はんちんとんびょう
ハンチントン病
不随意運動(自分の意思に反して身体が動いてしまうこと)や、認知症、人格の変化等を特徴とする遺伝性の神経疾患
5人の医師がチェック 83回の改訂 最終更新: 2022.02.20

Beta ハンチントン病のQ&A

    ハンチントン病とはどのような病気ですか?

    舞踏運動と呼ばれる不随意運動と認知症や抑うつ症状のような精神症状が主にみられ、ゆっくり進行していく病気です。

    ハチントン病の症状である「舞踏運動」とは何ですか?

    舞踏運動は不随意運動の一種です。不随意運動とは、自分の意思に反して体が勝手に動いてしまう運動のことです。その中でも舞踏運動は手足に見られる不規則な速い運動です。夜眠っている間はこの運動はおさまっています。

    ハンチントン病の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    ハンチンチンと呼ばれる遺伝子の異常で起こることが解明されていますが、どうしてこの部分に異常が起こるのか、この部分が異常になるとどうしてこの病気を発症するのか、そもそもハンチンチンという遺伝子はどういう機能を果たしているのかなどは解明されていません。

    ハンチントン病は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    白人に多い病気で、白人では人口10万人あたり4-8人の方でみられます。一方日本では非常に稀で、人口10万人あたり1人弱です。

    ハンチントン病は遺伝しますか?

    常染色体優性遺伝という遺伝形式によって遺伝します。この遺伝形式では、ご両親のどちらかが患者の子どもは、性別にかかわらず50%の確率で病気を発症することになります。ご両親のどちらかがこの病気をお持ちで、自分がこの病気を将来発症するかどうか知りたい場合は、臨床遺伝専門医のいる施設を受診し、遺伝カウンセリングを受けていただく必要があります。現在も有効な治療法がなく、検査の必要性については十分検討する必要があります。

    ハンチントン病は、どんな症状で発症するのですか?

    舞踏運動と呼ばれる不随意運動で発症することが多いです。初期の症状は軽く、手先が勝手に動いて細かい運動ができなくなったり、落ち着きが無いと言われたりすることがあります。顔をしかめたり、舌を出したり引っ込めたりする動きも見られます。また、怒りっぽくなったりふさぎこんだりするなどの精神症状が見られることがあります。

    ハンチントン病の、その他の症状について教えて下さい。

    若いうちに発症した場合は、パーキンソン病のように体がかたくなって動きづらいという症状が見られることがあります。

    認知症の症状としては、怒りっぽくなったり、だらしなくなったりするといった症状がみられ、徐々に物忘れや判断力の低下などが目立ってくるようになります。

    ハンチントン病が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    時間が経って進行してくると自分で立つこともできなくなり、寝たきりになってしまいます。やがて、認知機能障害などが進み、失外套症候群と言われる状態になります。これは、いわゆる植物状態であり、呼吸や循環など生命維持のための機能は保たれているものの、外からの刺激には全く反応できず、コミュニケーションが取れない状態です。

    なお、精神症状が進行すると自殺を企てようとすることがあるため、注意が必要です。ハンチントン病の患者さんは自殺率が高いことで知られています。

    ハンチントン病の経過について教えて下さい。

    病気はゆっくり確実に進行し、この病気を発症してから10-20年で亡くなります。死因としては、食べ物をうまく飲み込めず、気管に入ってしまうことによる感染や、食事がとれないことによる低栄養などです。

    ハンチントン病は、どのように診断するのですか?

    この病気では、脳の中にある淡蒼球と呼ばれる部分が小さくなるため、頭部CT/MRIで確認します。診断確定のためには遺伝子検査でハンチンチン遺伝子の異常を確認します。また、他の病気を除外するために血液検査や髄液検査を行います。

    ハンチントン病の、その他の検査について教えて下さい。

    ハンチントン病では認知症が見られるため、現在の脳の機能を評価するために、脳血流SPECTと呼ばれる検査を行います。

    ハンチントン病の治療法について教えて下さい。

    残念ながら現時点ではこの病気を治す方法はありません。現在できることは、不随意運動や精神症状を抑える薬を使うことです。ドパミンというホルモンの作用を低下させる薬や精神病に対する薬が治療のために使われます。