Beta 脳腫瘍のQ&A
- 大きな脳腫瘍が、周囲の脳を圧迫し、頭蓋骨の内側の圧が高くなって、頭痛を起こして見つかることがあります。
- 脳腫瘍によって脳が圧迫されることで、その部分が担当しているはたらきが悪くなることにより、麻痺や言語障害、ものが二つに見える、ふらつくなどの症状がでます。脳自体からできる腫瘍も同様な症状を起こします。
- 最近では、脳ドックや、脳腫瘍とは直接関係ない頭痛やめまいで偶然見つかることもあります。
脳腫瘍の原因、メカニズムについて教えて下さい。
頭蓋骨の内側にできる腫瘍を一般的に脳腫瘍と呼びます。 脳腫瘍にはさまざまな種類があり、ほとんどのもので原因は分かっていません。 脳由来の腫瘍の多くは、神経膠細胞(神経細胞の周りの細胞)という種類になるはずの細胞が、異常に増殖しておこります。 いわゆる”神経細胞”自体は、原則細胞分裂を起こさないため、多くの脳腫瘍は神経細胞の周りの細胞が腫瘍になったものです。
転移性脳腫瘍の場合には、からだの他の部分に既に癌があって、それが脳に転移しておこります。肺にすでに転移が起こっていることもしばしばあります。
脳腫瘍は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
転移性脳腫瘍などを除き、脳や頭蓋骨などからできる原発性脳腫瘍の頻度は10万人あたり10-12人と言われています。 脳腫瘍の種類はさまざまであり、乳児から高齢者までいろいろな脳腫瘍が起こることがあります。
良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍の違いについて教えて下さい。
頭蓋骨の内側にできる腫瘍を脳腫瘍と呼びますが、頭蓋骨の内側にあるけれど、脳の外側にあるものは、”取り切る”ことができるものが多く、良性腫瘍とされるものが多いです。ただし、脳の外側にできていても取り切れないもの(脊索腫など)もあります。 脳を形成する神経細胞や神経膠細胞から起こった腫瘍は、全てを取り除くことは困難なことが多いです。そういう意味では、良性とはいいにくいです。
腫瘍の細胞自体が、どんどん分裂を繰り返すものは、腫瘍の組織自体が悪性といえます。狭い意味では、この細胞自体の性質のため、成長が早く、周りの組織(脳)に広がっていくものを悪性脳腫瘍といいます。 脳の外側にできるものでも、細胞の成長が著しく早いものもあり、やはり悪性と考えるものもあります。
脳腫瘍が発症しやすくなる、または脳腫瘍の人が他に注意すべき病気はありますか?
神経線維腫症という病気の方や、脳腫瘍が起こりやすい病気の方はいますが、そのような遺伝性のある方以外では、脳腫瘍が起こりやすい条件は知られていません。 脳腫瘍があることで、てんかん発作(症候性てんかん)を起こすことがあります。しばしばてんかん発作(痙攣)によって脳腫瘍がみつかることもあります。 てんかん発作は、脳腫瘍を取り除いても引き続き起こることがあり、その場合には抗てんかん薬の内服が勧められます。自己判断で抗てんかん薬を中止するのは避けるべきです。
脳腫瘍は、他人にうつる病気ですか?
感染症ではないので、他人にうつることはありません。
脳腫瘍は、遺伝する病気ですか?
神経線維腫症やvon Hippel-Lindau病といった脳腫瘍ができる遺伝病が知られていますが、多くの脳腫瘍の方は遺伝病とは関係なく起こります。
脳腫瘍は、どんな症状で発症するのですか?
