2015.05.14 | ニュース

痛みの管理によって認知症患者の行動障害が減らせる?

英国の研究チームが、痛みと精神・行動評価を行い分析

from Pain

痛みの管理によって認知症患者の行動障害が減らせる?の写真

認知症では記憶などの認知機能が落ちるだけでなく、徘徊や失行などの行動障害が起こります。行動障害は、患者さんのケアを難しくさせる要因になります。行動障害の起こりやすさは、もともとの本人の性格や置かれている環境など、様々な要因が関わっています。今回、英国の研究チームは、認知症患者さんにおいて、痛みと行動障害に関連があることを報告しました。

◆痛みと精神、行動評価を行う

英国の病院2施設に入院していた70歳以上の230人を対象に、入院時および4日ごとに以下の評価を行いました。

  • 自己報告の痛み: はい/いいえの質問票とFACE scaleを用いる
  • 運動時および安静時の観察される痛み: PAINADを用いる
  • 興奮状態: CMAI評価を用いる
  • BPSD(行動・精神症状): BEHAVE-AD(アルツハイマー病の行動評価スケール)を用いる

 

◎BPSDとは?

認知症には大きく記憶障害や時間や場所などの理解ができなくなるといった症状と、徘徊やもの盗られ妄想などの、行動や精神状態に現れる症状があります。 この行動や精神の症状を、BPSD(Behavioral and Psychological Symtoms of Dementia)と呼ぶことがあります。

 

◆痛みとBPSDに関連あり

参加者のうち入院中に痛みがあった人の割合は以下のとおりです。

参加者のうち、評価項目のうちどれか1つ以上の状況で痛みがあると自己報告した人の割合は入院時は27%で、入院中に39%まで上昇した。

参加者の半数はFACES scale評価を行うことができたが、この割合は認知症の症状がより重いほど減少した。

PAINADを使用した評価で、安静時に痛みがあった人の割合は19%、動作時のどれか1つ以上の状況で痛みがあった人は57%だった(入院中通して「痛みがある」という評価が持続したのは16%)。

痛みとBPSDの関連については以下の結果となりました。

痛みはCMAIスコアと関連していなかったが、BEHAVE-ADのトータルスコアと強く関連しており、動作時の痛み(β = 0.20、95%信頼区間0.07-0.32、P = 0.002)および安静時の痛み(β = 0.41、95%信頼区間0.14-0.69、P = 0.003)においてもみられた。

この関連は興奮、不安が最も強かった。

研究チームは「痛みの管理を向上させることで悩まされる行動を減らせるかもしれない、また認知症患者の病院でのケアの質を向上させるかもしれない」と述べています。

 

今回の研究では、痛みの管理を行うことで認知症患者の行動障害を減らせるかということまでは分かっていませんが、痛みを抑えるということが患者さんのためにも、その周りの方々のためにもなるのであれば素晴らしいですね。

現場で働いていらっしゃる方は、どのような感想をお持ちでしょうか?

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Pain, agitation, and behavioural problems in people with dementia admitted to general hospital wards: a longitudinal cohort study.

Pain. 2015 Apr

[PMID: 25790457]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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