しんせいじいっかせいたこきゅう
新生児一過性多呼吸
生まれたての赤ちゃんの肺の中に水分が残っているために呼吸が苦しくなる状態。酸欠になり呼吸が早く荒くなる
3人の医師がチェック 9回の改訂 最終更新: 2022.10.25

新生児一過性多呼吸の基礎知識

POINT 新生児一過性多呼吸とは

生まれたてのあかちゃんの肺の中に水分が残っているために呼吸が苦しくなることです。酸素が不足するために、「呼吸の回数が多くなる」「うなるような呼吸をする」「皮膚の色が青白くなる」などの症状が現れます。診断には検査を必要としないことも多いですが、新生児一過性多呼吸が疑われる子どもにはレントゲン検査や血液検査などが行われます。まれに、呼吸を助ける管などが必要になりますが、ほとんどの子どもは2日から3日で自然に治ります。新生児一過性多呼吸になった子どもは出生後しばらく新生児科や小児科などで経過が見られることがあります。

新生児一過性多呼吸について

  • 生まれてすぐの赤ちゃんでみられる、肺の中に水分が残っているために呼吸が苦しくなる病気
    • お母さんのお腹の中では赤ちゃんは肺を使って息をしていない(へその緒が肺の代わり)
    • 胎児の肺は肺水という液体で満たされていて、生まれてすぐに肺水が吸収されて空気に置き換わることで呼吸を始める
    • この機序がうまくいかず、肺の中に水分が残ることで起こる
    • イメージとしてはおぼれているような状態になる
  • 陣痛が来る前に帝王切開を行った場合に多い
    • 陣痛により水分の吸収がすすむ
    • 狭い産道を通過する際に水分が絞られて肺の外に出る
  • 100回の出産に対して1回ほどの頻度で起こる病気
    • 新生児に起こる呼吸の病気で一番多い
  • 34週から正期産の赤ちゃんで多い
  • 数日以内に自然に回復し、後遺症が残ることはほとんどない

新生児一過性多呼吸の症状

  • 頻呼吸
    • 呼吸の回数が多くなる
  • 呻吟
    • 息を吐く時に、「うーうー」とうなるような声を上げる
  • 陥没呼吸
    • 呼吸が苦しいのをカバーするために、身体全体を使って呼吸する
    • 息を吸う時に一番下の肋骨の下や肋骨の間・両方の鎖骨の間などがへこむ
    • 肋骨が浮き出るようにみえる
  • 鼻翼呼吸
    • 息を吸う時に小鼻が膨らむ
  • チアノーゼ
    • 皮膚の色が青紫に変化する状態
    • 唇や手足の先で起こりやすい
    • 重症となり、血液内の酸素の値が低くなると起こる
  • 症状は生まれた直後から6時間以内に出てくる(1-2時間以内が多い)
    • いったん症状が完成した後は基本的にどんどん悪くなるものではない
    • どんどん悪くなる場合や急に状態が悪くなる場合には他の病気の可能性が高い

新生児一過性多呼吸の検査・診断

  • 他の病気が否定できて初めて診断できる
    • 感染などでも同じような症状になることがある
    • 新生児は症状が分かりにくいため様々な検査が必要となることがある
  • 週数やお産の状況、赤ちゃんの体の状況から疑う
  • 胸部X線レントゲン)写真
    • 肺の中に水分が残り、空気がうまく入っていないことを確認する
    • 気胸などを合併していないか確認するためにも必要
  • 血液検査
    • 他の原因がないか調べる

新生児一過性多呼吸の治療法

  • 根本的に肺から水分を取り除くような治療はないが、水分は2-3日で自然に吸収される
  • 「一過性」の病気であり、予後は良い
    • いったん肺の全てが空気に置き換われば、再度水分がたまることはない
  • 呼吸が苦しい期間をサポートする治療が必要となる
    • 呼吸が苦しい間は口から母乳やミルクを飲むのは延期する
  • 多くの例で酸素を使うだけで症状は良くなる
    • 小さな部屋(クベース)に酸素を入れて部屋全体の酸素濃度を少し上げる
  • 酸素投与だけで十分でない時には人工呼吸管理をする
    • 鼻だけを覆う形のマスクをつけて圧をかけて呼吸を手助けする(nCPAP)
    • 機械は圧をかけるだけで呼吸は赤ちゃんが自分でする
    • この際も同時に酸素を使うことが多い
  • ほとんどの場合、酸素投与とnCPAPだけで2-3日以内に改善する
  • 重症例では挿管が必要となることもある
    • 口から管を入れて、機械に呼吸を任せる(赤ちゃん自身の呼吸も0にはならない)
    • 挿管が必要になると、動いて管が抜けると危ないため鎮静(眠らせること)が必須になる
    • 肺サーファクタント充填療法(挿管の管を介して肺を膨らませるような成分を補充する)をすることもあるが、効果については議論が分かれる
  • 気胸合併することがまれにある(早産児より正期産児で多い)

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