ろたういるすげりしょう
ロタウイルス下痢症
ロタウイルスによって引き起こされる胃腸炎で、冬に乳幼児の間で流行する。白い下痢便が特徴
16人の医師がチェック 138回の改訂 最終更新: 2020.10.01

ロタウイルス下痢症の基礎知識

POINT ロタウイルス下痢症とは

ロタウイルスによる感染が起こった状態です。子どもに多い感染症で、5歳までにほとんどの人が経験すると言われています。症状は吐き気や下痢になりますが、下痢便の色が白色調になることが特徴です。また、ロタウイルス感染を予防するワクチンがあり、生後6週以降に2回あるいは3回打つことになります。 ロタウイルス下痢症になった場合は、脱水に気をつけながら適宜水分を補給するようにして下さい。検査は便を用いて行うことができますが、症状や経過からロタウイルス感染と診断できることが多く、検査を行わずに治療を行うことがほとんどです。ウイルスによる感染なので抗生物質(抗菌薬)は効きません。脱水がある場合は点滴で脱水を改善させます。たいていの場合は医療機関を受診する必要はありませんが、ぐったりとしている場合は受診するようにして下さい。感染者が子どもである場合は小児科を受診し、大人である場合は内科あるいは消化器内科を受診して下さい。

ロタウイルス下痢症について

  • ロタウイルスによって引き起こされる胃腸炎で、冬に乳幼児の間で流行する
  • ロタウイルスが手や環境などを介して口から体内に入り感染することが原因
    • 感染者の便や嘔吐物には大量のロタウイルスが含まれる
  • 乳幼児や乳幼児のいる母などで感染の危険性が高い
    • 5歳までにほぼ全員が一度は感染を経験すると考えられている
    • 何度も感染しうるが、初めての感染時の症状が最も重い
    • 5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40-50%前後はロタウイルスが原因である
    • 世界では毎年約45万人がロタウイルス感染症により死亡している(主に発展途上国)
  • 3月から5月にかけての発症が多い

ロタウイルス下痢症の症状

  • 2-4日の潜伏期間の後、水の様な下痢や嘔吐を繰り返す
    • 水のような下痢(白色便)
    • 吐き気
    • 嘔吐
    • 発熱
    • 腹痛
  • 激しい嘔吐・下痢のために脱水が進行することもある
  • 発熱や腹痛の程度は強くない
  • 腸管同士が重なる腸重積という病気を起こすことがある
    • 胃腸炎の経過中に、イチゴゼリーの様な便がみられた場合や突然泣いたり泣き止んだりを繰り返す場合には腸重積も考える
  • 合併症としてけいれん、肝機能障害急性腎不全、脳症、心筋炎などが起こることもあり注意が必要

ロタウイルス下痢症の検査・診断

  • 患者の症状や家族、周囲の感染している状況からロタウイルスに感染している可能性を考える
  • 便中のウイルス検査を行うことがある
    • ただし、ロタウイルスでもその他のウイルスでも治療法は変わらないため、検査なしに治療を開始することが一般的