脳腫瘍の、その他の症状について教えて下さい。
腫瘍の周りの脳組織が影響を受けることで、てんかん発作(痙攣)を起こすことがあります。脳腫瘍によって、脳脊髄液の循環がわるくなり、水頭症を起こして見つかることがあります。 まれに腫瘍の中に出血することで、脳卒中のように麻痺や意識障害で発症することがあります。
脳腫瘍が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
脳腫瘍が大きくなることで、頭蓋骨の内側の圧が高くなりますが、これが進むと意識が悪くなり、ぼうっとしている時間が長くなったり、刺激しないと起きなかったりという症状が出てきます。さらに進むと刺激しても目を覚まさなくなり、呼吸の状態が悪くなります。
脳腫瘍は、どのように診断するのですか?
CTやMRIで診断できます。多くの場合、造影剤を用いた検査を行うことで、腫瘍の部分に造影剤が取り込まれることで、より周囲との関係などが分かりやすくなることがあります。
脳腫瘍の、その他の検査について教えて下さい。
血管が豊富に入っていそうな脳腫瘍や、脳の深部にあるものの場合には、カテーテルを用いた脳血管撮影検査を行うことがあります。検査自体にリスクがあるため、通常は治療を前提とした検査になります。 MRIの撮り方の一つですが、MRSという検査で腫瘍内部の化学物質の割合を調べることで、診断する方法があります。 悪性か良性かを調べる必要がある場合にはPETという検査を行うことがありますが、PETは非常に大がかりな設備が必要であるため、検査は別の病院で行う、ということも多いです。
脳腫瘍と診断が紛らわしい病気はありますか?
脳に細菌などが感染して膿がたまる脳膿瘍という病気は、MRIなどでのみかけが脳腫瘍と似ています。
脳腫瘍の治療法について教えて下さい。
脳腫瘍の治療法は、3種類の治療法があり、脳腫瘍の種類によって単独、もしくは組み合わせて行います。 手術治療は、頭蓋骨に穴を開けて、腫瘍を全て取り除いたり、あるいは組織の一部を切除して、病理診断するものです。原則として、できている腫瘍がどのようなタイプなのかを調べる必要があると言えます。 放射線治療は、脳の一部もしくは全体に放射線をかける治療です。脳や神経は放射線に弱いため、必要な量を、2週間から6週間に分割して照射したり、小さいものであれば、ガンマナイフやサイバーナイフといった、一カ所に集中して照射する方法が採られます。 化学療法は、単独で行うことはまずありませんが、基本的には悪性腫瘍に対して行います。
脳腫瘍の治療法の使い分けについて教えて下さい。
脳腫瘍の種類によって最も有効な治療法が異なります。良性腫瘍の場合には原則症状を来している部分をできるだけ切除します。 悪性腫瘍が疑わしい場合は、手術によって組織を取り、病理診断を行って必要なら放射線治療や化学療法を行います。
ただし、既に癌を患っているなどの事前情報があり、MRIやCTでも転移性脳腫瘍が強く疑われるような場合には、手術を行わずに放射線治療を行うことが多いです。
良性腫瘍でも、聴神経腫瘍のように、できている部位や形から、まず間違いないという場合には、手術を行わずに放射線治療を行うことがあります。
脳腫瘍の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?
悪性腫瘍に対する化学療法をいつまで行うかというのは、難しい問題で、結論はでていませんが、概ね2年もしくは3年としていることが多いと考えられます。
脳腫瘍では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?
手術治療は入院が必要になります。 良性腫瘍で、麻痺や言語障害などの神経障害が出なければ10日程度の入院で済むことが多いです。 悪性腫瘍では、手術に続いて、放射線治療や化学療法が必要になることがあり、入院期間が1ヶ月を越えることも多いです。
腫瘍による症状や、手術の結果、麻痺や言語障害などの症状が出て、元の生活に直接戻るのが難しい場合、いったんリハビリ専門病院に転院して集中的なリハビリを行うこともあります。症状が比較的軽い場合には、外来通院でリハビリを行うという選択肢もあります。
脳腫瘍は、再発を予防できる病気ですか?
