とくはつせいふしゅ
特発性浮腫
むくみがあるにも関わらず、様々な検査を行ってもその原因が特定できない状態
7人の医師がチェック 90回の改訂 最終更新: 2022.03.29

特発性浮腫の基礎知識

POINT 特発性浮腫とは

むくみがあるにも関わらず、原因がはっきりとしないものを指します。20代から50代の女性に多く見られ、脚や顔、手などに慢性的なむくみが起こります。むくみの他に頭痛やだるさ、疲労感をともなうことがあります。むくみは心臓や腎臓、肝臓の病気で起こるので、これらの病気の有無が詳しく調べられます。塩分の制限や利尿薬(尿の量を増やす薬)を使うと症状が良くなることがあり、自然に治ることもあります。むくみが心配な人は内科を受診してください。

特発性浮腫について

  • むくみがあるにも関わらず、さまざまな検査を行ってもその原因が特定できない病態
  • 食事制限によるダイエットや、利尿薬や下剤の乱用などによることもある
  • 20-50歳代の女性に多い

特発性浮腫の症状

  • 脚や顔、手、全身の慢性的で長期的なむくみ
    • 体重が朝から夜にかけて数kgの増減を繰り返すこともある
    • 立ち仕事などで、立っている時間が長いと悪化しやすい
  • その他には
    • 頭痛
    • だるさ
    • 疲労感や不安感といった精神症状 などの症状を合併しやすい

特発性浮腫の検査・診断

  • 特発性とは、「検査をしても原因が分からない」という意味
    • 従って、特発性浮腫と診断する前には、一般的な浮腫の検査を行う必要がある
  • 心臓、腎臓、肝臓の疾患や、内分泌疾患などがないかを確かめるための診察や検査を行う
    • レントゲン検査、心電図、血液検査などは基本的な検査として行う
    • 症状や診察結果から疑わしい病気があれば、それぞれに応じた検査(CT検査やエコーなど)を行う
    • 月経前にむくみやすくなる月経前浮腫とは区別する
  • 水負荷試験
    • 12時間前から絶食した状態で、早朝空腹時の排尿後に検査する
    • 30分以内に体重1kgに対して20mlの水を飲んでから4時間後までの尿量を測定する
    • 正常であれば、飲水量の70%以上が尿となるが、特発性浮腫の場合は尿の量が少ないのが特徴

特発性浮腫の治療法

  • 食生活や日々の生活の改善、原因と疑われる薬剤の使用を減らすことなどが治療の基本となる
    • なるべく塩分を控える
    • 適量の水分や適正なバランスの食事をとる
    • 長時間同じ姿勢をとることを避ける
    • 弾性ストッキングを着用する
  • 状態によっては薬剤を使用する場合もある
    • 利尿薬(スピロノラクトンなど)
    • トラネキサム酸
    • ヒスタミン
    • ドパミン作動薬(ブロモクリプチンなど)
  • 特に重い疾患ではなく、自然に症状が軽くなっていく場合が多い

特発性浮腫に関連する治療薬

ループ利尿薬

  • 尿による水分排泄を増やすことで体内の過剰な水分などを排泄し、むくみ(浮腫)などを改善する薬
    • 腎臓の尿細管では尿(原尿)に含まれる水分などを血液中へ戻す再吸収が行われている
    • 本剤は主に尿細管のヘンレループという部位での再吸収を抑えることで尿としての水分排出を増やす作用をあらわす
    • 本剤により体内の過剰な水分が排泄されるため、むくみの改善や血圧を下げる効果などが期待できる
  • 薬剤によっては高血圧症や心不全などに使われる場合もある
ループ利尿薬についてもっと詳しく

カリウム保持性利尿薬

  • 尿として体内の過剰な水分などを排泄し、むくみ(浮腫)や血圧などを改善する薬
    • 腎臓の尿細管では尿(原尿)に含まれる水分などを血液中へ戻す再吸収が行われている
    • 副腎皮質ホルモンのひとつアルドステロンは尿細管(主に遠位尿細管)での再吸収を促す
    • 本剤はアルドステロンの働きを抑える作用などにより尿細管での再吸収を抑え尿量を増やすことで、むくみや血圧などを改善する
    • 本剤は体カリウムイオンの排泄を抑える作用もあらわす
  • 他の種類の利尿薬(ループ利尿薬など)と併用される場合もある
    • 他の利尿薬によるカリウム排泄を低減させることで、こむら返りなどを抑える効果も期待できる
  • 心性浮腫や腎性浮腫などのほか、薬剤によっては栄養失調性の浮腫に使用する場合もある
カリウム保持性利尿薬についてもっと詳しく

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