じろう(こうもんしゅういのうよう)
痔瘻(肛門周囲膿瘍)
肛門の周囲にできた感染症によって膿が溜まった状態が悪化すると穴が空いて痔瘻になる
2人の医師がチェック 86回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 痔瘻(肛門周囲膿瘍)のQ&A

    肛門周囲膿瘍と痔瘻の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肛門周囲膿瘍、痔瘻(じろう)の原因は、細菌への感染です。肛門の内側には肛門腺と呼ばれる組織があり、そこに細菌が侵入して感染が起きます。細菌は周囲へ広がりながら炎症を引き起こし、化膿してうみが溜まります。この「うみが溜まった状態」を、肛門周囲膿瘍と呼びます。

    うみの溜まっている部分が広がってくると、最終的には肛門の周りや肛門奥の粘膜に辿り着き、皮膚(または粘膜)に穴が開いて、うみが外へ流れ出ることになります。このようにしてできた「出口」は、外から見ると肛門の周りに開いた小さな穴のように見えます。このトンネル状の穴のことを痔瘻と呼びます。

    以上が一般的な肛門周囲膿瘍と痔瘻のでき方です。ただし、クローン病や結核、HIV感染症などの影響で、細菌感染以外の原因で生じる痔瘻も一部に存在します。

    肛門周囲膿瘍や痔瘻は、どんな症状で発症するのですか?

    肛門周囲膿瘍は、肛門近くの腫れと痛みで発症します。患部が熱をもったり、発熱して全身の体温が上昇したりすることもあります。

    また痔瘻ができると、肛門周囲の穴の部分からうみが出てきて、しばしば下着に付着することなどがあります。全く症状のない時期もありますが、炎症が強まると、肛門周囲膿瘍と同じように痛み、腫れ、発熱といった症状が出現します。

    肛門周囲膿瘍、痔瘻は、どのように診断するのですか?

    肛門周囲膿瘍、痔瘻の診断は、問診(症状や経過の確認)と視診(肛門部を直接観察する)、指診(直腸診)が基本となります。

    肛門周囲に赤みや腫れ、またトンネル状の痔瘻の出口部分が見えていれば、診断が可能です。また指診(直腸診)と言って、指先を肛門内部に挿入する診察を行ったり、肛門鏡といって肛門を広げて内部を見やすくする器具を使用したりすることがあります。特に痔瘻の診断では、指診が重要になります。

    肛門周囲膿瘍の治療法について教えて下さい。

    肛門周囲膿瘍の治療の原則は、切開排膿とドレナージです。抗菌薬の効果は限定的ですが、使用したほうが良い場面もあります。

    参考:「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン(2014年版)日本大腸肛門病学会

    「切開排膿」と「ドレナージ」は、専門的な医学用語ですので、説明を補足します。

    • 切開排膿
      • 皮膚の裏側にうみが溜まっていると、いつまでたっても感染が良くなることがありません。一度うみを外に流し出してしまうことが、治療の上で重要となります。
      • 麻酔をかけてメスで腫れた部分を切開し、うみを流し出すことを「切開排膿」と言います。
      • 局所麻酔で行う場合と、下半身全体に効果のある腰椎麻酔で行う場合があります。
    • ドレナージ
      • 「ドレナージ」も切開排膿とよく似た言葉ですが、切開の有無にかかわらず、内部のうみが流れ出るようにすることをドレナージと言います。
      • 肛門周囲膿瘍の場合、切開とドレナージはセットであり、傷を開いてうみが流れ出ている状態そのものを指してドレナージと呼びます。
      • 切開直後だけでなく、その後数日間傷口が閉じずにうみが流れ続けるようにするため、ガーゼを傷口にいれておくなどの方法もあります。

    切開排膿を行わずに抗菌薬のみで肛門周囲膿瘍を完治させることは困難です。しかし周囲に炎症が広がっている場合(蜂窩織炎)や、全身に菌が広がっている場合(敗血症)、切開排膿だけでは症状が改善しない場合には、抗菌薬も併用します。これらの条件を満たさない一般的な肛門周囲膿瘍については、切開排膿の後に抗菌薬を追加で使用しても、早く治ったり再発率が改善したりするわけではないとする報告があります。

    痔瘻は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    痔瘻の有病率は、欧米のデータで10万人あたり5.6-20.8人とされています。男女比は、女性1に対して男性2.2-5.7と男性に多く、また30-40歳代に多いとされています。

    参考:「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン(2014年版)日本大腸肛門病学会

    痔瘻の治療法について教えて下さい。

    小児を除き、痔瘻の自然治癒はまれです。痔瘻は基本的に外科的治療の適応とされています。

    参考:「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン(2014年版)日本大腸肛門病学会

    上記、「外科的治療の適応」とは言い換えると、手術による治療が一般的には勧められるということです。

    痔瘻をそのままにしておくとたびたび肛門周囲膿瘍を繰り返すことが問題です。また、まれではありますが、痔瘻が悪性腫瘍(がん)の原因になることもありますので、それらの観点から手術が選択肢の一つとなります。

    一方で、手術には様々な合併症があり、痔瘻の部位と広がりによっては、手術によって肛門の締まりが悪くなって便をもらしてしまうようになる可能性もゼロではありません。

    痔瘻の手術には、瘻管開放術、瘻管切除術、痔瘻結紮療法(シートン法)をはじめとし、様々な種類があります。痔瘻の部位、広がり、合併症のリスクと根治可能性のバランス、術者や施設の経験など、様々な要素を勘案した上で、医師と相談してどの術式の手術を受けるかを決定します。

    痔瘻(あな痔)と痔核(いぼ痔)の違いについて教えて下さい。

    痔瘻と痔核は、いずれも肛門の周囲にできる病気の仲間です。

    ・痔瘻

    細菌が繁殖した結果、小さなトンネル状の穴が肛門部に開いてしまった状態のことです。穴は肛門の奥側につながっていて、肛門の外と中をつなぐ細い通路のようになっています。痔瘻の中に細菌や便が入り込むとそこで炎症が生じやすく、痛みや熱を引き起こす原因となります。

    ・痔核(内痔核、外痔核)

    痔核は、肛門近くにある血管(静脈)が膨れたものです。血液の流れが悪くなると血管の圧力が高まって、風船のように血管が膨らんでこぶのように見えることがあります。これが痔核です。肛門の近くにあるものが外痔核、より奥側にあるものが内痔核と呼ばれます。

    肛門周囲膿瘍、痔瘻の、その他の検査について教えて下さい。

    各種の画像検査は、必須ではありませんが行われることもあります。

    • 肛門エコー
      • 肛門内に超音波機器を挿入することで、肛門周囲膿瘍や痔瘻を確認することができます。
    • 造影CT検査
      • 炎症のない痔瘻の診断は困難な場合もありますが、ある程度の大きさの肛門周囲膿瘍はCT検査、特に造影剤を使用した造影CT検査で診断が可能です。
    • MRI検査
      • 外来ですぐにMRIが撮影できる医療機関はあまり多くありませんが、CTでは分からないような痔瘻や、小さな肛門周囲膿瘍の診断がつけられる場合があります。

    痔瘻は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    残念ながら、手術を行ってもその後に痔瘻が再発することがあります。再発率は手術や施設によりますが、概ね10-30%程度とされています。

    また、手術による後遺症として、便の排泄などに関わる肛門の機能が低下することがあります。軽いものでは排ガス(おなら)が我慢できなくなるといったものから、重症の場合には便そのものが我慢できずに漏れてしまうこともあります。痔瘻の位置が肛門から見て深い(奥にある)ほど、このような合併症が発生しやすくなります。