だいたいこつきんいぶこっせつ(けいぶこっせつ、てんしぶこっせつ、てんしかこっせつ)
大腿骨近位部骨折(頸部骨折、転子部骨折、転子下骨折)
太ももの骨の、股関節の部分(大腿骨近位部)の骨折
7人の医師がチェック 126回の改訂 最終更新: 2022.03.18

Beta 大腿骨近位部骨折(頸部骨折、転子部骨折、転子下骨折)のQ&A

    大腿骨近位部骨折の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    大腿骨近位部骨折は骨折部位によって骨頭骨折、頚部骨折、転子部骨折、転子下骨折にわけられます。一般に骨頭骨折や転子下骨折は、交通事故などの高エネルギー外傷での発症が多く、頚部骨折や転子部骨折は骨粗鬆症のある高齢者における低エネルギー外傷(立った高さからの転倒)が多くなっています。

    大腿骨頚部骨折・転子部骨折は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    高齢化の進行とともに患者数は増加傾向であり、現在年間で約15万人以上が受傷しているといわれています。

    大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折の違いについて教えて下さい。

    頚部骨折は股関節を包む関節包の中での骨折、転子部骨折は関節包の外での骨折です。関節内は骨折後に血流が乏しくなることが多く、骨折部でのズレが生じた場合は骨を癒合させることは困難です。関節外の骨折では血流が豊富な部位であるため、骨癒合を目指すことが一般的です。

    大腿骨頚部骨折はどのような人に起こりやすいのですか。

    骨粗鬆症をもつ高齢者に起こりやすく、骨粗鬆症に伴う骨折(骨脆弱性骨折)をしたことがある人ではそうでない人に比べて発症率は2倍以上といわれています。そのため、骨粗鬆症の治療や、ひとたび骨折が起きた場合に続発する骨折を予防することが重要です。

    大腿骨頚部骨折・転子部骨折は、どんな症状で発症するのですか?

    多くは立った高さからの転倒後に疼痛が生じ、歩行・起立困難となります。深夜や明け方のトイレ移動の際に受傷することが多い印象があります。

    大腿骨頚部骨折・転子部骨折は他にどのような症状がありますか?

    股関節の疼痛ではなく、膝の疼痛を訴えることがあります。また、直後は歩行可能ですが、歩いているうちに骨折部がずれて歩行困難となることもあります。特に認知症の高齢者で転倒後に長引く股関節痛や膝関節痛がある場合には、骨折を疑い病院を受診することが勧められます。

    大腿骨頚部骨折・転子部骨折は、どのように診断するのですか?

    受傷機転や疼痛部位から疑い、レントゲン検査で診断します。まれにレントゲンだけでは骨折がわからない場合があり、CT検査やMRI検査を行うことがあります。

    大腿骨頚部骨折・転子部骨折の治療法について教えて下さい。

    股関節は体重を支える関節であり、基本的には手術治療を行い早期のリハビリをすることで歩行機能の再獲得を目指します。合併症が多く、全身状態が悪い場合には保存治療を行うことがありますが、筋力の低下は必発であり歩行機能の再獲得は一般に困難です。

    大腿骨頚部骨折の手術治療はどのようなものがありますか。

    大きくわけて、骨折部でずれていない場合とずれている場合で治療法が変わります。ずれていない場合には金属のピンやスクリュー、プレートで固定することで骨癒合を目指します(骨接合術)。ずれている場合には骨をくっつけたとしても血流が悪く骨が腐ってしまうことが多いため、人工骨頭置換術や人工関節置換術といわれる金属製の関節へ入れ替える治療を行います(関節置換術)。若年者の場合は、ずれている場合でもまずは骨接合術を選択することがあります。

    大腿骨転子部骨折の手術治療はどのようなものがありますか。

    血流が豊富な部位であるため、骨癒合を目指して骨接合術を行います。骨折の型に応じてプレートや髄内釘(骨の中に埋め込む芯棒)などが選択されます。骨癒合する場合が多いですが、骨粗鬆症が重傷な場合やずれが大きい場合には骨がくっつかないことがあります。

    大腿骨転子部骨折の手術後は歩けるようになりますか。

    早期に適切な手術治療・リハビリ治療を行った場合には歩行機能の再獲得が可能ですが、受傷前よりも機能が1段階落ちることが多いと言われています(杖がいらなかった人が杖を必要とする、杖歩行可能だった人が歩行器を必要とする、など)。また、高齢や認知症、受傷前の歩行機能が低いことが、回復を遅らせる要因といわれています。車いす生活や寝たきりの生活を強いられることも少なくないのが現状です。

    大腿骨転子部骨折の手術後、体内にある金属はどうしますか。

    関節置換術であれば金属が関節の役割をしているので、金属はいれたままです。 骨接合術の場合も、たとえ骨がくっついた後でも金属を抜くと再骨折のリスクがあると言われており、一般的には金属をいれっぱなしにすることがほとんどです。