Beta 痔核(いぼ痔)のQ&A
- 出血:特に排便時などに、便に赤い血液が付いて出てきます。量は多い場合と少ない場合がありますが、排便後少しすると治まる場合がほとんどです。
- 痛み:内痔核は、肛門管内にあるだけでは痛みを生じることはまれです。痔核の中に血のかたまり(血栓)ができると、痔核が腫れて痛みが生じます。また、そうでなくとも肛門から出っ張ってくる時に痛みが生じることがあります。
- 脱出:肛門から痔核が飛び出てくることを脱出と言います。飛び出ると言っても痔核の根本は肛門管につながっているわけですから、そのまま肛門内に押し込めば元に戻ります。腹部に圧力がかかると脱出が生じやすく、歩いたり体を動かしたりした際に起きやすくなります。
- かゆみ:痛みのために排便後に肛門周囲を十分に拭けないことや、粘液が出てきて肛門部に付いていることなどが原因となります。これらが肛門への刺激となってかゆみが生じます。
- 視診:肛門部を目で見て、脱出している痔核を確認します。肛門鏡と呼ばれる器具を肛門に挿入し、肛門の部分を少し広げて内部を観察すると、より高い精度で診断することができます
- 指診(直腸診):肛門から指を1本入れて、内部に出っ張ったものがないかを確認します。痛みがないように、滑りを良くするゼリー状のものを付けて行います。実際に診察を受ける際には痛みや不快感に対する怖さが生じやすい診察法ですが、指そのものは、日々排泄される便よりもかなり細いですので、うまく力を抜くことができれば内痔核の場合、痛みはほぼありません。
- 排便の際にいきむことが多い
- トイレに座っている時間が長い
- 軟膏と座薬
- 炎症を抑えるために使用します。最も一般的な薬剤はステロイド系のものです
- 大腸菌死菌浮遊液といって、大腸菌(ただし死んでいて病原性のないもの)を含む軟膏もあります。これを注入することで、菌に対する免疫反応が活発になり、痔核の治癒が促進されると考えられています
- 痛み止め目的で、麻酔薬が含まれているものもあります
- 痔核の場所が外側に近ければ軟膏、奥の方であれば座薬と使い分けることがありますが、薬剤の成分としては軟膏と座薬で大きく変わりません
- 軟膏の中には、細いノズルを肛門に挿入して、そのままチューブを押して内部に注入できるように作られている製品もあります
- 飲み薬
- 軟膏や座薬ほど一般的ではありませんが、炎症を抑える薬や痛み止め、血液の流れを改善させる薬、便秘薬などを使用することがあります。
- 痔核(いぼ痔)
- 肛門管の中で静脈が膨らんだものです。肛門管の奥側にできたものが「内痔核」、肛門管の手前側にできたものが「外痔核」です。内痔核は肛門から飛び出てくることはありますが痛みは全くないかあっても少なく、外痔核は肛門付近にあって激しい痛みの原因となります。
- 裂肛(切れ痔)
- 肛門管の粘膜が切れてしまったものです。便などの刺激によって切れてしまう場合と、炎症性腸疾患や腫瘍などの影響で発症する場合があります。
- 痔瘻(あな痔)
- 肛門管の粘膜の裏側に膿が溜まり、それが皮膚を破って流れ出た後にトンネル状の空間が残った状態です。感染を繰り返すことがあります。
- 痔核結紮切除術1):III, IV度の内痔核、外痔核に有効
- ゴム輪結紮療法:I-III度の内痔核に有効
- 硬化療法(5%フェノールアーモンドオイル):I-III度の内痔核に有効
- 硬化療法(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸):II-IV度の内痔核の脱出に有効
- PPH法:III度の内痔核に有効(ただし一定の再発率と合併症のリスクあり)
- 分離結紮法:III, IV度の内痔核、外痔核に有効(ただし局所除痛薬の併用が必要)
- 痔核結紮切除術:痔そのものをメスで切って、場合によっては縫合する(傷口の一部を縫う)こともある、いわゆる手術の一つです。
- ゴム輪結紮療法:痔核に小さなゴムをかけ、根元の部分を圧迫します。圧迫された部分がくびれ、その先は徐々に変色して1週間前後で自然に取れてしまいます。
- 硬化療法:痔核に薬品を注射して治療します。注射する薬剤にはいくつかの種類があります。
- PPH法:肛門管の内部を縫った上で、ステープラーと呼ばれる機械で痔核の部分を切り取ってつなげます。いわゆる手術の一つです。
- 分離結紮法:ゴム輪結紮療法と同じ理屈ですが、ゴムではなく医療用の糸でしばって行います。
- I度:排便時でも脱出しない(痔核が肛門から飛び出ない)
- II度:排便時に脱出するが、排便後は自然に戻る
