でんせんせいのうかしん(とびひ)
伝染性膿痂疹(とびひ)
細菌が皮膚に感染することでできる、水ぶくれやかさぶたが飛び火(とびひ)のように広がる病気
7人の医師がチェック 92回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 伝染性膿痂疹(とびひ)のQ&A

    伝染性膿痂疹(とびひ)に間違えられやすい病気はありますか?

    とびひ(伝染性膿痂疹)は、掻きむしった手を介することで全身に広がる病気です。とびひは乳幼児に多く、水ぶくれやかさぶたができます。とびひと似たような症状があらわれる病気は他にもあるため、適切な治療を行うためにも鑑別(原因となっている病気が何なのかを見定めること)が大切になります。

    とびひと間違えられやすい病気として以下の病気があります。

    • 虫刺され

    • ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

    • カポジ水痘様発疹症

    • 自己免疫性水疱症

    • 落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)

    それぞれの病気の特徴ととびひと鑑別するポイントをご紹介します。

    ◎虫刺され
    虫刺されは、炎症が強くあらわれて、水ぶくれができますがとびひで出来る水ぶくれに比べて膜が厚くなかなか破られないことが特徴です。

    ◎ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
    SSSSには以下のような特徴があります。

    • 38℃前後の発熱、不機嫌、食欲不振などの全身症状が初期症状として始まる

    • 目や口の周りの特徴的な症状(発赤、痛みを伴う皮膚の皮の剥離、口の周りが放射状に亀裂が入る、水ぶくれ)

    • Nikolsky現象陽性(こすると簡単に皮膚の皮が剥がれ、やけどのようなただれが生じる)

    伝染性膿痂疹には口の中の粘膜に病変がないことから鑑別されます。

    ◎カポジ水痘様発疹症
    アトピー性皮膚炎や湿疹がある乳幼児に多く発症します。以下のような症状が現れます。

    • 突然の高熱

    • 全身のリンパが腫れる

    • 中心がヘコんだ発疹ができる(中心臍窩)

    • 水ぶくれの周りに赤い斑点ができる

      • 症状は主に顔面や上半身を中心に発症しますが、乳幼児の場合は全身に及ぶことがある
    • 通常、発疹は3〜4日でかさぶたに変わる

    中心臍窩など、発疹の症状から鑑別しますが、難しければTzanck(ツァンク)テストと呼ばれる細胞診を行って確認することがあります。

    ◎自己免疫性水疱症(類天疱瘡)
    自己免疫性水疱症は、60歳から70歳代の高齢者に多い病気です。

    • 痒みを伴う赤い斑点(紅斑)

    • 比較的大きく、破れにくい張りのある膜

    • 水膨れ(水疱)

    • びらん

      • 時に口腔内にもみられる

    皮膚生検(皮膚の一部を切り取って顕微鏡で確認する)と血液検査を行うことによって鑑別が出来ます。

    伝染性膿痂疹(とびひ)の種類と特徴について教えてください

    とびひは大きく水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹の2種類に分けられ、それぞれの特徴は異なります。

    ◎水疱性膿痂疹

    • 主に乳幼児に多く発症し、夏に保育園などで集団的に感染する(接触によって感染)

    • 水疱(みずぶくれ)ができて、びらん(ペロッと皮膚がむける)をつくることが多い

    • シャワーなどで清潔に保ち、抗菌薬を含んだ軟膏とセフェム系抗菌薬の内服を行う

    ◎痂皮性膿痂疹

    • 季節や年齢に関係なく発症することが多いが、近年アトピー性皮膚炎患者で増加している

    • 炎症が強く、痂皮(かさぶた)が厚く付いた非水疱性(みずぶくれができない)

    • セフェム系抗菌薬を内服する(皮疹が治っても10日間は内服し続ける)

    • レンサ球菌の場合、糸球体腎炎を合併することがあるため尿検査を行う

    妊娠中に伝染性膿痂疹(とびひ)にかかった場合、注意することはありますか?

    とびひ(伝染性膿痂疹)に妊婦さんがかかってしまった場合は皮膚をシャワーでしっかり洗って清潔に保つこと、抗菌薬の塗り薬を塗ってガーゼで覆って、触れることで病変が広がらないように注意します。

    症状が軽い場合は塗り薬や洗浄などの対処でよくなりますが、広い場合などは抗菌薬の飲み薬が勧められます。妊娠中でも比較的安全に使える種類の抗菌薬を内服することが勧められます。

    とびひ自体は表皮の浅い感染症なので胎児に与える影響は少ないと考えられます。触れることによってほかの人にうつしてしまう可能性があるため、ガーゼで覆ったりなど自分を含めてほかの人に広めないように対策する必要があります。

    塗り薬の影響が胎児に及ぶ可能性は極めて低いですが、飲み薬に関しては胎児への影響を全く否定することはできません。しかし妊娠中でも経験的に安全に使えている抗菌薬も多数あり、薬の説明書きでも必要性が高かったり、治療をすることによるメリットが大きければ投与できるとされているため、医師と相談して必要なときには飲み薬をためらう必要はありません。