きんじすとろふぃー(でゅしぇんぬがた、べっかーがた)
筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型)
手足を動かす筋肉の組織が徐々に壊れていく筋ジストロフィーの一種
11人の医師がチェック 91回の改訂 最終更新: 2022.07.10

Beta 筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型)のQ&A

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーとはどのような病気ですか?

    筋ジストロフィーとは、骨格筋が壊死・再生を繰り返し、徐々に筋肉が萎縮したり脂肪化していってしまう病気の総称です。その中でもデュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーは、X染色体上のジストロフィンというタンパク質に異常が起きることで発症するものです。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの原因、メカニズムについて教えて下さい。

    ジストロフィンは、筋線維膜直下に存在するタンパク質で、筋肉の細胞膜を支えるために不可欠なタンパク質です。このタンパク質の機能が完全に失われたものをデュシェンヌ型筋ジストロフィー、不完全ながらも機能が残っているものをベッカー型筋ジストロフィーと呼びます。もちろん、前者のほうが重症です。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーは、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    デュシェンヌ型筋ジストロフィーは出生男児約3500人につき1人の割合で発症し、ベッカー型筋ジストロフィーは一般人口3万人に1人の割合で発症すると言われています。筋ジストロフィーの中ではかなり頻度が高い部類に入ります。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーは、遺伝する病気ですか?

    この病気はX染色体連鎖遺伝を示します。基本的に男性で発症する病気ですが、この病気の男性の子供は男の子であれば発症しませんが、女の子であれば50%の確率で病気の遺伝子を持つことになります。女性がこの病気の遺伝子を持っていても症状は出ないか非常に軽いですが、この病気の遺伝子を持っている女性の子供は男の子であれば50%でこの病気を発症します。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーは、どんな症状で発症するのですか?

    3-4歳で転びやすい、走れないなどの症状で発症することが多いです。ただし、血液検査で偶然この病気がわかることもあります。5歳頃が運動能力のピークで、その後は落ちていき、10歳頃には歩けなくなってしまいます。筋肉の衰えにしたがって関節拘縮や側弯などもみられるようになります。ベッカー型ではここまで重篤な症状とはならないですが、筋力低下などの症状がみられます。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの、その他の症状について教えて下さい。

    筋肉は手足にだけあるわけではありません。心臓は筋肉でできていますし、呼吸も胸郭の筋肉や横隔膜(=筋肉)の働きでなされています。したがって、心筋症や呼吸不全などの症状などがあらわれます。ベッカー型筋ジストロフィーでは、心臓の症状が目立つことがあります。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーは、どのように診断するのですか?

    血液検査ではCK、AST、ALTの上昇がみられます。症状および血液検査からこの病気が疑われた時には、遺伝子診断を行います。遺伝子診断に必要な検体は血液のみですので、患者さんに負担を強いることはありません。かつては筋肉を取って調べていましたが、遺伝子診断が簡単にできるようになった現在では、ほとんど行われません。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの、その他の検査について教えて下さい。

    遺伝子診断だけでははっきりわからない時には、筋肉を取って調べる検査、筋生検を行います。ジストロフィン免疫組織染色などを行って確定診断をつけます。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーと診断が紛らわしい病気はありますか?

    あらゆる筋ジストロフィーが鑑別の対象となりますが、この病気は遺伝子を調べることが比較的容易なので、疑ったら確定診断に結びつきやすいです。むしろ他の筋ジストロフィーを診断する際にはこの病気ではないことを確認することがスタートになることもあります。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの重症度はどのように検査するのですか?

    上肢の運動機能や関節の可動域、筋力テスト、また日常生活動作の障害の程度などを調べていきます。また、心臓の機能を調べるために胸部X線写真や心エコー検査、呼吸筋の障害の程度を調べるために呼吸機能検査、筋肉の量を把握するためにCT/MRI検査などを行います。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの治療法について教えて下さい。

    ステロイドの内服薬が効果があるとされており、保険適用となっています。歩行不能になるなど症状が進んでからも、ステロイドを内服すべきかについては意見が分かれていますが、有用であることを示唆する報告はあり、服用させることが多いようです。ただし骨粗鬆症など副作用には十分注意する必要があり、圧迫骨折などがみられる際には中止を考えます。

    デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの他の治療法はありますか。

    根本的な治療法はまだ開発されておらず、リハビリが重要となります。呼吸理学療法も有効で、呼吸不全が重度になると人工呼吸器の使用も考慮しなければならなくなります。側弯に対しては整形外科的な治療が必要になることも有ります。