クラゲ刺傷(クラゲ刺症)の基礎知識
POINT クラゲ刺傷(クラゲ刺症)とは
クラゲに刺されたことを原因とする健康被害です。クラゲに刺される事故は、日本では7-9月に多発します。クラゲは触手に刺胞と呼ばれるカプセル状の毒を持っており、それに触れてしまうと皮膚にクラゲ毒が注入されます。症状は刺された部位の痛みと痒みが見られます。まれにクラゲ毒が血流にのって全身をめぐると吐き気や怠さ、頭痛などを引き起こす場合があります。診断は海でクラゲに刺されただろうという病歴の聴取と、皮膚の様子から行います。治療としては、傷口に触手が残っている場合には、海水をかけて十分に洗い流し、プラスチックカードなど鋭利なもので速やかに除去します。酢をかけると良い場合もあります。クラゲに刺されたかもしれない人は、近くにいればライフセーバーの方に相談するなどして、その後は速やかに救急科や皮膚科を受診してください。近くに病院がなければ、最寄りの病院などに電話で相談してもよいです。クラゲの種類によって細かい対処方法は異なり、地域によってクラゲの種類はある程度きまっているので、刺された地元の病院での情報が最も信頼できると考えられます。
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)について
- 海でクラゲに刺されることによって生じるさまざまな症状
- クラゲの触手にある「刺胞」に含まれる毒が原因
- 8、9月に多発する
- 日本各地の沿岸ではアンドンクラゲ、カツオノエボシによる被害が多い
- 沖縄近海ではハブクラゲという強毒のものがおり、幼児の死亡例も過去には報告がある
- 一部のクラゲでは患部に酢をかけることで、それ以上触手から毒が体内へ入りにくくなると言われている
- 酢が効果のあるクラゲの種類
- ハブクラゲ
- 沖縄に多いクラゲ
- 6月から8、9月に多く発生する
- 透明な体をしていて、水中だと見分けがつきにくい
- 酢が逆効果になるクラゲの種類
- カツオノエボシ
- 水色のビニール袋が膨らんだような風船のような形が特徴
- アンドンクラゲと同じく電気クラゲとも呼ばれる
- 酢が効果があるか不明なクラゲの種類
- アンドンクラゲ
- 行燈(あんどん)に似ていることから名付けられた
- 透明な体をしていて、水中だと見分けがつかない
- 九州から北海道まで日本全土でみられる
- オーストラリアウンバチクラゲ(ハコクラゲ属)
- インド洋からオーストラリアで見られる
- 別名キロネックスと呼ばれる
- その猛毒から殺人クラゲと呼ばれることがある
- ハブクラゲやアンドンクラゲよりも触手が多く、長いことが特徴
- 酢が効果のあるクラゲの種類
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)の症状
- 主な症状
- ヒリヒリした痛みを感じ、局所に線状の
発赤 やむくみ が生じる - その後、
水疱 や潰瘍 になることもある
- ヒリヒリした痛みを感じ、局所に線状の
- 刺されたクラゲの種類によっては下記の全身症状が出ることもある
- 筋肉痛
- 気分不良
意識障害
- 症状が改善したと思っていても、数週間後に皮膚症状が再燃することがある(
アレルギー 反応の一種)
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)の検査・診断
- 被害状況と臨床症状から診断され、検査は特にない
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)の治療法
- 主な治療
- 鎮痛薬の内服
- 皮膚の症状に対しては
ステロイド薬 の塗り薬を使用する - 症状が強い場合は
ステロイド の飲み薬や注射薬を併用することもある
- 毒を持つクラゲの触手に触れた場合の一般的な対処法
- まずは海水で洗い流し、すぐに病院へ行く
- もしくは近場の病院へ電話して応急処置を尋ねる
- 「酢で洗う」、「尿をかける」などさまざまな対処法があるが、ある方法が別の種類のクラゲには逆効果であったりするため注意が必要
- 真水(淡水)をかけると残っている触手を刺激して毒素がより放出される場合があるので避ける
- 触手が刺さっているのが明らかで、これを取り除くためには、必ず軍手を用いて素手では行わない
- 地域によってクラゲの種類はある程度決まっているため、地元の病院に応急処置を尋ねるのが最善
- ただし、刺されたクラゲの種類を同定することはしばしば困難
- 長期的な経過
- 局所に
水疱 や潰瘍 が生じた場合は治るまでに2-3週間ほどかかる
- 局所に
- その他の注意事項
- クラゲが自ら襲ってくることはあまりないため、クラゲに気づいたらその場を離れること
- 陸に打ち上げられたクラゲを不用意に触らない
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)の経過と病院探しのポイント
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)が心配な方
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)では、刺された部位に痛み、しびれ、かゆみ、腫れ、赤みといった症状が出現します。打ち上げられたクラゲを触って刺されたような場合以外では、刺されたクラゲの種類が分かることはまれです。また、海中にはクラゲ以外にも毒を持った生物がいますから、本当に原因がクラゲかどうか、病院では判断がつきづらいこともあります。しかし最も特徴的なのはクラゲの触手の形のまま、ムチで打たれたような細長い痕が残っている場合で、この時はクラゲが最も疑わしいと言えるでしょう。
クラゲに刺されたときには、お酢をかけたり、お湯をかけたりとさまざまな応急処置が知られているのですが、ある種類のクラゲに有効な処置が、別の種類のクラゲでは症状を悪化させることがあるため注意が必要です。国内でも都道府県によって分布しているクラゲの種類が異なりますので、有効な応急処置も地域によって違うことになります。周囲に地元のライフセイバーがいればその地域ごとのクラゲの種類と応急処置を知っていることが多いですので、病院を受診する前に確認するのも良いでしょう。
受診の際は皮膚科、または救急科が適切な診療科です。多くのクラゲは一時的な痛みやかゆみで済むのですが、沖縄県に多いハブクラゲは毒性が強く傷痕が生涯残ってしまうこともあるため、応急処置の有無にかかわらず一度受診することをお勧めします。
クラゲ刺傷(クラゲ刺症)でお困りの方
クラゲ刺傷の治療は、対症療法のみになってしまいます。腫れや痛み、炎症を抑えるような痛み止めや、ステロイドの塗り薬、内服薬を用います。
乳幼児が全身をクラゲに刺された、というような極端な場合を除けば、入院が必要となることはありません。