◆がん患者特有の「におい」に着目
今回、研究グループが着目したのは「におい」です。
がん患者には特有のにおいがあることが知られており、においの受容体を多く持つ線虫と、簡便な尿検査を組み合わせることによって、がんであるかどうかを判別できるのではないかと考えました。
研究グループは、被験者の尿を採集し(がん患者20例、健常者10例)、線虫ににおいを嗅がせ、行動分析を行いました。
◆がん細胞に引き寄せられる線虫
その結果、線虫は正常な細胞には避けるような「忌避行動」を、がん細胞には好んで近寄る「誘引行動」を示すことが判明しました。
追加実験により、嗅覚の神経を破壊した線虫では同様の行動が見られないことも分かっています。
また、診断精度を調べるための補足研究を通じ、今回の手法を用いれば、がん患者をきちんとがんと診断できる確率(感度)が95.8%、また、検査でがんではない人を正しくがんではないと診断できる確率(特異度)が95.0%でした。
この結果は、腫瘍マーカーなどの他の検査に比べ、圧倒的に良い、との結果を得ました。
また同グループによると、尿検査と線虫を用いれば、がんの診断を数千円で行うことができると述べています。
今回の手法では、がんの種類を特定することまではできていません。しかし同グループは現在、がんを種類を特定できるように研究を進めているようです。
精度が高く、かつ安価に検査ができるようになれば、今後のがん検診の選択肢の一つになるかもしれません。
執筆者
A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection.
PLoS One. 2015 Mar 11
[PMID: 25760772] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25760772※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。