ロタウイルス下痢症の治療法

  • 脱水予防のために少量でも水分を摂取し続けることが重要
    • ロタウイルスに効果のある抗ウイルス薬はない
    • 下痢止め薬や吐き気止めは状態を悪化させうるので、基本的に使用しない
  • 特に小児では経口補水療法が推奨されている
    • 水分、塩分、糖分の配合バランスを調整した飲料(経口補水液)を口から飲ませることで、脱水状態からの回復や予防を図る
    • 最初から大量に飲むと吐いてしまうので、最初は欲しがっても少量のみ飲料を与える(ペットボトルのキャップ1杯程度)
    • 数分間隔をあけて嘔吐がないことを確認したら、また少量水分を与える
    • 症状が落ち着くまで根気強く繰り返し与える
  • 水分をとって数時間症状が落ち着いていれば、固形物を少しずつ摂取してもよい
    • その際はからいもの・すっぱいもの・味の濃いものなどは避ける
    • 普段よりも柔らかくする必要はない   離乳食であればいつも通りのかたさ、大人と同じ食事ができる年齢であれば普通の食事でよい
    • 柑橘系の果物・果汁や乳製品は症状が落ち着くまで可能な限り避ける   母乳や普段飲んでいる粉ミルクは続けてよい
    • 普段より食欲が落ちていることが多いので、食べやすいものだけでもよい
    • 水分がある程度とれていればよい
  • ごく少量の水分摂取でも嘔吐・下痢がみられる場合や、脱水が進んでいる場合には入院が必要となることもある
  • 手洗いや感染者の汚物の処理の徹底を行うことで、出来る限りの予防に努めることが重要
    • 感染力が非常に強いため、完全に予防することは難しい
    • 手洗いを徹底する
    • おむつや吐物を処理する際には使い捨ての手袋やマスクを使用する
    • テーブルや床などの環境、衣類などは次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
  • 国内ではロタウイルスに対するワクチン(定期接種)がある
    • 生後6週以降で2回または3回接種する
    • 口から飲むタイプのワクチン
    • 感染を100%予防することはできないが、感染した際の重症化を防ぐ効果は大きい
    • ワクチン接種1週間以内の腸重積発症の報告はある(10万人に1-2人)
      • そのため推奨接種時期は腸重積が起こりにくいタイミングとなっている
    • 一方で、ロタウイルス感染重症化のリスクを考えてワクチン接種が推奨されている

ロタウイルス下痢症の経過と病院探しのポイント

ロタウイルス下痢症が心配な方

いわゆる「お腹のかぜ」の一つとして、腹痛があって水のような下痢が止まらず、嘔吐や熱が出たりするのが急性胃腸炎です。この急性胃腸炎は原因となる病原菌によっていくつかに分類されますが、ロタウイルスが原因となる急性胃腸炎のことを一般的にロタウイルス下痢症と呼びます。
原因がロタウイルスであるかどうかは、基本的には問診と症状から判断します。成人でもかかることはありますが、大半は5歳未満の小児にみられる感染症です。

上記のような症状に該当してご心配な方は内科、消化器内科、小児科のクリニックでの受診をお勧めします。ただし、ロタウイルス感染症の場合には特効薬がないため、医療機関を受診しても熱冷ましや整腸剤など、ドラッグストアで購入できる市販薬と同じような薬を処方することしかできません。自宅で安静にして、脱水にならないよう水分摂取をこころがけるというのも対処法の一つです。

ロタウイルス下痢症は、問診と診察で診断をする病気です。採血やレントゲンは、他の病気ではないことを確かめるために使うことができるかもしれませんが、ロタウイルスそのものの診断の参考になりません。

ロタウイルスの検査キットと呼ばれるものがあり、これを用いると原因がロタウイルスかどうかが分かることがあります。便を用いて15分ほどで結果が出る検査ですが、3種類いるロタウイルスのうち1種類にしか対応していないため、ロタウイルスが原因の下痢だったとしても、検査の結果が陰性(「ロタウイルスではありません」という結果)になってしまうことがあります。

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ロタウイルス下痢症でお困りの方

ロタウイルス下痢症には抗生物質(抗菌薬)が効かず、他のウイルス性胃腸炎と同じく、薬で治すことができません。一方で安静にして水分摂取を適切に行っていれば1週間程度で自然に治る病気でもあります。

対症療法として熱冷ましや整腸剤の処方を受けることは可能ですが、これらはあくまでも対症療法であり、使用したからといって治りが早くなるわけではありません。また、ウイルスが体外へ出て行くのを止めてしまうため、下痢止めは使用しないのが原則です。

2歳未満の小児の場合には下痢による脱水が強くなってしまい、水分補給の点滴を行うために入院が必要となることがあるので注意が必要です。しかし逆に言えば、水分と塩分を少しずつでも自力で摂取できるような場合、体調が悪い中で無理に病院を受診するというだけでなく、自宅で安静にするというのも選択肢の一つになります。

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