だいどうみゃくべんへいさふぜんしょう(だいどうみゃくべんぎゃくりゅうしょう)
大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)
大動脈弁がきちんと閉じず、大動脈から左心室へ血流が逆流してしまう病気
7人の医師がチェック 97回の改訂 最終更新: 2024.02.25

Beta 大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)のQ&A

    大動脈弁閉鎖不全症の原因について教えて下さい。

    大動脈弁は心臓の4つの部屋の一つである左心室から大動脈の途中にある弁です。その大動脈弁の異常または大動脈の一部の拡大・変形などにより、大動脈弁が完全に閉鎖されない病気です。大動脈弁そのものの異常の原因としてはリウマチ熱、心内膜炎、外傷、結合組織病、先天性大動脈二尖弁などがあり、大動脈の拡大・変形の原因としては、高血圧、大動脈解離、梅毒、Marfan症候群、強直性脊椎炎などがあります。

    大動脈弁閉鎖不全症のメカニズムについて教えて下さい。

    左心室が収縮すると大動脈弁はが開いて血液を大動脈へ送り出し、左心室が拡張すると大動脈弁が閉じて血液の逆流を防止しています。大動脈弁の閉じ方が悪くなると、左心室が拡張する時に、大動脈から左室内へ血流が逆流するため、左心室に血液が多くたまり、左心室内の圧力が上がるため、心拡大や心肥大を起こします。また、血液が逆流することで拡張期の大動脈圧が低下し、心臓自体に酸素を送る役割がある冠動脈の血流が低下し、心臓の筋肉に酸素が足りなくなります。このような状態が持続すると心臓の機能が低下し心不全をきたします。

    大動脈弁閉鎖不全症は、どんな症状で発症するのですか?

    主な症状は、動悸・息苦しさ・狭心症状と言われる胸苦しさです。慢性的な閉鎖不全症では、多くの場合初めは無症状で経過しますが、急性の閉鎖不全症では一般的には重症の心不全やそれに伴うショックになることがあります。

     

    大動脈弁閉鎖不全症は、どのように診断するのですか?

    確定診断は心エコーでなされます。心エコーで大動脈弁の形や弁の大きさ、左心室の拡大や収縮機能の低下の有無などを調べます。また、血液の流れに色がつくタイプの心エコーで、大動脈弁の血液の逆流を確認します。

    レントゲンや心電図では、左心室が拡大していることが確認できます。また大動脈弁輪拡張症、大動脈瘤、二尖弁といった疾患による大動脈弁閉鎖不全では、心臓から出てすぐの上行大動脈の拡大がみられます。さらに症状が悪化し心不全をきたすと、レントゲンで肺に水がたまった状態が確認されます。

    大動脈弁閉鎖不全症の、その他の検査について教えて下さい。

    聴診器で胸の音を聴き、通常では聴こえない異常な音があることを確認します。

    大動脈弁閉鎖不全症の治療法について教えて下さい。

    症状が安定している場合や外科的治療前の場合、水分と塩分の制限、利尿薬、強心薬(ジゴキシンなど)、血管拡張薬などを行います。大動脈弁閉鎖不全症の原因が心内膜炎、結合組織病、梅毒などである場合は、これらに対する治療も行います。

    手術療法としては、基本的には大動脈弁置換術といって、問題がある大動脈弁を別のものに置き換える手術を行います。人工的に作った機械弁または他動物から作った生体弁を使用します。一部大動脈弁を修正する大動脈弁形成術もあります。大動脈弁輪拡張症などによる閉鎖不全症には、より拡大して大動脈ごと取り換える手術を行います。

     

    大動脈弁閉鎖不全症の治療法の使い分けについて教えて下さい。

    以下のような場合では、手術を行います。

    • 胸痛や心不全症状がある場合
    • 左心室の機能低下がある場合
    • 他の手術:冠動脈疾患、上行大動脈疾患、他弁膜症の手術が必要な場合
    • 感染性心内膜を合併し、抗生剤で感染がコントロール困難な場合

    大動脈弁閉鎖不全症の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    大動脈弁置換術を行う場合、置き換える人工弁は2種類あります。カーボンやチタンから作られた機械弁か、ウシやブタの心臓弁を加工した生体弁です。生体弁の場合、血液が弁にこびりついて血栓化してしまう可能性はとても低いので、血液が固まらないようにする抗凝固薬という薬(ワーファリン)は、術後数か月たてば不要になります。機械弁の場合は、常に血栓ができる可能性があるため一生飲み続けなければなりません。また生体弁の方が感染にも強いですが、機械弁の方が耐久性に優れています。

    大動脈弁閉鎖不全症では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    症状が重い場合、また手術となる場合は入院となります。症状の経過によりますがおおよそ2-3週間位です。手術にて機械弁が用いられた場合は、血栓ができやすいので抗凝固薬を用います。しかし、効きすぎると出血しやすくなり、効果が不十分だと血栓ができてしまったりと、ちょうど良い効き具合を維持するよう常にチェックしなければならないため、(月1回など)定期的に採血検査が必要となります。

    大動脈弁閉鎖不全症は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    手術が行われた場合、合併症が起こってしまいそれが後遺症となる場合もゼロではありません。たとえば、心臓の手術操作中に脳の血流に血栓が入ってしまい、脳梗塞が残ってしまったり、置換した人工弁がうまく機能せず心不全を発症したりする可能性もありえます。