きゅうせいきかんしえん
急性気管支炎
喉の炎症が気管支まで波及して、激しい咳や痰をともなうようになった状態
13人の医師がチェック 101回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 急性気管支炎のQ&A

    急性気管支炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    鼻腔・口から肺までを気道といい、そこにウィルスや細菌などが感染して起こる様々な疾患を気道感染症と総称します。なお鼻腔から喉頭までを上気道、それよりも下に位置する気管支と肺を合わせて下気道と言います。一般的に「風邪」と呼ばれるものは「ウィルス性上気道炎」です。 それに対して、急性気管支炎は急性気道感染症のうち気管支単独の感染、または上気道から気管支まで波及した感染症を表します。

    原因の多くはウィルス性上気道炎(風邪)に続発して起こると言われていますが、起炎菌(原因となる菌)を調べる検査は少なく、臨床的に厳密には診断できません。米国での起因菌に関する研究では、約8割はウィルス性と報告されています。

    急性気管支炎と肺炎の違いについて教えて下さい。

    肺はブドウの房のように連なった肺胞という袋が集まってできた臓器で、それらが集まって気管支でつながれています。肺胞で酸素と二酸化炭素を交換し呼吸を行っています。 肺胞にまで炎症が波及した場合を肺炎といい、そこまで到達しないものが気管支炎です。ただし、これらはCT画像で分かるものであるため、画像検査をしない場合には明確に区別できず、疾患としては連続性をもった同じ下気道感染症です。

    急性気管支炎が発症しやすくなる、または急性気管支炎の人が他に注意すべき病気はありますか?

    もともと気管支が弱い小児や高齢者、ステロイドや免疫抑制剤などを内服し免疫力が低下している方は注意が必要です。また喫煙などによって慢性閉塞性肺疾患がある方や、気管支拡張症など気管支の働きが悪い方は注意が必要です。

    急性気管支炎は多くがウィルスが起因菌であり、健康成人の場合は自然に治ります。しかし、一部の方では弱った気管支に細菌の重複感染(細菌の二次感染)が起こり、重症化する場合があります。黄色の膿性痰や強い咳がある場合に細菌感染を疑い抗生物質を使用しますが、全体の5%程度と報告されています。

    急性気管支炎は、どんな症状で発症するのですか?

    多くの場合は風邪に続発して発症するため、風邪がこじれて黄色の膿性痰が増加したり、咳が強くなります。風邪の場合は発熱を伴わないこともありますが、気管支炎の場合は発熱の頻度が高くなると考えられます。

    急性気管支炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    急性気管支炎が重症化すると、気管支喘息のように喘鳴が出現します。また肺胞まで炎症が波及し肺炎になることもあります。その場合は高熱や呼吸困難をきたし、最悪の場合は命に関わることもあります。

    急性気管支炎は、どのように診断するのですか?

    身体所見や画像で診断を行いますが、胸部レントゲンでは他の疾患との区別が難しいです。胸部CT検査でも気管支肥厚などあれば診断に近づきますが、実臨床では身体所見のみで判断する場合が多いです。起因菌は約8割がウィルスであり、日本では一部のウィルスを除き迅速検査キットは存在せず、起因菌を調べることは困難です。ウィルス感染の多くは対症療法のみで自然に改善するため検査されることも少ないです。しかし症状が持続し悪化する場合は、喀痰や血液、尿検査で起因菌を調べます。

    急性気管支炎と診断が紛らわしい病気はありますか?

    症状が強い場合や、経過が長い場合は気管支炎以外を疑う必要があります。細菌性肺炎や肺結核、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、間質性肺炎などが似たような症状を起こすことがあります。これらの区別には胸部レントゲンや胸部CTが有用であり、症状が長引く場合には一度画像検査を行うことが勧められます。

    急性気管支炎の治療法について教えて下さい。

    ウィルス性か、細菌性で治療方針が大きく異なります。細菌性の場合はその起因菌に適した抗生物質を使用します。しかし約8割がウィルス性であり、健康成人の場合は自然治癒する場合もあるため、全身状態がよく血中の酸素濃度も悪くなければ、対症療法でしばらく経過観察することが多いでしょう。対症療法では去痰薬(痰を出しやすくする薬)、気管支拡張薬(気管支をひろげ呼吸苦を改善し、咳を抑える薬)、鎮咳薬(咳を抑える薬)などを使用します。

    急性気管支炎では入院が必要ですか?

    全身状態がよく、食欲不振や酸素濃度低下などなければ外来で治療可能です。ただし肺炎まで進行した場合や、もともと肺に障害がある方は入院治療をすすめることもあります。

    急性気管支炎に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    多くの場合はウィルス性であり、風邪を引かないことが最大の予防策です。加湿、手洗い、うがいなどを徹底しましょう。細菌性気管支炎や、ウィルス性気管支炎に細菌感染が合併した場合には膿性痰や強い咳嗽が出現するので、症状の悪化には注意しておいてください。

    急性気管支炎なので抗生物質を出して欲しいのですが?

    日常臨床で患者さんからよく聞かれる項目です。約8割が抗生物質の効かないウィルス性であり、多くの場合は不要です。2割の細菌性をカバーするために初期から抗生物質を処方する場合もありますが、抗生物質は副作用の多い薬であり、中途半端に使用することで耐性菌(抗生物質が効かなくなった菌)が増えるため不要な抗生物質の使用は控えなければなりません。
    しかし、細菌性であった場合に致命的になる小児や高齢者、肺疾患既往のある方は初期から抗生物質を使用する場合もあります。菌の増殖を抑制し、殺菌するために抗生物質を使用する場合が多いですが、マクロライド系と呼ばれる一部の抗生物質(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど)は気道浄化作用や炎症物質(IL-6、IL-8など)の抑制作用が報告されており、重症化が懸念される方に菌とは関係なく処方する場合もあります。ただし、これらも近年乱用が問題視されており、耐性菌が増加しているため不要な処方は控えるべきです。
    上気道炎を対症とした報告ではありますが、膿性痰や咳嗽の増悪など症状が悪化してから抗生物質を追加しても約9割の方が入院せずに治癒したとされており、副作用や耐性菌を防ぐため、軽症の段階で抗生物質を内服する必要はありません。