- III度:排便時に脱出し、指で押さないと戻らない
- IV度:常に脱出していて、押しても戻らない
- 十分な水分を摂取する
- 十分な食物繊維を摂取する
- 長時間座り続けでいることを避ける
- 寒い場所での作業を避ける
- 便意があれば我慢せずに排便する
- 排便時にいきみすぎないようにする
- アルコール摂取量を減らす
- 疲れやストレスの軽減
内痔核の原因、メカニズムについて教えて下さい。
痔核(内痔核、外痔核を含む)は、肛門近くにある血管(静脈)が膨れたものです。
原因には様々な説があり、未だ正確なことは分かっていません。静脈は肛門内の粘膜の裏側にあるのですが、何らかの原因で粘膜やその周囲の筋肉が弱まって、静脈が徐々に粘膜の下から盛り上がってきてしまうと考えられています。
また別の説としては、肛門括約筋と呼ばれる筋肉(便が漏れてしまうのを防ぐ筋肉)が力みすぎていることの影響もあるのではないかと言われています。
加齢を含めた様々な原因が重なった結果として、静脈が部分的に膨れて出っ張っているのが痔核です。
内痔核は、どんな症状で発症するのですか?
痔核の症状には、出血、痛み、痔核の脱出(肛門から出っ張ってくること)、腫れ、かゆみ、粘液などがあります。
それぞれを補足します。
内痔核は、どのように診断するのですか?
診断のために一般的に行われる診察には、次のようなものがあります。
内痔核の治療法について教えて下さい。
痔核の治療には、薬によるものと外科的療法(手術や痔核への注射)があります。軽度のものであれば、薬物療法だけで血液の流れが改善して、痔核の腫れが引き、症状を改善させることができます。ただし、痔核が完全に治って再発しなくなるわけではありません。
ある程度以上の痔核の場合には、手術や痔核への注射などの外科的療法が必要となります。
これら治療法それぞれの詳細については、次項以降でより詳しく説明します。
どのような人が内痔核になりやすいのですか?
痔核になりやすい人の特徴としては、以下のようなものが知られています
逆に、ベジタリアンの人には少ないと言われています。
内痔核の、その他の検査について教えて下さい。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行う際に偶然内痔核が見つかることがあります。ただし、内痔核の診断を確かめるためだけに大腸カメラを行うことはまれです。
血便がある場合には、痔核が原因のことも多いですが、中には大腸がんなどが原因で血便を生じることもあるため、そのような病気を否定する目的も兼ねて大腸カメラを行うことはあります。
内痔核の薬にはどのようなものがありますか?
内痔核に対して使用する薬には、軟膏と座薬、飲み薬があります。
また、一時的に血流が悪化して痔核が腫れているような場合には、風呂などで患部を温めて血行を促進させることも有効です。
内痔核と外痔核、また、いわゆる「痔」の違いについて教えて下さい。
いわゆる「痔」と呼ばれているものには3種類あります。
内痔核の手術や注射療法について教えて下さい。
薬を用いた治療以外のものをまとめて外科的療法と呼びます。これには以下のような種類があります。
上記について、それぞれの治療法と分類(I度からIV度の痔核について)を簡単に解説します。
どの治療法が適しているかは痔核の病期(何度の痔核か)やその場所、形などによって変わってきます。
また、内痔核の分類は以下のようになっています。
内痔核は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
痔核の有病率は報告によって様々で、4%から55%までとする報告があります。これは、外痔核と内痔核を合わせた数値です。
また男女差はなく、45-65歳に特に多いことが知られています。
報告により数値が大きく異なるのには、調査方法の違いが影響していると考えられます。自己回答式のアンケート調査では、症状のない痔核は(本人がその存在に気づいていないため)数値が低く出るでしょう。一方で、医師が診察を行って無自覚の痔核も見つけて報告する調査であれば数値は高く出ます。また、調査対象としている年齢層にも大きく左右されると考えられます。
4%や55%という数値はいずれもやや極端のようにも感じられますが、いずれにせよあまり珍しいものではなく、痔核は多くの方が抱えている疾患の一つです。
内痔核に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
痔核が悪化する生活習慣の改善を、可能な範囲で試みることが重要です。例えば以下のようなものがあります。