じょくそう(とこずれ)
褥瘡(床ずれ)
布団やベッドなどと触れる部分の皮膚が、長い間圧迫されづづけることで血流が不足して、皮膚や筋肉などの組織が壊死すること
14人の医師がチェック 165回の改訂 最終更新: 2024.04.25

褥瘡(床ずれ)の治療:塗り薬、ドレッシング剤など

褥瘡の治療は2つに大別できます。一つは薬や手術によって褥瘡自体を治す治療です。もう一つは褥瘡になりやすい要因を改善する治療です。要因の改善には適切な体位変換や栄養改善などが含まれます。褥瘡を上手く治療するにはこの2つの治療を並行して行う必要があります。

1. 褥瘡(床ずれ)の治療

褥瘡の治療は薬などで褥瘡部分の治療を行うとともに、褥瘡になりやすい要因を取り除く必要があります。褥瘡になりやすい要因として次のものが知られています。

【褥瘡になりやすい要因】

  • 局所の要因
    • 身体の同じ部位への圧迫
  • 全身的な要因
    • 低栄養・体重減少
    • 浮腫
    • 常用薬や持病
  • 皮膚の要因
    • 乾燥
    • 失禁・発汗による皮膚のふやけ
    • 皮膚の病気
  • 社会的な要因
    • 介護力の不足
    • 福祉制度、サービスへの情報不足
    • 経済力不足

上記のような要因が残ったまま治療を進めると、褥瘡が治りにくかったり、新たに褥瘡ができてしまったりします。そのため、褥瘡自体の治療と褥瘡になりやすい要因の除去を並行して進めていかなければなりません。
次の章からは、褥瘡に対する治療として、薬物治療・外科的治療について説明し、続いて全身的な治療(圧迫を避ける方法・栄養療法やスキンケア)について説明していきます。褥瘡を作らない、悪化させない予防方法については「褥瘡(床ずれ)に関して日頃から気をつけてほしいこと」でも説明しているので、このページとともに参考にしてください。

2. 褥瘡の治療は重症度と時期によって決まる:急性期・慢性期

褥瘡はできてからの期間で急性期と慢性期に分類されます。ざっくり説明すると、急性期は褥瘡ができて時間がたっていない状態で、慢性期は褥瘡ができてからある程度の時間が経過している状態です。
急性期の褥瘡はどの程度悪化するか予想が難しいため、それ以上悪化しないかを注意深く経過をみます。慢性期の褥瘡は深さによって浅い褥瘡と深い褥瘡に分けられ治療法が異なります。

急性期の褥瘡の治療

褥瘡ができてから1週間から3週間を急性期褥瘡と呼びます。急性期褥瘡では次のような症状が混じり合って出現します。

【急性期褥瘡の主な症状】

  • 皮膚の赤み
  • 紫色の出血斑(紫斑
  • 水ぶくれ
  • 皮膚のただれ
  • 浅い潰瘍

急性期ではまず褥瘡ができた要因の有無を調べ、該当するものがあれば取り除いたり、その影響を緩和します。

【急性期褥瘡の主な要因】

  • 骨が出っ張っている
  • 関節が硬くなって動かない
  • 栄養状態が悪化している
  • むくみがある
  • 汗をかきやすい
  • 尿失禁や便失禁がある

具体的には、栄養状態が悪化している人には栄養をとりやすいように工夫しますし、汗や失禁があると皮膚が湿って弱くなるためスキンケアを行います。可能な範囲で褥瘡が悪化しない環境を整えていくことが大事です。同時に、急性期の段階では急激な進行に注意が必要です。治療と並行して日々欠かさずしっかり観察することも忘れてはいけません。

■褥瘡部分に対する治療:急性期

褥瘡は乾燥していると治りにくくなります。そのため、水分を適切に保つ必要があります。傷口を保護し乾燥を予防し、褥瘡の観察を行いやすいように、保護には透明のドレッシング材(被覆剤)を使います。また、ドレッシング材の交換は1週間に1回程度とします。褥瘡のまわりの皮膚も弱いため、ドレッシング剤を交換する時には皮膚を傷つけいないよう注意してください。

ドレッシング材は適度な湿り気が維持できるようにポリウレタン素材のものがよく用いられます。ポリウレタンフィルムは耐水性で水や細菌の侵入を防ぐ一方で、ガスや水蒸気は通過します。その特徴から、発汗を適度に逃すことができるので、褥瘡周囲の皮膚が過度に湿ることを予防します。

