Beta 痛風のQ&A
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前兆期の発作予防:
発作の半日前から数時間前に、前兆として関節の違和感が分かる場合があります。このタイミングで使用できる予防薬がコルヒチンです。ただし、初回の発作では、前兆を正しく認識して事前に病院で薬を入手することは困難です。 -
発作極期の消炎鎮痛:
NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛剤や、ステロイド、コルヒチンの内服を行います(この中から単剤で使用する場合と、いくつかを併用する場合があります)。NSAIDsはパルス療法と言って、通常よりも多い量を短期間のみ使用することがあります。ステロイドは内服の他に、関節内注射を行う場合もあります。 -
非発作時の尿酸降下:
原則は生活習慣の改善です。それで効果が不十分な場合には、痛風発作が改善した後に尿酸降下薬を開始もしくは増量し、平常時の尿酸値を低めに保つよう努めます。尿酸降下薬はあくまでも発作が治まってから開始、増量すべきであり、発作の最中には現状維持(既に内服している人はそのまま)とします。尿酸降下薬を開始した直後に痛風発作が再燃することがあるため、開始初期のみにコルヒチンを併用して発作を予防することがあります。
痛風と高尿酸血症の違いについて教えて下さい。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えている状態と定義されています。
尿酸値が高いほど、痛風を発症しやすくなります。また、痛風を発症しなかったとしても、高尿酸血症であるというだけで各種生活習慣病や慢性腎臓病の発症リスクが高まることが知られています。
痛風とは、関節に尿酸の結晶ができて炎症が生じた状態のことです。医学的には痛風発作、痛風関節炎などと呼ばれることもあります。強い痛みがあり、通常数日間で改善するものの、繰り返し症状が再燃することがあります。
痛風はどんな症状で発症するのですか?
痛風は、突然の足の関節痛で発症することが多いです。足の親指の付け根や足首の関節に多く、肘や指、膝などに症状が出ることもあります。複数箇所の関節が同時に痛くなることは有り得ますがまれです。関節は痛みと同時に赤みと熱を持ち、腫れてくることが特徴です。痛みは数日間から1週間程度持続することが多いと言われています。患部の熱だけでなく、全身の発熱で39度を越えるような場合もあります。
また、何回も痛風発作を繰り返している方の場合には、痛みが出る半日前から数時間前などに患部の違和感(しびれやムズムズ感など)が実感できる場合もあります。
痛風の診断方法について教えて下さい。
症状と経過が典型的で、元から高尿酸血症が指摘されている場合などでは、検査なしで痛風と診断されてそのまま治療に進む場合があります。
典型的ではなく判断に迷う場合には、腫れている関節に針を刺して、内部の成分を確認することで診断が可能です(関節穿刺)。関節穿刺は、その他の病気を否定する目的でも行われることがあります。関節穿刺の結果は医療機関によって、その場で確認できる場合と、数日間かかる場合があります。
採血は必須な検査ではありません。痛風の発症前に尿酸値が高かったことは診断の上で重要な情報なのですが、痛風を発症した直後には尿酸値が一過性にむしろ低下していることもあり、痛風かどうかの判断には使いづらいためです。またレントゲンも、その他の病気の可能性を除外するためには用いられることがありますが、痛風そのものの診断には直結しません。
痛風の治療法とその選び方について教えて下さい。
痛風の治療は、大きく3つに分かれます。前兆期の発作予防、発作極期の消炎鎮痛、その後(非発作時)の尿酸降下です。
痛風は、どの程度の頻度で起こる病気ですか?
30歳以上の男性では、有病率が1%を超えていると推定され、現在も増加傾向であると考えられています。
高尿酸血症があるからと言って必ずしも痛風を発症するわけではありませんが、これらはいずれも珍しくない病気(状態)です。
痛風の発症の有無にかかわらず、高尿酸血症のある割合については、国内の成人男性で20-30%、成人女性では1-4%と報告されています。
痛風や高尿酸血症の、その他の症状について教えて下さい。
高尿酸血症が続くと、痛風結節と呼ばれるコブができることがあります。悪性腫瘍のように命に関わるものではありませんが、初期には数mm大であるものが、放置していると数cmまで成長することがあります。尿酸値を低くコントロールすることで、縮小する場合があります。結節に細菌が感染したり、関節や神経を圧迫している場合には手術で摘出することも可能です。
痛風と診断が紛らわしい病気はありますか?
