しんけいこうしゅ(ぐりおーま)
神経膠腫(グリオーマ)
脳にある細胞から発生する脳腫瘍の一つ。脳腫瘍の中では、転移性脳腫瘍についで2番目に多く、悪性度も様々。
10人の医師がチェック 106回の改訂 最終更新: 2021.09.24

Beta 神経膠腫(グリオーマ)のQ&A

    神経膠腫の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    神経膠腫は、脳のグリア細胞と呼ばれる細胞が増殖してできる腫瘍です。

    細胞が増殖し続けて腫瘍ができる詳細な原因については、まだ詳しいことは分かっていません。

    神経膠腫は、どんな症状で発症するのですか?

    神経膠腫は脳の中にできます。そのため、腫瘍ができた部分の脳がもともと持っていた働きが妨げられることで、言葉が出ない、言葉が理解できない、手足が動かせない、などと言った症状が出ます。

    腫瘍が正常な脳(神経細胞)の電気的な信号のやりとりを邪魔することによって、信号が乱れ、そのことでけいれん発作が生じることもあります。

    神経膠腫は、どのように診断するのですか?

    神経膠腫の診断には、頭部CTを撮影します。CTでは周囲よりも暗い部分として写し出されますが、小型のものではわかりにくい場合があります。

    頭部CTで分かりにくいものについては、頭部MRIを撮影すると、より分かりやすく、診断をつけることができる場合があります。

    また、造影剤を用いて撮影することにより、成長が早いものかどうかの見当を付けることが可能です。        

    神経膠腫の治療法について教えて下さい。

    神経膠腫とひとくくりに言っても、その種類によって、進行が早いものとそうでないものとがあります。

    これらを区別するために、原則として手術を行います。手術で腫瘍の一部を採取し、悪性度の高いものかそうでないものかを判断します(病理診断)。その結果に応じて、追加の治療方法を検討します。進行が極めて遅い種類の神経膠腫の場合、無症状であれば特に何もせずに経過を見るのも選択肢の一つです。

    症状が既にある神経膠腫や、症状がなくても進行が速いタイプ(膠芽腫)と検査から推測されるような神経膠腫の場合は、手術が必要です。この場合の手術の目的は、病理診断を付けることと、可能な限り腫瘍のある部分を切除し、腫瘍細胞の数を減らすことになります。

    このタイプの脳腫瘍は脳の中にできます。脳の大切な部分に腫瘍がある場合は、その部分を傷つけてしまう可能性があるため、腫瘍の全てを取り除くことができないことがあります。

    神経膠腫は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    神経膠腫には様々なものがありますが、全てを含めると脳腫瘍全体の30%程度を占めます。ただし、脳腫瘍自体が10万人あたり10人程度の頻度ですから、かなり少ない病気であるとも考えられます。

    神経膠腫の、その他の症状について教えて下さい。

    神経膠腫のうち成長の早いタイプのものの場合、頭蓋骨の容積は限られているため、内部から腫瘍が脳全体を圧迫することによる症状(頭痛、吐き気など)が出ることがあります。

    神経膠腫の、その他の検査について教えて下さい。

    神経膠腫の中には、特に成長が早い(たちの悪い)ものかどうかを判断するためにPETという検査を行う場合もあります。しかし、この検査を行わないと診断できない、ということはありません。

    神経膠腫の治療薬について教えて下さい。

    進行の速いタイプの神経膠腫(膠芽腫)の場合には、テモダールという内服薬を服用しますが、これと放射線治療を組み合わせた治療を6週間行うというのが一般的です。

    進行の遅いタイプの神経膠腫では、追加の治療は行わないで経過を見るという考え方と、放射線照射を行うという考え方があります。どちらが良いかは結論が出ていません。

    神経膠腫は、遺伝する病気ですか?

    家系的に神経膠腫ができやすい家系というのも例外的には知られていますが、原則として遺伝する疾患ではありません。

    神経膠腫が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    腫瘍によって脳の機能が妨げられる部分が増えてくると、徐々に症状が進行します。最初は「指の動きが悪い」といった程度の軽い麻痺が、「全く動かせない、歩けない、立てない」などの重度の麻痺となったり、言葉がもつれる程度の症状であったものが、全くしゃべれなくなったりします。

    神経膠腫と診断が紛らわしい病気はありますか?

    造影剤を使ったMRIで、成長の早い神経膠腫は特徴的な写り方をします。これと似た写り方をする他の脳の病気としては、転移性脳腫瘍、悪性リンパ腫、脳膿瘍などがあります。PET検査で診断が付く場合もありますが、手術を行うまで分からない場合もあります。

    また上記とは別に、造影剤を取り込まない神経膠腫(一般的に成長の遅いタイプ)の場合には、発症から少し時間の経った脳梗塞との区別が必要になることがあります。

    神経膠腫の薬は、いつまで飲み続けることになるのですか?

    テモダールの内服期間は病院によって異なりますが、通常12ヶ月もしくは24ヶ月です。24ヶ月以上内服を続けるとする考え方もありますが、それによって効果があるかどうかは未確定です。

    神経膠腫では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    治療が手術だけで済めば、10-14日程度の入院が多いと考えられますが、放射線治療も行うことになると追加で6週間程度必要になります。

    その後、内服治療を継続する場合は4週間ごとに外来を受診することになります。

    神経膠腫は、再発を予防できる病気ですか?

    進行が遅いタイプでは再発せずに長期に渡って生存される方もいます。

    一方、膠芽腫と呼ばれるタイプの神経膠腫は、他の部位のがんと比較しても極めて悪性度が高く、通常は必ず再発し、放射線治療や内服治療を行わない場合の平均的な生存期間は6ヶ月程度と言われています。

    神経膠腫は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    原則、神経膠腫は完治する病気ではないため、継続的に医療機関を受診する必要があります。後遺症に関しては、もともとできた場所などに依存することが多いです。

    手術中には様々な器機を用いて脳の部位のモニタリングを行いますが、それでも後遺症が起きてしまうことがあります。

    神経膠腫が再発した場合、また手術で取ることはできますか?

    再手術が可能かどうかは、腫瘍ができた場所によります。言語中枢や、麻痺を起こすような部分に腫瘍が広がっている場合には、そのような機能的に重要な部分の手術を行うことは困難です。