すいほうせいるいてんぽうそう
水疱性類天疱瘡
体内で作られた自己抗体(自分の体を攻撃する免疫物質)の影響で、皮膚に水疱(水ぶくれ)ができる疾患
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最終更新: 2022.03.29
水疱性類天疱瘡の基礎知識
POINT 水疱性類天疱瘡とは
自己抗体(自分の身体を攻撃する免疫物質)の影響で、皮膚に水疱(みずぶくれ)ができる病気です。水疱性類天疱瘡によってできる水疱は大きくて固い上に、破れにくいという特徴があります。高齢者に多い病気です。感染症が原因ではないので他人にうつることはありません。水疱性類天疱瘡では悪性腫瘍(がん)が隠れていることがあるので、水疱性類天疱瘡がみつかったときには他の病気が隠れていないかも調べられます。視診(外見を観察する診察)や病理検査、血液検査によって診断が行われ、ステロイド薬(飲み薬と塗り薬)を中心に治療が行われます。重症と考えられる場合には免疫抑制薬や血漿交換法が行われます。大きくて固く破れにくい水疱が身体にできたときは水疱性類天疱瘡の可能性があります。皮膚科を受診してください。
水疱性類天疱瘡について
- 体内で作られた
自己抗体 (自分の体を攻撃する免疫 物質)によって、皮膚に水疱 (水ぶくれ)ができる疾患 - 60-90代の高齢者に多い
感染症 ではなく、他の人に伝染する病気ではない- 水疱性類天疱瘡の人では、
悪性腫瘍 を合併 しているのが見つかる割合が高い- 水疱性類天疱瘡の診断がついたら段階で、
腫瘍 などを併発していないか一度確認しておく
- 水疱性類天疱瘡の診断がついたら段階で、
水疱性類天疱瘡の症状
水疱 (水ぶくれ):硬くて大きく、一般的な水ぶくれと比べて破れにくいのが特徴- 水疱は皮膚表面にできることが多い
- 口の中にできることは少ないのが、似た病気と区別する点となる
- かゆみを伴う
紅斑 (皮膚の赤み)
水疱性類天疱瘡の検査・診断
- 視診:まずは水ぶくれの形や性質を調べる
- 水疱性類天疱瘡が疑われたら以下の検査が行われる
- 病理検査:皮膚の一部を切り取って顕微鏡で調べる
- 血液検査:病気の原因となる
自己抗体 の有無を調べる
水疱 を生じる病気に対して行うニコルスキー反応は陰性である- ニコルスキー反応とは、正常にみえる皮膚に軽く摩擦を加えるだけで皮膚が剥がれたり水疱が生じたりする現象のこと
- 似た症状を生じる
後天性 表皮水疱症、尋常性天疱瘡などとは皮膚の病理検査や血液検査で区別する
水疱性類天疱瘡の治療法
- 軽症であれば特に治療をしなくても治ることがあるが、治療しないと治るまで数か月から数年かかるので多くの場合は薬を使う
- 主な治療法
ステロイド薬 の内服と外用(塗り薬)- 補助的にテトラサイクリン系の
抗菌薬 やニコチン酸アミドも用いられる
- 重症の場合の治療法
免疫 抑制薬の内服血漿交換 療法
水疱 (水膨れ)を悪化させないためにできること- 症状が出ている部分に
細菌 が感染すると傷が治りにくくなることがあるので、清潔にすることを心がける - 少しの刺激でも水ぶくれができやすいので、普段の生活では以下のことに気を付ける
- 症状のある部分に絆創膏を直接貼らない
- 皮膚が擦れるような下着や服、きついベルトは避ける
- 症状が出ている部分に
水疱性類天疱瘡に関連する治療薬
ジアフェニルスルホン製剤
- 炎症を起こす原因となる活性酸素や皮膚を攻撃する体内物質の産生を抑え紅斑や水ぶくれなどの皮膚症状を改善する薬
- 皮膚炎の原因の中には体内で発生する活性酸素や免疫反応において産生した物質による皮膚への攻撃などがある
- 天疱瘡は免疫反応で産生した物質が皮膚(皮膚細胞をつなぐタンパク質)へ攻撃することによりおこる
- ジアフェニルスルホンは活性酸素や免疫反応を担う物質などの産生抑制作用をあらわす
- 本剤はハンセン病の原因菌である「らい菌」の増殖阻止作用ももつ