塗り薬を用いる場合には、傷の保護効果が高い白色ワセリンや、ワセリンが含まれた亜鉛華軟膏、アズノール®軟膏などが用いられます。浅い潰瘍になっている場合には皮膚が作られることを促進するために、プロスタンディン®軟膏、アクトシン®軟膏、リフラップ®軟膏などが用いられることがあります。抗生物質が含まれた軟膏は創部の保護や感染の治療目的で使用されることがありますが、耐性菌の出現の問題があるので、感染が起こっている場合に限り使用し、使用期間も長くならないようにします。

慢性期の褥瘡の治療

褥瘡はできてから数週間が経過すると慢性期と呼ばれます。慢性期になると、急性期の特徴や、急激な変化はあまり見られなくなります。

■褥瘡の深さを評価する

慢性期の褥瘡治療ではまず、浅い褥瘡なのか深い褥瘡なのかを判断します。皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。浅い褥瘡は真皮までにとどまるものを指し、深い褥瘡は真皮よりさらに深い皮下組織まで褥瘡が及ぶものを指します。浅い褥瘡は皮膚の細胞が残存しているため皮膚が再生しやすく、一般的には深い褥瘡より治りやすいと言われています。

褥瘡の状態の評価は深さだけでなく、大きさなども含めてDESIGN-Rという基準を用いて評価し、褥瘡の状態を確認して、それに合わせて治療を行います。DESIGN-Rの基準は「こちら」をご覧ください。

■浅い褥瘡の治療

浅い褥瘡では皮膚が再生する細胞が残っているので、治りやすいと考えられています。主な治療は再生しやすいように乾燥を防ぐことと、皮膚が再生しやすくなる軟膏を塗ることです。

浅い褥瘡では褥瘡の保護と、傷が乾きすぎないように適度な湿潤環境を維持します。皮膚の赤みや出血斑、破れていない水ぶくれにはポリウレタンフィルムなどのドレッシング剤で保護します。水ぶくれが破れた場合には、傷を観察しやすく水分を吸収してくれるハイドロコロイドや、ポリウレタンフォーム、ハイドロジェルのシートなどを用います。

塗り薬が治療に使われることもあります。びらんとよばれる皮膚がただれた状態や、浅い潰瘍になっている場合には上皮化を促すためにブクラデシンナトリウム(アクトシン®軟膏3%)や、アリプロスタジルアルファデクス(プロスタンディン®軟膏0.003%)などを用います。

■深い褥瘡の治療

深い褥瘡は皮膚を作る細胞や毛根がなくなってしまっているので、再生に時間がかかり、治るまでに1年以上かかる場合もあります。深い褥瘡はいくつかの過程を経て治り、具体的には以下の4つの段階があります。

【深い慢性褥瘡が治癒する過程】

  • 黒色期:壊死した組織の塊が黒くなって付着している
  • 黄色期:黒い壊死組織が取り除かれた後、黄色の壊死組織や不良肉芽が付着している
  • 赤色期:血流豊富な肉芽組織が成長してくる
  • 白色期:肉芽組織が盛り上がって周囲の皮膚と段差がなくなり、皮膚に覆われる

深い褥瘡の治療ではこの過程が順調に進むようにします。壊死組織を取り除いて肉芽が形成されるよう促し、傷を小さくするために感染や炎症、浸出液をコントロールします。肉芽はできたばかりの組織のことで、増殖能力が高く、傷ついた皮膚を修復してくれます。

◎黒色期

壊死を起こして黒く変色した組織が付着している状態です。この時期では壊死組織を除去し、感染を防ぐことが重要です。黒い壊死組織を切り取って除去する治療がもっとも効果的です。取り除く処置をデブリードマンと呼びます。デブリードマンを行うことによって、傷が治りやすくなります。壊死した部分が硬くて取り除きにくい場合は、ゲーベンクリーム®を使って壊死した部分を柔らかくし、デブリードマンを行います。壊死組織を分解することができるブロメライン®軟膏も用いることもあります。感染を起こさないよう洗浄などの処置も合わせて行います。

◎黄色期

黄色の壊死組織や褥瘡からの滲出液が付着している状態です。傷を修復するための肉芽が育っていますが、血流が悪い肉芽も少なくありません。黄色期も黒色期と同様に壊死組織を取り除き、感染が起こらないようにコントロールします。滲出液が多い場合には、抗菌作用と吸水性に優れたユーバスタ®やカデックス®などが用いられます。褥瘡が乾燥している場合にはゲーベンクリーム®を用います。黄色期にはハイドロジェルというドレッシング剤を使うことが多いです。

