察した結果と、腹腔鏡を見ながら行った肝生検の結果をあわせて診断を行いました。
◆経皮肝生検群では18%の見逃し
調査の結果、以下のことを報告しました。
経皮肝生検群では、肝硬変を正しく検出または除外できていた患者は52名であった(82%)。
腹腔鏡下肝生検群では、すべての患者において、肝硬変の有無を診断した。
経皮肝生検群の18%では、肝硬変の有無を正しく診断できず、腹腔鏡下肝生検を行う方が診断精度が高いという結果でした。
著者らは、「経皮肝生検では20%の肝硬変の見逃しがあるかもしれないため、食道静脈瘤がない患者では、腹腔鏡下肝生検が肝臓の構造を評価するための検査として選択されるべきである。」と結論付けています。
今回の結果とその他の論文を踏まえ、肝硬変診療ガイドラインでは「腹腔鏡による肉眼的観察と組織学的検査を併用すると正診率は20~30%上がる」と記載されています。
しかし、一方で、肝硬変診療ガイドラインおよび慢性肝炎・肝硬変の診療ガイドで引用している論文のなかには、腹腔鏡下肝生検でもエラーが見られるという結果の論文もあります。また、検査の選択にはその正確性だけでなく、安全性や簡便性など様々な要素を加味して判断する必要があります。そしてガイドラインには「腹腔鏡検査や肝生検は肝硬変の診断に有用だがその正確さは80%止まりである」と記載されており、今回の腹腔鏡下生検の併用が100%であったという結果は、あくまで参考程度に留めておくべきかもしれません。
執筆者
Percutaneous blind biopsy versus laparoscopy with guided biopsy in diagnosis of cirrhosis. A prospective, randomized trial.
Dig Dis Sci. 1983 Jan
[PMID: 6217961]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。