2017.01.22 | ニュース

本当に危険な失神を診察・血液・心電図で見分ける方法

失神患者4,030人の統計から

from CMAJ : Canadian Medical Association journal = journal de l'Association medicale canadienne

本当に危険な失神を診察・血液・心電図で見分ける方法の写真

失神の原因で一番多いのは血管迷走神経反射です。誰にでも起こりますが、横になって休めばすぐに治ります。一方、心臓の病気による失神は危険です。危険な場合を見分けるために、状態を点数で評価する基準が作られました。

カナダの研究班が、失神で受診した患者の統計をもとに、患者の特徴から危険の強さを予測する採点基準を作成して医学誌『CMAJ』に報告しました。

研究班は、協力施設で2010年9月29日から2014年2月27日に診察された、失神発生後24時間以内の患者のデータを集めて解析しました。

患者のうち、30日以内に以下のいずれかに至った人を「深刻な結果」と定義して、深刻な結果を予測する特徴を調べました。

  • 死亡
  • 心筋梗塞
  • 不整脈
  • 構造的心疾患
  • 肺塞栓症
  • 深刻な出血
  • ペースメーカー装着などの治療が必要な状態

 

統計解析により、深刻な結果と統計的に関連のある特徴が列挙されました。

見つかった特徴を使い、以下の採点基準が作られました。

血管迷走神経反射をよく起こす体質 -1
心臓の病気にかかったことがある 1
収縮期血圧(上の血圧)が90mmHg未満または180mmHgより高い 2
血液検査でトロポニンが高い 2
心電図でQRS軸の異常がある 1
心電図でQRS幅が130msより長い 1
心電図で補正QT間隔が480msより長い 2
血管迷走神経性失神の診断 -2
心原性失神の診断 2

合計点ごとに深刻な結果に至った割合を計算すると、最低の-3点では0.4%、最高の11点では83.6%でした。深刻な結果が予測される危険度を大まかな段階に分けると以下のようになりました。

  • -3から0:非常に低い~低い(2%未満)
  • 1から3:中等度(10%未満)
  • 4から5:高い(20%未満)
  • 6以上:非常に高い(20%以上)

 

失神の原因のうち、一番数が多いのは血管迷走神経反射です。極度に緊張したとき、注射や採血をされたときなどに気が遠くなって倒れてしまいます。血管迷走神経反射は誰にでも起こる一時的な反応で、病気ではありません。体質によって繰り返す人もいます。

一方で、以下のような心臓の病気による失神は、危険な事態にもつながります。

  • 不整脈
  • 肥大型心筋症
  • 大動脈弁狭窄症

心臓の病気と言うと胸が痛くなるイメージがあるかもしれませんが、胸の痛みがない心臓の病気もたくさんあります。心筋梗塞が原因で不整脈が発生し失神する場合もあります。

失神した人に対して、特に治療の要らない血管迷走神経反射なのか、心臓の病気の治療をするべきなのかを見分けることは重要です。診断を助ける基準があることで、素早く適切な対処をする役に立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Development of the Canadian Syncope Risk Score to predict serious adverse events after emergency department assessment of syncope.

CMAJ. 2016 Sep 6.

[PMID: 27378464]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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