へんけいせいちゅうかんせつしょう
変形性肘関節症
肘へ繰り返される負担によって、軟骨がすり減り・骨の変形が生じたりした状態
3人の医師がチェック 76回の改訂 最終更新: 2022.03.23

変形性肘関節症の基礎知識

POINT 変形性肘関節症とは

肘へ繰り返して負担がかかることによって軟骨がすり減り・骨の変形が起こった状態です。主な原因としては加齢や重労働、激しいスポーツ、怪我(脱臼・骨折)があります。進行するにつれて、肘関節の痛み、動きの制限、小指と薬指のしびれといった症状がが現れます。レントゲン検査で骨折の有無を調べることもあります。治療には保存的治療(手術をせずに安静・固定・鎮痛剤の使用)と手術の2通りがあり、関節の状態をみて判断されます。変形性肘関節症が心配な人は整形外科を受診してください。

変形性肘関節症について

  • 長年の使用や肘へ繰り返される負担によって、軟骨がすり減った状態
    • 骨と骨がぶつかるようになり、肘に痛みや変形などの症状が生じる
  • 主な原因
    • 加齢:老化に伴う摩耗や筋力低下
    • 重労働
    • 激しいスポーツ
    • 外傷:脱臼,骨折
  • 60代の男性に多い
  • 分類
    • 一次性:原因がはっきりしない加齢に伴う関節症
    • 二次性:骨折、脱臼などの外傷や、スポーツ、重労働により過度に肘を使用することによって生じる関節症

変形性肘関節症の症状

  • 肘関節の痛み
    • 長時間の作業やスポーツなどで無理をした時に出現
    • 初期は安静にすると痛みが軽減するため、放置してしまう場合がある
  • 肘関節の動きの制限
    • 曲げ伸ばしがうまくいかなくなる
  • 尺骨神経の圧迫による麻痺
    • 小指と薬指のしびれ

変形性肘関節症の検査・診断

  • 問診:以下のことが診断において重要
    • 職業歴
    • スポーツ歴の有無
    • 外傷歴
  • レントゲン検査:肘の状態を調べる

変形性肘関節症の治療法

  • 保存的治療(手術しない方法)
    • 安静
    • リハビリテーション:温熱療法、ストレッチ、筋力強化
    • 装具療法:肘関節装具
    • NSAIDs(鎮痛薬)や局所麻酔薬の注射
    • ステロイド薬炎症を抑える
    • ビタミンB12:神経の回復を促す
  • 外科的治療
    • 日常生活動作に不自由がある場合に手術をする
    • 関節遊離体摘出術:関節内に遊離している軟骨や骨を摘出する
    • 肘関節形成術
    • 人工肘関節置換術
  • 一度変形した軟骨や骨を元に戻すことはできないが、適切な治療を続けることで、関節の良い状態を保ち、痛みや腫れなどのつらい症状を和らげることはできる
  • 予防、再発予防方法
    • 肘を酷使するスポーツを行う場合、適度に休息をとる
    • 仕事で肘を使わざるを得ない場合、氷などで冷やし炎症を抑える

変形性肘関節症に関連する治療薬

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(外用薬)

  • 炎症や痛みなどを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、関節炎や筋肉痛などを和らげる薬
    • 体内で炎症や痛みなどを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
    • PGはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きなどにより生成される
    • 本剤はCOXを阻害しPG生成を抑えることで、炎症や痛みなどを抑える作用をあらわす
  • 薬剤によって貼付剤(貼り薬)、塗布剤(塗り薬)など様々な剤形(剤型)が存在する
    • 製剤によって使用回数や使用方法などが異なるため注意する
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(外用薬)についてもっと詳しく

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)

  • 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
    • 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
    • PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
    • 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
  • 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
    • COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
    • 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)についてもっと詳しく

変形性肘関節症の経過と病院探しのポイント

変形性肘関節症が心配な方

変形性肘関節症は、肘の関節がすり減って慢性的な痛みが続く疾患です。野球のピッチャーなどで肘に負担のかかる動作を日常的に行っている方に多いですが、特に思い当たるような原因がなくても加齢とともに発症することがあります。ある日突然痛みが生じるというよりも、最初は軽い痛みや動き初めのみに痛みが出現していたのが、月単位から年単位で徐々に痛みが強く、また痛みのある時間が長くなってくるという経過をたどります。

長く続く肘の痛みが変形性肘関節症ではないかとご心配の方は、まずは整形外科のクリニックを受診されることをお勧めします。変形性肘関節症の診断のためには、診察とレントゲンを行います。必要に応じて関節穿刺やMRIを行うこともありますが、MRIは最初から必須となる検査ではありませんので、初めに受診する医療機関としては通いやすいお近くのクリニックが良いでしょう。

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変形性肘関節症でお困りの方

変形性肘関節症の場合、手術をするかどうかが大きな治療の分かれ目になります。骨の変形があまり進行しておらず痛みがあっても日常生活が送れるような場合には、痛み止めや関節への注射で炎症を押さえたり、サポーターを装着するなどの対応を行います。

手術を行う場合には、肘の骨のうち変形した部分を切り取ってスムーズにしたり、骨が欠けたかけら(関節ねずみとも呼ばれます)を取り除いたりします。手術には、大きく分けて二通りの方法があります。直視下手術(肘に傷を開けて行う手術)と関節鏡下手術(肘に小さな傷を複数開けて内視鏡カメラで行う手術)です。関節鏡下手術の方が傷が小さくて済むために術後の回復が早い、傷口が目立ちにくいというメリットがある一方で、手術の難易度が高かったり、手術が行われている医療機関が限られていたりといったデメリットもあります。

手術は整形外科で行われます。病院を探す際には、整形外科専門医がいることや、年間で行われている手術の件数が(周囲の病院と比較して)少なすぎないことや、先述の関節鏡手術を行っているかどうかといった点も一つの判断材料になるかもしれません。

手術を行わない場合や、手術を行ったとしてもその後にはリハビリテーションを行います。肘周囲の筋肉量を増やしたり、関節の動く範囲を広げたりすることで負担を減らすことができるためです。リハビリの専門家である理学療法士と連携しながら進めていくことになりますので、患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところも病院を探す際に参考になるところです。

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