偽痛風と呼ばれる似た関節炎があります。結晶の成分が尿酸ではなくピロリン酸カルシウムであるという違いがありますが、比較的似た症状を発症します。典型的な部位に差があることや、偽痛風ではレントゲンで結晶成分が見えることがある点などから区別します。関節穿刺を行えば、より確実に区別をすることが可能です。
その他の病気では、感染性関節炎や外傷によるものなどが似た症状を呈することがあります。
痛風の人は、尿酸値がいくつ以上の場合に、尿酸値を下げる治療を行うべきですか?
痛風発作を繰り返している場合には原則として治療を開始し、尿酸値を6.0mg/dl以下に維持することを目指します。逆に痛風発作を一度も起こしていないが尿酸値が高いという場合には、必ず治療が必要というわけではありませんが、8.0mg/dlを上回っていることが内服薬の開始を考慮する目安とされています。
痛風の原因、メカニズムについて教えて下さい。
痛風は、関節に炎症が生じる関節炎の一種です。関節の内部で結晶化した尿酸が周囲を刺激して、炎症が生じます。尿酸はもともと人間の血液中に含まれる物質ではあるのですが、この濃度(尿酸値)が高くなると血液中に溶けきらずに固体化(析出)し、関節内などで結晶となります。
アルコール摂取や、食事からのプリン体(尿酸の原料となる)の過剰摂取は尿酸値を上げることにつながりますし、もともと尿酸を産生しやすい、もしくは尿酸を体外へ排泄しにくいといった、人それぞれの体質も関与しています。
痛風の人は、尿酸降下薬を生涯飲み続ける必要があるのですか?
基本的には尿酸値が下がらない限りは内服を続けます。また尿酸降下薬は高くなった尿酸値を一時的に下げるための薬ですので、内服を中断すると再度尿酸値は上がってくることになります。
一方で、高尿酸血症の原因には生活習慣の因子も強く関与しているため、生活習慣の改善のみで尿酸値が改善することもあります。そのような場合には、内服薬を飲み続ける必要はありません。
痛風に合併しやすい病気はありますか?
痛風患者の10-20%に、尿路結石が合併すると言われています。尿路結石として形成される石(結石)には様々な成分のものがありますが、この中には尿酸が元となっている結石があります。
また尿酸値が高いほど、将来的に高血圧を発症しやすくなることも知られています。
痛風では入院が必要ですか?通院の頻度はどの程度ですか?
通常、入院は必要ではありません。痛風発作で外来を受診した場合には、その一度で通院が済む場合もありますが、その後も尿酸値を下げる治療を継続するために、1-2ヶ月に1回など定期的に採血や薬処方のため通院することが勧められます。
痛風は、遺伝する病気ですか?
必ず遺伝するというものではありませんが、高尿酸血症になりやすい体質は遺伝すると言われています。
痛風に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
痛風の発作時には、患部にかかる負担を減らすため、できる範囲内でなるべく安静にします。入浴は可能ですが、患部は暖めるより冷やした方が良く、熱すぎるシャワーや長時間の入浴は避けるようにします。
アルコール1)、肉類2)、糖質3)を多く含むソフトドリンクの摂取量が多い人や、BMIが高い人は痛風を発症しやすい傾向にあるとする報告があります。同報告ではコーヒー摂取量が多い、適度な運動を日常的に行っている、ランニング距離が長い人は痛風を発症しにくいことも指摘されています。
痛風は生活習慣病の一つですから、発症を予防するためにもこれらの点に留意して日常生活の改善を心がけるべきと考えられます。
アルコールと尿酸値、そして痛風の関係を教えて下さい。
アルコールは尿酸値の上昇に関連しています。ビールなどのお酒には尿酸の原料となるプリン体が多く含まれていますし、またプリン体カットの飲料であってもアルコールそのものに尿酸値を高くする作用があります。
尿酸値が上がると痛風の発症率が上昇するため、痛風を予防する観点からは、飲酒量を減らすことが望ましいと言えます。
痛風の原因となる、プリン体を多く含む食物を教えて下さい。
魚介類や肉には多くのプリン体が含まれます。魚介類ではカツオ、イワシ、エビなどに、肉類では特にレバーに多く含まれています。
アルコールでは紹興酒やビールに多いのですが、アルコールそのものに尿酸値を直接上げる作用があるため、実際のプリン体の含有量以上に注意が必要です。
痛風は、完治する病気ですか?
痛風は一旦発作が治まれば症状が無くなります。しかし高尿酸血症が続いている限りは常に再発の可能性があるため、その意味では完治する病気であるとは言えません。
尿酸値を十分に低下させることで、再発作のリスクを下げることは可能です。