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遺伝性血管性浮腫(HAE)
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最終更新: 2025.03.12
遺伝性血管性浮腫(HAE)の基礎知識
POINT 遺伝性血管性浮腫(HAE)とは
遺伝子の異常によって、体のさまざまな部位に腫れやむくみが生じる病気です。ブラジキ二ンという腫れを引き起こす物質が過剰になることが原因だと考えられています。この病気を発病する人は5万人に1人程度と考えられており、稀な病気だといえます。むくみや腫れは体のいたるところに現れ、特に注意が必要なのが気道(空気の通り道)に腫れが生じた場合です。重症化した場合には窒息する可能性があるので、医療機関での速やかな対応が必要となります。遺伝性血管性浮腫が心配な人はかかりつけのお医者さんに相談したり、専門的な医療機関を紹介してもらってください。
遺伝性血管性浮腫(HAE)について
- 腫れや
むくみ がさまざまな部位で発生するまれな病気 - 指定難病の申請をすることができる
- 5万人1人程度が発病すると報告されている
- 遺伝子の異常が原因だと考えられている
- 主に
補体 C1インヒビター(C1-INH)遺伝子の異常 - C1-INHの働きがなかったり低下しているためにブラジキニンというむくみの原因物質が過剰になり
症状 が生じる - 近年になって他の遺伝子の異常も発病に関与していることが分かってきている
- 詳しく調べても原因が分からないこともある
- 血縁関係がある家族に同じ病気をもっている人が全体の約3/4、残りの1/3の人は家族に病気の人を持たないとされている
- 常
染色体 顕性(優性)遺伝の病気だと考えられており、50%の確率で子どもに遺伝する 発作 を誘発する可能性がある要因として次のものが考えられている- 歯科治療
- 外傷(けが)
- 妊娠
- 生理
エストロゲン 含有薬剤- 精神的・肉体的ストレス(過労)
- 呼吸器などの
感染症
遺伝性血管性浮腫(HAE)の症状
- 全身に
むくみ や腫れが生じる 症状 が起こるのは皮膚だけではなく、口の中や消化管 (胃や腸)にも生じる- 腫れやむくみが生じた部位によって症状は変わる
- 胃や腸がむくんだ場合には腹痛やお腹の張りといった症状が現れる
- のどの粘膜がむくんだ場合には息苦しさや、飲み込みづらさなどの症状が現れる
- 症状が現れ始めて24時間後にピークを迎えることが多く、その後数日間、症状が出たり消えたりを繰り返す
- むくみの跡が残り続けることはほとんどない
- 10歳代から20歳代で病気が見つかることが多い
- 診断が確定している人で
発作 が起こった場合は重症化することがあるので、入院治療を検討する
遺伝性血管性浮腫(HAE)の検査・診断
問診 :症状 の詳細について(誘因 の有無や家族歴(家族に同じような症状になった人がいるか)など)- 身体診察
- 血液検査
補体 C1インヒビター(C1-INH)が正常に機能しているかどうかを調べる- 全身状態を把握する
遺伝性血管性浮腫(HAE)の治療法
発作 が起こった時の治療と発作を予防する治療の2つがある- 発作が起こった時の治療
むくみ の原因となるブラジキ二ンを抑える物質を投与する- C1-INH製剤(ベリナートPR)
- ブラジキニン B2 受容体拮抗薬イカチバント(フィラジル )
- 喉のむくみが命に危険を及ぼすので、気道の確保(気管挿管・気管切開)が必要になることがある
- 発作を予防する治療
- 歯科処置や手術など、発作を誘発する要因が予めわかっている場合には、C1-INH製剤(ベリナートPR)の予防投与を検討する
症状 に応じて予防薬(血漿カリクレイン阻害薬、ガラダシマブ(アナエブリ®)など)の定期的な投与も検討する