やとびょう
野兎病
野兎病は野兎病菌という細菌による感染症で、ウサギなどの野生動物から感染し様々な症状をきたす
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最終更新: 2017.12.06
野兎病の基礎知識
POINT 野兎病とは
野兎病菌に感染したことで起こる病気です。野兎病菌に感染したうさぎやネズミに接触することでうつります。1999年以降に日本国内で発症したことはありません。主な症状は、菌の侵入した部位のただれ・リンパ節の腫れ・発熱・頭痛・悪寒・筋肉痛・関節痛などになります。 血液検査や細菌検査を行って診断します。抗菌薬を用いて治療します。野兎病が心配な人や治療したい人は、感染症内科を受診して下さい。
野兎病について
- 野兎病は野兎病菌という細菌による感染症で、ウサギなどの野生動物から感染し様々な症状をきたす
- 主な感染原因
- 感染した野生のウサギやネズミ、その死骸などとの接触する
- 感染したダニやアブなどに噛まれる
- 原因菌に汚染された水や食べ物、ほこりなどの吸引する
- 過去には関東から東北地方で多くの患者報告があった
- 1999年の発生以来国内での報告はない
- 国内のウサギなどに野兎病菌はいるので、現在でも国内で起こりうる
- 米国やヨーロッパでは毎年多数の感染者が報告されている
野兎病の症状
- 潜伏期間は3〜7日(最大14日になることもある)
- 鼠径部(足の付根)のリンパ節が腫れて痛くなることが最も多い
- それ以外にも突然の発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛などのかぜのような症状が起こる
- 上記の後、脇の下や肘などのリンパ節がはれる場合が多くある
- 最も一般的な症状は、細菌の侵入箇所に痛みを伴う皮膚の破れ・ただれができる
- これは手や指などの皮膚の傷、もしくは鼠径部、わきの下、胴体などの噛まれた箇所で起こる
- 眼に感染すると、眼が腫れて膿がでることもある
- 細菌が近くのリンパ節に侵入し、腫れが生じて痛くなる
- リンパ節の周辺の皮膚が損傷し、その後に膿が排出される
- 細菌が侵入した指などに潰瘍や壊死が起きることがある
- 日本ではこれまでに死亡例は報告されていない
野兎病の検査・診断
- 血液検査:抗体検査で感染を調べる
- 必要に応じて、細菌検査や遺伝子検査を行う
- うさぎなどの野生動物との接触があったかが重要
野兎病の治療法
- 疑われたらすぐに抗菌薬で治療を開始する
- テトラサイクリン系抗菌薬
- ニューキノロン系抗菌薬
- 抗菌薬による治療は2週間行う
- 治療を行わなければ、全体として5~15%の野兎病感染者が死亡すると言われている
- 野兎病に一度かかると再感染に対する免疫ができるので、次に野兎病になることはない
- 主な予防法
- 病気や死亡した野生動物には触れないようにする
- 野外での活動ではダニなどに刺されないようにする
- 野兎病に対するワクチンは日本では使用されていない
- 人から人への感染はないので、患者は隔離される必要はない
野兎病に関連する治療薬
テトラサイクリン系抗菌薬
- 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
- 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
- タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
- 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
- 内服薬は薬剤の作用持続時間により(短い順に)短時間作用型、中等度作用型、長時間作用型に分けられる
- 他の種類の抗菌薬と比較した時の特徴
- ブルセラ症、ライム病などでは優先的に使用される薬剤
- ヘリコバクター・ピロリ感染での除菌治療で使用される場合もある(他の抗菌薬に耐性がある場合など)
- 熱帯熱マラリア予防などに使用する場合もある
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