◎赤色期

肉芽組織が盛り上がって赤くなった状態です。黄色期で見られた血流の悪い肉芽は少なくなり、血流の良い赤い肉芽ができてきています。赤色の良い肉芽がたくさん育って、褥瘡全体を覆うように適切な水分環境の維持と創部の保護を行います。オルセノン®軟膏やプロスタンディン®軟膏、フィブラストスプレーなどを用います。ドレッシング剤はハイドロコロイドを用いたり、滲出液が多い場合にはハイドロファイバーやポリウレタンフォームが使われます。

◎白色期

白色期は褥瘡が肉芽で覆われて、周囲の皮膚の組織が盛り上がってくる時期です。アクトシン®軟膏を用いたり、ドレッシング剤としてハイドロコロイド、ハイドロファイバー、ポリウレタンフォームなどを滲出液の多さに合わせて使用します。

3. 塗り薬(軟膏)

褥瘡治療に用いられる塗り薬には次のようなものがあります。

【褥瘡治療で用いられる塗り薬】

  • 傷を保護する薬
  • 炎症や感染をコントロールする薬
  • 壊死した組織を取り除く薬
  • 滲出液を吸収する薬
  • 皮膚の再生を促す薬

傷の状態によって上記の薬を使い分けます。例えば、壊死組織を取り除いて感染や炎症をコントロールする時期では、炎症や感染をコントロールする薬を行使いますし、傷の縮小を目指す時期では、肉芽組織の形成を促す薬を使います。

褥瘡が治っていく過程では、良い肉芽の形成を促すだけではなく、滲出液のコントロールも重要です。滲出液には傷を治す効果のある物質が多く含まれているため、適切な滲出液の量を保つ必要があり、そのために軟膏を使います。
軟膏は「基材」と呼ばれる成分によって水分の吸収力が異なります。「基材」とは軟膏を使いやすくするために軟膏に混ぜられているものです。乾燥している場合には水分を与えるように乳剤性基剤の薬、乾燥を防ぎたい時には油脂性基剤の薬、滲出液を吸収したい時には水溶性基剤の薬というように使い分けます。

表:褥瘡の治療に用いられる主な軟膏

傷の滲出液 分類 代表的な薬 薬効成分
少ない






















多い
乳剤性基剤 オルセノン®軟膏0.25% トレチノイントコフェリコフェリル
ゲーベン®クリーム スルファジアジン銀
リフラップ®軟膏5% リゾチーム塩酸塩
ソルコセリル®軟膏5% 幼牛血液抽出物
油脂性
基剤
亜鉛華軟膏 酸化亜鉛
アズノール®軟膏0.033% ジメチルイドプロピルアズレン
プロスタンディン®軟膏0.003% アルプロスタジルアルファデクス
水溶性基剤 アクトシン®軟膏3% ブクラデシンナトリウム
ブロメライン軟膏5万単位/g ブロメライン
アルキサ®軟膏2% アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート
ユーパスタコーワ軟膏 精製白糖、ポビドンヨード
デブリサン®ペースト デキストラマー
カデックス®軟膏0.9% カデキソマー・ヨウ素
ヨードコート®軟膏0.9% ヨウ素

慢性期褥瘡で使われる塗り薬について時期に応じて説明します。

黒色期〜黄色期に使われる主な塗り薬

◎ゲーベンクリーム®

主に乾燥している黒色期の褥瘡に用いられる薬です。基剤が乳剤性と呼ばれるもので、これは水分が多く含まれ浸透力が強いとされます。乾燥した褥瘡に使うと、褥瘡がやわらかくなり、取り除きやすくなります。

◎ブロメライン軟膏®

壊死した褥瘡に対して用いられます。たんぱく質を分解する効果があるので、壊死した部分を取り除きやすくなります。基剤が水溶性で、乾燥しやすい特徴があるので、褥瘡の周りの正常の皮膚にくっつくと炎症を起こす可能性があります。ブロメラインを使う際には、周りを保護して塗布します。

◎ユーバスタ®軟膏

ポピドンヨードが含まれており抗菌作用があります。吸水性がよいので褥瘡に使うと乾いた状態になりやすいです。感染を予防したり、褥瘡のむくみをとって肉芽をできやすくします。

