2016.12.17 | ニュース

偽の薬とわかっていても効いた?腰痛を和らげる効果

97人の腰痛患者で検証

from Pain

偽の薬とわかっていても効いた?腰痛を和らげる効果の写真

薬が効くと思って飲むと効いたように感じてしまう「プラセボ効果」がよく知られています。腰痛患者が有効成分のない偽薬を飲んだところ、偽薬とわかっていても痛みが和らいだことが報告されました。

ポルトガルとアメリカの研究班が、長引く腰痛に対して偽薬の効果を調べた研究を専門誌『Pain』に報告しました。

偽薬(プラセボ)とは、有効成分を含まない、糖類などから作られた薬です。薬物の作用としては体に無害無益と考えられます。しかし、心理的にプラセボ効果を起こす可能性があるとも考えられます。

この研究では、3か月以上腰痛が続いている成人97人が対象となりました。対象者はランダムにグループに分けられ、通常の治療を受けるグループと、通常の治療に加えて偽薬を「これは偽薬です」と説明したうえで飲むグループとされました。

偽薬の説明として、偽薬には有効成分が含まれないが、強いプラセボ効果を起こす場合がある点も伝えられました。偽薬を飲まないグループでは、一定期間後に希望すれば偽薬を飲むこともできると伝えられました。

両方のグループで3週間の治療が行われました。3週間後に、偽薬を飲まなかったグループのうち希望者が3週間偽薬を飲みました。

治療後に、痛みを0から10の数値で表現する自己評価で、痛みの変化が比較されました。

 

3週間の治療後に次の結果が得られました。

通常治療に比べて、オープンラベル偽薬は3種の0-10ポイント数値評価スケールのそれぞれ、また0-10ポイント複合疼痛スケールにおいてより大幅な痛みの減少をもたらし(P<0.001)、効果量は中等度から大だった。複合数値評価スケールにおける痛みの減少はオープンラベル偽薬群で1.5(95%信頼区間1.0-2.0)、通常治療群で0.2(-0.3から0.8)だった。

偽薬を飲まないグループよりも、偽薬を飲んだグループのほうが平均して痛みが和らぐ効果が強くなりました

0から10までの痛みの指標は、偽薬を飲まないグループでは平均0.2だけ改善しましたが、偽薬を飲んだグループでは平均1.5の改善がありました

さらに、腰痛による機能障害についても、偽薬を飲んだグループのほうが改善が見られました

偽薬を飲まないグループのうち31人が、あとで偽薬を3週間飲みました。

その結果、偽薬を飲んだあとでは痛みと機能障害の改善が見られました

 

偽薬とわかって飲んでも腰痛に対してプラセボ効果と思われる効果があったという報告でした。

普通、プラセボ効果は「効く薬かもしれない」と信じることで生まれると考えられるため、プラセボ効果を狙うとすれば患者に事実を隠して偽薬を飲ませることになり、そのような治療法は倫理的に問題になる可能性があります。ところが偽薬を偽薬と知って飲んでもプラセボ効果が得られるとすれば、偽薬が治療のひとつとみなせるかもしれません。

ただし、この研究では偽薬を飲む前に「プラセボ効果があるかもしれない」という説明がなされています。この説明があるかないかで結果が変わる可能性も考えられます。

一口にプラセボ効果と言ってもさまざまな場合があります。たとえば膝の痛みに対して飲み薬の偽薬よりも偽薬の関節内注射のほうが効果が強かったとする報告があります。

長引く腰痛は、痛み止めの薬を使ってもなかなか治らない場合があります。「気休め」のような方法でも中には意外な効果を現すものがあるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial.

Pain. 2016 Dec.

[PMID: 27755279]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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