◆イギリスの発症例から
研究班は、イギリスの診療データベースを参照し、若年性特発性関節炎を新たに発症した子どもの情報を統計解析しました。
◆抗菌薬使用で発症増加
次の結果が得られました。
任意の抗菌薬曝露が、若年性特発性関節炎の発症率の増加と関連した(調整オッズ比2.1、95%信頼区間1.2-3.5)。
対照的に、抗菌薬以外の抗微生物薬、すなわち抗真菌薬と抗ウイルス薬は、若年性特発性関節炎とは関連しなかった。
種類を問わず、抗菌薬を使った子どもでは、その後に若年性特発性関節炎を発症する率が高くなっていました。しかし、細菌の治療に使う抗菌薬ではない、真菌(カビ)やウイルスの感染に対して使われる薬を使った子どもには、この傾向は見られませんでした。
この結果から、研究班は「抗菌薬曝露は若年性特発性関節炎の病態発生において何らかの役割を、可能性としては微生物叢の変化を介して、果たすかもしれない」と推論しています。
人間の体には、腸などさまざまな場所で、つねに住み着いている細菌がいます。それらは普段は異常に増殖したり病気を起こすことがなく、むしろ細菌どうしのバランスによって、正常な免疫の働きに貢献していると言われています。抗菌薬を使うことでこのバランスが崩れて起こる病気も知られています。
この研究の結果に対して、細菌のバランスが崩れることで若年性特発性関節炎に関係するという解釈に強い根拠はありません。とはいえ刺激的な解釈であり、抗菌薬が本当に発症のしくみに関わっているのかどうか、気になる結果です。
執筆者
Antibiotic Exposure and Juvenile Idiopathic Arthritis: A Case-Control Study.
Pediatrics. 2015 Jul 20 [Epub ahead of print]
[PMID: 26195533]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。