◎カデックス®軟膏

感染がある滲出液が多い褥瘡に用いられます。吸水性がよく、褥瘡を乾燥させる効果があります。

◎デブリサン®ペースト

浸出液が多い褥瘡に主に用いられます。浸出液を吸収するとともに、細菌なども除去する効果があると言われています。

赤色期〜白色期に使われる主な塗り薬

◎オルセノン®軟膏

主に浸出液が少ない褥瘡に用いられます。肉芽を作る効果が強く、伸びやすいクリームタイプなので使いやすいです。使い勝手が良い一方で、肉芽がもりあがりすぎて出血を起こしやすくなることがあるので、注意しながら使います。肉芽が盛り上がった時点で他の軟膏へ変更します。

◎プロスタンディン®軟膏

褥瘡の乾燥を防ぐ作用があるので、浸出液が適正か少なめの褥瘡に向いています。血流改善の効果があるため、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人には使いにくいです。

◎フィブラスト®スプレー

浸出液が適量か少なめの褥瘡に用います。フィブラスト®︎スプレーは傷を治すために必要な細胞の増殖を促進する作用があり、良い肉芽や皮膚の形成を促します。厳密には塗り薬ではなく、スプレータイプの薬です。

◎アクトシン®軟膏

主に浸出液が多かったり浮腫みが強い褥瘡に使用されます。盛り上がりすぎた肉芽を抑制し、浮腫を軽減させます。吸水効果があり、傷を乾燥させすぎてしまうことがあり、傷が治りきる段階で用いられる薬です。

4. ドレッシング材(創傷被覆材)

褥瘡の治療では治癒の速度を上げるために、適度な湿潤環境の維持が必要です。湿潤環境の調整に役立つのがドレッシング材であり、その役割を大きく分類すると次のような働きに分けられます。

【ドレッシング剤の役割】

  • 傷を保護する
  • 傷を乾燥から防ぐ
  • 過度な滲出液を吸収する

褥瘡の状態に応じてドレッシング材を選びます。ドレッシング材を使用する時には、剥がす時に周囲の皮膚を傷つけないように丁寧に剥がします。

表:褥瘡治療で用いられる主なドレッシング材とその機能

滲出液 ドレッシング 商品名 機能
少ない
(吸水性小)




















多い
(吸水性大)
ポリウレタンフィルム オプサイト®ウンド
3M™テガダーム™トランスペアレントドレッシング
パーミエイドS
創面保護
ハイドロコロイド デュオアクティブCGF
コムフィール®アルカスドレッシング
アブソキュア®ウンド
創面閉鎖と湿潤環境
ハイドロジェル イントラサイトジェルシステム
グラニュゲル®
ビューゲル®
ニュージェル®
乾燥した創の浸潤を保つ、疼痛緩和
ガーゼ    
高分子ポリマー デブリサン
カデックス
 
ハイドロポリマー ティエール  
ポリウレタンフォーム ハイドロサイト
ハイドロサイトキャビティー
滲出液を吸収
アルギン酸カルシウム カルトスタット
ソーブサン
滲出液を吸収
ハイドロファイバー アクアセル  

褥瘡は治癒に向かうにつれて、その状態が変わっていきます。乾燥状態が目立ったものが浸出液が多くなったり、その逆もあります。ドレッシング剤は褥瘡の状態を見極めた上で選びます。

5. 傷の洗浄・消毒などの処置

感染を予防し傷をきれいに保つ目的で洗浄が行われます。褥瘡の状態によっては洗浄に消毒薬を用いることもあります。なお、洗浄は医療用の物ではなく、水道水でも問題はありません。

6. 外科的治療:デブリードマンなど

外科的治療(手術)は主に深い褥瘡で行われます。広く行われている処置はデブリードマンと呼ばれるものです。その他に、褥瘡で広い範囲の皮膚が欠損して再生しなくなってしまったときには、別の場所から皮膚などを移植する手術が行われることもあります。

デブリードマンは壊死した組織を取り除く処置です。壊死した組織を残しておくと感染の原因になったり、新しい皮膚の再生を阻んだりするため、取り除きます。処置は局所麻酔で行われます。壊死した部分をハサミやメスで取り除いて、洗ってきれいにします。黒色期の褥瘡のように硬くて処置が難しい組織に対しては、褥瘡部分を分解したり、柔らかくするようなブロメライン®軟膏やゲーベンクリーム®を用いた上で行います。デブリードマンをした後は褥瘡の見た目が大きくなりますが、より早く治す方法として効果的です。

参考文献

日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン第4版(2015)」

褥瘡診療ガイドライン(第3版)