ききょう
気胸
肋骨の内側で肺の外側の胸腔というスペースに空気が貯まった状態。肺に穴が空いてしまい空気が漏れることによって起こることが多い
24人の医師がチェック 191回の改訂 最終更新: 2021.03.31

気胸の検査について:胸部X線検査、CT検査など

気胸は肺に穴が空いて空気漏れを起こすなどして、肺の外側に空気が溜まってしまった状態を指します。気胸は主に胸部X線検査で診断されます。胸部CT検査や超音波(エコー)検査で診断されることもあります。ここでは気胸の診断や治療方針決定のために行われる検査について説明します。

1. 身体診察、バイタルサインのチェック

受診のきっかけとなった症状や、持病などその他の背景から気胸の可能性が考えられた人には、まずは血圧測定などの簡単な検査が行われます。パルスオキシメータという指につける小型の機械で、脈拍数や酸素飽和度(体内の酸素が足りているかを測る)もチェックされます。これら血圧、脈拍数、酸素飽和度、呼吸数、意識状態などは「バイタルサイン」と呼ばれます。

バイタルサインに目立った異常がある人では急いで検査や治療を進める、あるいはより高度な医療機関への転院が必要になるため、真っ先にチェックされるわけです。バイタルサインのチェックは重症度を判定するうえでとても大事で、しかも簡単なので、お医者さんの問診の前に行われることもあります。

また、気胸が起きている側に聴診器をあてると、呼吸の音が弱く聞こえる、あるいは聞こえないのが特徴的です。軽度の気胸の人では聴診しても分からないことがありますが、ある程度以上であれば気胸を起こしていることが身体診察のみで推測できます。

2. 胸部X線(レントゲン)検査

胸部X線レントゲン)検査は気胸の診断を確定するうえで、最も広く行われている検査です。気胸では、肺から漏れ出した空気に圧迫されて肺が萎みます。その結果、本来肺があるはずの部分で、肺の中を走る血管が見えなくなる部分(無血管野)が出現します。このような状態が認められれば、気胸と診断されます。

通常、レントゲン検査は息を吸って止めた状態で撮影しますが、小さな気胸を見つけるために息を吐いた状態でも撮影することがあります。

レントゲン検査は手軽に行える検査なので、気胸の可能性が考えられる人には、ほぼ必ず行われます。次に説明する胸部CT検査や超音波(エコー)検査と比較しても、1枚の写真で両側の肺全体が写って全体像を把握しやすい点は大きなメリットです。

一方で、わずかな気胸をレントゲン検査で見つけるのは難しく、気胸を検出する感度においては胸部CT検査や超音波検査に劣ります。また、起き上がった状態で撮影しないと、レントゲン検査で気胸を見つけることは難しいです。そのため、起き上がれないような状態の人では、胸部CT検査や超音波検査による気胸の診断がより大事になります。

3. 胸部CT検査

胸部CT検査は胸部を輪切りにして観察する検査です。CT検査では、かなり小さな気胸まで見つけることができ、気胸の診断において最も精度が高い検査と言えます。また、気胸そのものの有無だけではなく、元々の肺がどのような状態で、破れた箇所がどこなのか推定するのにも役立ちます。

肺が萎んでいるときにCT検査を行うと、破れやすい箇所や元々の肺の状態が分かりにくいことがあります。そのため、いったん治療で肺を膨らませてからCT検査を行うこともよくあります。

なお、CT検査は気胸を診断するうえで最も精度が高い検査ではありますが、必ずしも行われるわけではありません。例えば、特に元々の肺の病気がない人で、手術を受けたりせず様子見だけで済む場合には、レントゲン検査のみで十分なこともあります。

4. 超音波(エコー)検査

超音波(エコー)検査は、超音波の出る機械を身体に押し当てて行う検査です。仰向けに寝た状態で、胸に機械を当てて気胸の有無を判定します。身体への負担が少ない検査であり、手早く行うことができます。

本来、超音波検査は空気を多く含む肺のような臓器を対象にするのは得意ではないと考えられてきました。そのため、気胸の診断に超音波検査が使われるようになったのは比較的最近であり、現在でも広く普及しているとは言えない状態です。

一方で、熟練したお医者さんが使えばレントゲン検査よりも高い精度で気胸を有無を調べることができます。それでも、気胸の程度や肺そのものの情報まで得られるという点では、CT検査のほうが優れています。

このような背景があるため、肺に対する超音波検査は「救急担当のお医者さんが、救急搬送されてきた人に対して、取り急ぎ気胸の有無を手早く調べる」などの状況でよく使われます。

5. 血液検査

血液検査では気胸の有無や程度に関する情報は得られないため、気胸と診断されるうえでは特に必要のない検査です。しかし、「気胸以外に何か病気が隠れていないか」「気胸の治療で処置を受ける際に、出血しやすくなる状態ではないか」などを調べるために、血液検査が行われることもよくあります。

また、重度の気胸の人では「動脈血ガス分析」という血液検査が行われることもあります。これは、脚の付け根や手首(親指側)を走る動脈から血液を採取する検査です。これらの動脈は触ってみると脈打っているのが分かると思います。動脈は、酸素を豊富に含んだ血液が心臓から送り出される時に通る血管なので、動脈血を調べることで体内に酸素が足りているかどうかがよく分かります。重度の気胸では心臓・肺の血液循環がうまくいかず体内で酸素が不足しうるため、この検査で酸素が不足していないか調べられることがあります。

6. 心電図検査

心電図検査も、気胸の有無や程度に関する情報が明確に得られる検査ではありません。そのため、気胸と診断されるうえで直接的には必要のない検査です。

気胸で胸の痛みは最もよく出る症状であり、心筋梗塞など心臓の病気も考慮されることがあります。こうした人では、心臓の異常がないか調べるために心電図検査が行われます。

なお、気胸でも漏れ出した空気が心臓を圧迫することなどによって、正常ではない心電図検査の結果となることがしばしばあります。そのため、気胸の人の心電図を見慣れているお医者さんは「この心電図であれば、左側の気胸である可能性が高そうだ」と推測できることもあります。もちろんレントゲン検査、CT検査、超音波検査などと比べれば気胸を診断する精度では劣るため、心電図検査が気胸の診断そのものに使われることはありません。

参考文献

・日本気胸・嚢胞性肺疾患学会/編, 「気胸・嚢胞性肺疾患 規約・用語・ガイドライン(2009年版)」, 金原出版, 2009年

Baumann MH, et al. Management of spontaneous pneumothorax: an American College of Chest Physicians Delphi consensus statement. Chest 2001; 119: 590-602.

MacDuff A, et al. Management of spontaneous pneumothorax: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax 2010; 65 Suppl 2: ii18-31.

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