良性脳腫瘍でも再発を起こすことはありますが、予防する手段は知られていません。再発した場合には、再手術か放射線治療を検討します。 悪性腫瘍の場合は、再発を予防するため、放射線治療や化学療法を行います。ただし、完全にコントロールすることは現状では困難です。
脳腫瘍に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
症状のない良性脳腫瘍のかたの場合、特に気を付けることはありませんが、増大してくることがあるため、定期的な観察は続ける方がよいと考えられます。 また、症候性てんかんを起こされた方や、大脳近くの腫瘍の手術を行った場合には、手術後もてんかん発作を起こすことがあり、術後半年程度は寝不足などのストレスに注意する方がよいと思われます。
脳腫瘍は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?
良性脳腫瘍の場合には、手術で全摘できれば、ほぼ完治といえるものが多いですが、手術中に全て取り除けたと思っても、再発してくるものが稀にあります。 悪性脳腫瘍の場合には、現時点で完治にいたる治療法はありません。
脳の圧迫によって起こっていた症状に関しては、手術後改善し、ほぼ元通りに戻ることも多いですが、脳や神経自体からできた腫瘍の場合には、その症状が後遺症として残ることがあります。また手術にも後遺症のリスクがあります。
脳腫瘍に関して、手術では、丸坊主にするのですか?
病院によりますが、今では多くの病院で、なるべく狭い範囲だけ髪を切って行うようになっています。剃髪しないことによって感染の危険性が上がるということはありません。 髪の毛に、血糊が付くことで、洗髪できるようになるまで気持ち悪いといことはあるかもしれません。 悪性脳腫瘍が疑わしい場合でも、丸坊主にせずに行うことは可能です。しかし、術後に放射線治療(全脳照射)を検討している場合には、放射線治療によって脱毛が起こります。
脳腫瘍に関して、手術後、髪はいつから洗えますか?
病院によりますが、手術後3,4日目から洗えるところが多いと思います。傷の近くに血糊が付いていることによる菌の繁殖を抑えるためです。
脳腫瘍に関して、手術後、してはいけないことはありますか?
頭皮に傷があるため、パーマ液や、いわゆる毛染めのような刺激の強いものは、3ヶ月程度は避けて下さい。 また海・プール・温泉などは、雑菌が多いため、やはり避けていただく方が無難です。
脳腫瘍に関して、てんかんの薬を処方されましたが、ずっと飲む必要があるのでしょうか?
てんかん発作によって脳腫瘍が見つかった場合や、手術後に痙攣発作があった場合には、通常、半年程度は飲んでいただきます。発作が全くない場合には、脳波を確認し、減量することも考えます。退院後も発作がある場合には、長期に内服が必要と考えていただくほうが良いと思われます。
脳腫瘍がある場合、妊娠はできますか?
髄膜腫という種類の良性脳腫瘍では、成長に女性ホルモンが関与していることがあり、妊娠中に急速に大きくなる例が報告されています。髄膜腫が疑われていて、経過を見られている場合には担当医にご相談ください。
悪性脳腫瘍の際の化学療法ではアルキル化剤という薬剤を用いますが、この種類の薬によって卵巣機能が障害を受けることが知られています。また脳に放射線治療を行うことでホルモンの分泌異常が起こることも指摘されています。これに対してはホルモンに似た薬を投与することで防ぐ方法が、他の部位の悪性腫瘍では行われています。 脳腫瘍の方では、このような報告はまだ少ないようです。 小児の悪性脳腫瘍に対しては、強力な化学療法と放射線治療が行われます。その結果、ホルモンの分泌異常がしばしば起こると考えられますが、もともと生存率が低かったため、生殖可能年齢になった時の状況に関して、詳しい報告はないようです。
携帯電話を使うと脳腫瘍になるという話を聞きましたが、そのようなことはあるのでしょうか?
医療や健康については様々な説が広がっていますので、ご心配になることも多いかと思います。 医学的には、携帯電話と脳腫瘍について関連性を調査した研究があります。しかし、その研究でも携帯電話によって脳腫瘍ができやすくなるという説を裏付ける結果にはなっていません。過度に心配することなく、通常通りの生活を送られて構いません。