◆これまでのランダム化研究などを収集
研究班は、成人男性を対象に早漏の治療法の効果を検証した「ランダム化研究」というタイプの研究102件ほかを論文データベースから集めました。
それぞれの研究で検討された治療法の効果を、挿入から射精までの時間 (IELT) で評価し、あわせて性的満足や射精のコントロールなどの結果に変化があるかどうか、また副作用についても情報を集めました。
◆各種薬剤ほかの治療に効果あり
調べた研究の中で、IELTを改善する効果が報告されていたのは以下の薬品でした(2015年5月時点で日本では承認されていないものも含まれています)。
- リドカイン・プロトピカイン共融混合物のクリーム(局所麻酔薬)
- PSD502のスプレー(早漏治療薬)
- SSRI(抗うつ薬の一部)のうち、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン
- SNRI(抗うつ薬の一部)のうちズロキセチン
- 三環系抗うつ薬のうち吸入クロミプラミン
- PDE5阻害薬(勃起不全治療薬)のうちバルデナフィル、タダラフィル
- オピオイド鎮痛薬のうちトラマドール
また、検討された治療によるIELT以外の効果として、「SSRI、PDE5阻害薬、トラマドールで性的満足ほかの結果が偽薬よりも改善していた」ことが確かめられました。
これらと同列に比較できなかった研究結果の中でも、以下のように治療効果が報告されていました。
偽薬と比較されていなかった介入の結果は以下のとおり。
- 行動療法:IELTほかの結果が治療待機者リストにいた人と比べて改善した。行動療法と薬物治療の併用はどちらか片方よりもよい結果を出した。
- α遮断薬のテラゾシン:抗うつ薬と射精のコントロールに有意差なし。
- 鍼治療:偽の鍼治療に比べてIELTに改善あり、SSRIとの比較で矛盾する結果あり。
- 漢方治療:通常の治療に比べて改善あり。
- 射精遅延装置:「スタート・ストップ法」というトレーニング治療に加えて使われたときにIELTが改善。
- ヨガ:治療開始前に比べてIELTが改善。同じ研究で、フルオキセチンがヨガよりも有効。
また、副作用については「ほとんどの薬物治療について治療に関連した有害事象が確かめられた」という結果でした。
研究班は、これらの治療の有効性を認めつつ、次のように述べています。
しかし、初期治療の効果が長期的にも持続するかどうか、用量の追加が必要かどうか、治療終了後に治療効果がいつ失われるのか、治療を停止したあと再開することはできるのかを評価するためには、長期的な安全性と有効性の検証が必要とされる。加えて、有害事象と長期間の治療の関連、用量によって有害事象の内容や起こりやすさが変わるかどうかを検証することが必要である。
ここに挙がったさまざまな治療方法のどれかが、早漏に悩む男性とそのパートナーに朗報をもたらすかもしれませんが、詳しい用法・用量や、副作用について注意するべきことなど、まだ確かめられるべきことは多く残っています。治療方針の確立まで、ひとつひとつ情報が積み重なっていくことが期待されます。
執筆者
Interventions to treat premature ejaculation: a systematic review short report.
Health Technol Assess. 2015 Mar
[PMID: 25768099]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。