きゅうせいちゅうすいえん
急性虫垂炎
一般的に盲腸と言われている病気。右の下腹部にある虫垂に細菌が感染した状態
18人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2023.02.13

Beta 急性虫垂炎のQ&A

    急性虫垂炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    急性虫垂炎は、虫垂と呼ばれる腸の一部で細菌が繁殖して炎症を起こした状態です。虫垂はお腹の右下にあり、他の腸よりもかなり狭いためにささいなことで詰まってしまいます。

    糞石(便の塊)や食べ物などので虫垂の内部が詰まってしまうことで、詰まった先の行き止まりの部分で細菌が繁殖してしまいます。

    急性虫垂炎は、どんな症状で発症するのですか?

    初めはみぞおちが痛くなり、その後に右下腹部に痛みが移動するというのが典型的な症状の経過です。

    両手を自分の腰(くびれの部分)に添えた時、ちょうど右手の指先が来る位置に腰骨があります。その腰骨とおへそを結んだ線の真ん中から、やや腰骨よりが、最も痛くなりやすい部位とされています。

    急性虫垂炎は、どのように診断するのですか?

    典型的な症状や腹部の様子から急性虫垂炎でないかと考え、その上で、採血、エコー、CTといった検査を行います。

    採血では炎症反応(白血球数やCRPと呼ばれる数値)の上昇を、エコーやCTでは虫垂の大きさや厚さ、虫垂内部の糞石(便の塊)の有無、膿瘍(膿のたまり)の有無、腹水の有無などをチェックします。

    特に造影剤を用いた腹部造影CTは虫垂がとてもきれいに写るため、重要視されやすい検査です。造影剤を使用しなくても診断がつく場合や、また、熟練者が行ってかつ虫垂の位置が見えやすい箇所にある場合には、CTを行わずにエコーだけで診断がつく場合もあります。

    急性虫垂炎の治療法について教えて下さい。

    急性虫垂炎の治療は、大きく2つに分かれます。抗菌薬(抗生物質)による保存的治療と、手術治療(虫垂切除術)です。

    炎症の程度が軽い場合、そして、虫垂穿孔(虫垂に穴が開くこと)のリスクが少ないと判断される場合には、抗菌薬の内服や点滴が選択肢に入ります。

    逆に炎症が強い場合、虫垂穿孔のリスクが高い場合、腹膜炎(お腹に炎症が広がっている場合)の場合、膿瘍(膿のたまり)がある場合などは手術治療が基本となります。

    最近では小さい膿瘍に留まっている場合、抗菌薬の点滴とドレナージ(お腹にチューブを刺し入れて、膿を出す処置)を行い、炎症が治まった後に手術を行う治療(待機的虫垂切除術)を行う病院もありますが、まだ施設間で方針は様々であり、どれがベストの治療なのかは更なる医学的研究の余地があると考えられています。

    急性虫垂炎は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    急性虫垂炎は一生の間に全体の7%の人がかかる病気と言われており、腹痛の原因として頻度の高いものです。医療界では「腹痛を見たらアッペ(急性虫垂炎)と思え(=急性虫垂炎の可能性を常に忘れるな)」と言われるくらいに、しばしば見られる病気です。

    急性虫垂炎の、その他の症状について教えて下さい。

    37度台の発熱や、歩いたり咳をしたりすると、お腹に響いて痛むという症状(腹膜刺激症状と言います)などがあります。

    こういった腹膜刺激症状がある場合は、虫垂に穴が開いて重症な腹膜炎(虫垂だけでなく、お腹の全体に炎症が及んでしまうこと)に移行する可能性があるため、必ず病院を受診することをお勧めします。

    急性虫垂炎と診断が紛らわしい病気について教えて下さい。

    急性虫垂炎の症状として最も多いのは、右下腹部の痛みです。

    同じような痛みの原因となる病気は、便秘症、大腸炎や大腸憩室炎、腸間膜リンパ節炎、尿路結石、女性の病気である卵管炎・卵巣軸捻転・子宮外妊娠などがあります。

    これらの病気と区別するためにはCTの検査を行いますが、最終的に様々な検査をした上でも診断がつかず、「急性虫垂炎だった場合に手遅れになるといけないから」という理由で手術が勧められることがあります。手術をしても結局虫垂炎ではなく原因不明ということになる場合もありますし、虫垂炎以外の病気が見つかって途中で手術方式を切り替えて治すこともあります。

    急性虫垂炎の手術の方法について教えて下さい。

    急性虫垂炎には、従来からある一般的な手術法(開腹虫垂切除術)と、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下虫垂切除術があります。

    炎症の程度や病院施設によって選択される手術法は異なってきますが、最近は腹腔鏡手術を行う施設が増えてくる傾向にあります。

    急性虫垂炎は、他人にうつったり、遺伝したりする病気ですか?

    急性虫垂炎は細菌が原因の病気ですが、他人にうつることはありません。

    また同様に、遺伝の心配もありません。

    急性虫垂炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    高熱を起こす、腹痛が強くなる、お腹が響いて痛くなり動けなくなるなどの症状が出てきます。重症化すると、虫垂穿孔(虫垂に穴が開くこと)で便が漏れることにより腹膜炎(お腹の全体に炎症が及んでしまうこと)に移行する可能性があります。その場合は命に関わることがありますので、必ず病院を受診することをお勧めします。

    急性虫垂炎の手術の際の合併症はどのようなものがありますか?

    合併症とは、正しい手順で手術が行われたとしても、一定の頻度で生じてしまう病状の悪化のことです。どのような手術にも合併症の問題が常についてくるため、手術のメリットとデメリットを天秤にかけて考える必要があります。

    急性虫垂炎の合併症には、創感染(手術の傷に細菌が感染してしまう)、腹腔内膿瘍(お腹の中に膿のたまりが新しく出来る)、腸閉塞(腸管が麻痺して張ってしまう、狭くなり詰まってしまう)、腸瘻(切離した虫垂断端に再び穴が開いて、便がお腹の中に漏れだしてしまう)などがあります。

    急性虫垂炎では入院が必要ですか?入院期間はどの程度必要ですか?

    急性虫垂炎の治療は炎症の程度や治療法により異なりますが、軽症以外は基本的に抗菌薬の点滴や手術が必要なため入院が必要です。入院期間は平均で1-2週間程度となります。

    虫垂穿孔(虫垂に穴が開くこと)や膿瘍(お腹の中の膿のたまり)などがある場合は、入院期間が長期化することが多くなります。

    急性虫垂炎の再発率はどの程度ですか?

    抗菌薬で治療した患者のうち、その後1年以内に手術が必要となった(つまり抗菌薬だけでは治りきらなかったか、あるいは一時的に治っても結局再発した)割合が27.3%であったという報告があります。

    急性虫垂炎は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    急性虫垂炎は手術して虫垂を切除してしまえば、基本的に完治する病気です。しかし、極まれに手術の際に虫垂根本の処理が不十分だと、残ったわずかな虫垂が虫垂炎を起こすことがあります(遺残虫垂炎と呼ばれます)。

    急性虫垂炎の人が何か注意すべき点はありますか?

    急性虫垂炎の軽症と診断され、抗菌薬の処方で経過観察となった場合でも、まれに進行して虫垂穿孔(虫垂に穴が開くこと)をきたし、腹膜炎に発展して命に関わることもあるため、高熱が出る、症状が強くなる、痛みの部位が拡がるなどの場合は必ず病院を再度受診するように留意してください。