広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)の基礎知識
POINT 広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)とは
交通事故や機械に皮膚が挟み込まれて、皮膚が剥がれることです。 出血をともなうことが多く、応急処置として出血部をタオルなどで圧迫止血します。程度がひどい場合には筋肉や骨が露出することもあります。画像検査で怪我の程度を把握します。怪我の程度によって治療法は変わり、手術によって皮膚の縫合を行うこともあれば、別の場所の皮膚を移植する方法などがあります。広範囲皮膚剥脱の治療は主に整形外科や救急救命科、形成外科で行われます。
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)について
- 外傷などによって皮膚が巻き込まれてはがれた状態
- 交通事故や機械に巻き込まれるなどの外傷が原因となる
- 応急処置に必要なこと
- 出血部をタオルなどで圧迫止血する
- 皮膚が少しでも残っている場合、それ以上はがれたり、切り離れないように注意する
- 完全に剥がれてしまった場合、皮膚を濡れたガーゼやタオルで包み、その上から氷水で冷やして
総合病院 へ持参する - はがれた皮膚を再接着できることもある
- 完全に剥がれてしまった場合、皮膚を濡れたガーゼやタオルで包み、その上から氷水で冷やして
- 皮膚のはがれた部分は、2-3日後に皮膚が死滅して、黒色に変化する
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)の症状
- 主な症状
- 強い痛み
- 出血
- 筋肉や骨が露出する
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)の検査・診断
- 画像検査
レントゲン 検査- 骨折を
合併 していないか、異物がないか確認する
- 骨折を
CT 検査- レントゲンの役割に加え、筋肉など皮膚の裏側の部分の損傷を確認する
造影 剤を使用して、大きな血管の損傷がないかを確認することもある
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)の治療法
- 皮膚の
縫合 - 皮膚が完全に離れておらず、血流が十分であれば、はがれた皮膚をそのまま縫い合わせる
- 血流が不十分である場合、切断された太い血管をつなぎ合わせる必要がある
- ただし血管そのものが傷ついていると、つなぎ合わせることができない
- 植皮術
- 皮膚を切り離して別の部位から移植する
- 皮弁術
- 皮膚の一部をつないだまま、隣の部位から皮膚の下の組織ごと移植する
- 皮膚が完全に離れておらず、血流が十分であれば、はがれた皮膚をそのまま縫い合わせる
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)の経過と病院探しのポイント
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)が心配な方
デグロービング損傷は、交通事故や機械に巻き込まれてのケガなどで生じやすいものです。デグロービング損傷そのものの診断は診察だけで可能ですが、その他の部位のケガがないかを見落とさないことが重要ですので、デグロービング損傷以外のケガも含めて検査をすることになります。
デグロービング損傷では、実際のところ、出血が強かったり骨折を伴っていたりして、救急車で搬送される場合が多いです。救急隊は、近さや病院の専門性を考慮した上で、適切な病院を判断し案内してくれますが、もし皮膚だけの問題で自力で受診できそうな場合には、とりあえずの応急処置として、近くの救急外来を受診することをお勧めします。その場合、診療の一環としてレントゲン(またはCT)の検査が必須です。救急外来があるような病院であればレントゲン検査は備えていますし、国内の多くの病院でCT検査も行うことができます
広範囲皮膚剥脱(デグロービング損傷)でお困りの方
デグロービング損傷の治療としては、軽症であれば傷口を洗って縫合することになります。縫合の技術も大切ではありますが、それよりもどれだけ皮膚への血管が切れずに残っているかが、その後の経過を左右します。いかに精巧に縫合したとしても、その皮膚へ流れる血流がないと、皮膚はくっつかずに後から剥がれて落ちてしまいます。
ある程度以上のデグロービング損傷の場合には、形成外科専門医による手術が有効です。形成外科の専門医がいる病院は、総合病院の中でも大規模な病院か、あるいは大学病院などです。ご自身で病院を選んで受診することはあまりないかもしれませんが、初期治療を行った救急外来のある病院から、適切な時期に紹介してもらった上で受診することになります。