1. 補聴器の主な種類と選び方
補聴器の種類は主に3つに分けられます。「耳あな型」、「耳かけ型」、「ポケット型」の3つです。現在は、ポケット型に比べてコンパクトな耳あな型もしくは耳かけ型が主流です。
補聴器は人の目に触れるものなので、見た目の印象が気になる人は多いかと思います。もちろん自分の価値観にあった見た目の機種を選ぶのも一つの基準ではありますが、補聴器の本来の目的は、自分の聞こえにあった十分な大きさの音を出せることです。その他に、補聴器の不快な音を感じないこと、補聴器の操作がきちんとできることもポイントです。また、最近では後で述べるように、より快適に使うためのさまざまな機能がついており、一般的に機能が多いほど値段が高くなります。ただし、機能が多すぎても使いこなせないこともありますので、自分に必要な機能と価格のバランスも考慮して選んでください。
ちなみに、難聴の程度によっては補聴器購入費の補助金を受けることができます。ただし、購入前に「聴覚障害の身体障害者手帳」を受け取り各種書類を準備する必要があることと、「補聴器購入費診断書・意見書」という書類に記載されたタイプの補聴器でのみ補助金給付を受けられることに、注意が必要です。お医者さんに書類を依頼する前に、補聴器の希望などを相談してみると良いです。詳しくはこちらのコラムで説明しているので、参考にして準備してみてください。
それでは、それぞれの補聴器の型の特徴と利点・欠点について詳しく説明します。
耳あな型
耳の穴に収まる耳栓の形をした補聴器で、3つの型のうち最もコンパクトなタイプです。耳の穴に収まって外から全く見えないものから、外に見える大型のものまでさまざまです。ほとんどの場合、耳栓の部分は耳の穴の形状に合わせてオーダーメイドで作ります。小さくて電池交換やボリューム調整などの操作がしにくいため、細かな作業が苦手な人にはあまりお勧めできません。
また、構造上あまり大きな音を出すことができないため、難聴が重度の人には適さないことが多く、主に軽度難聴から一部の重度難聴までの人が対象です。(難聴の程度についてはこちらを参照)。重度難聴の人では、お医者さんが使用可能と判断した場合に耳あな型を使うことができます。この場合は耳の穴を大きく覆うタイプの耳あな型が選ばれることが多いです。
耳あな型の補聴器には次のような利点と欠点があります。これらを踏まえて自分に適した補聴器を探してみてください。
<利点>
- 小さいので目立ちにくい
- 横方向からの音がよく聞こえる
- 耳の外に出ている部分が少ないので引っかかりにくく、運動に適する
- メガネやマスクがかけやすい
<欠点>
- 大きな音を出しにくい
- 本体が小さいので操作がしにくい・なくしやすい
- 他の2つの型に比べてハウリングを起こしやすい
ハウリングとは補聴器が自分の出した音を拾って、さらに大きくしようとするときに起こる現象で、ワンワンとうるさい音がします。耳あな式は音を拾うマイクロホンの部分と、音を出すイヤホンの位置が近いため、音が大きくなるとハウリングが起こりやすい構造です。しかし、最近の新しい補聴器にはハウリング抑制機能がついていて、以前よりハウリングを起こさずに大きい音が出せるようになってきました。また、耳栓がどんどん小さく改良されてイヤホン部分を鼓膜の近くに置くことができるようになったため、大きな音を出さなくても聞こえやすくなっています。
耳かけ型
補聴器の本体を耳の後ろにかけて、イヤホンを耳栓として入れるタイプです。耳かけ型は目立つという印象があるかもしれませんが、最近では本体がとても小さいタイプもあり目立ちにくくなっています。大きな音を出すことができるタイプもあり、軽度難聴から重度難聴の人まで幅広く対応しています。
耳かけ型の利点と欠点は次のとおりです。
<利点>
- 大きな音を出すことができる
- 操作が簡単
<欠点>
- 髪の毛が短いとやや目立つ
- 汗に弱い(最近は耐水の機種もある)
- メガネやマスクの邪魔になる(かけることは可能)
耳かけ型は耳あな型よりも音を大きくする機能に優れていて重度難聴の人まで使え、同じく重度難聴まで使用できるポケット型よりも小さく目立ちにくいことが特徴です。
ポケット型(箱型)
マイクロホンがついた箱の本体をポケットに入れて音を拾うタイプです。本体の箱にコードとイヤホンを繋いで使用します。軽度から重度難聴まで幅広い聴力レベルの人が使用できます。
ポケット型の利点と欠点は次のとおりです。
<利点>
- 操作が簡単
- 価格が安い
- イヤホンの性能が良い
- 本体をマイクにして使うことで聞き取りがしやすい
<欠点>
- コードがあるので生活に不便
- コードが着ているものとこすれて音が入ることがある
- 大きくて目立つ
装着していることがわかりやすい一方で、操作が簡単なため細かな操作が苦手な高齢者や手の不自由な人でも使いやすいタイプです。話している人に本体を近づけてマイクのように使うことで、言葉の聴きわけがあまりできない人でも聞き取りやすくなります。
3つの型の違いのまとめ
それぞれに利点と欠点があり迷うところかと思いますが、3つの違いのポイントをまとめると次のようになります。
- 重度難聴の人にも使える大きな音を出せるのは、「耳かけ型」と「ポケット型」
- 最も操作が簡単なのは「ポケット型」
- 最も目立たず、邪魔になりにくいのは「耳あな型」
- 比較的小さくて、音を大きくする機能と操作性を合わせ持つのが「耳かけ型」
上のポイントと自分の状況を合わせて、医療機関や補聴器販売店でよく相談して決めてください。
補聴器の型が決まったら、次に補聴器に必要な機能について検討することになります。最近ではさまざまな機能が開発されていますので、代表的なものに絞って次に詳しく説明します。
2. 補聴器のさまざまな機能:雑音・ハウリングの抑制など
補聴器の最も重要な機能は音を大きくして聞こえやすくすることですが、それに伴って雑音が気になったり、ハウリングで音が響いたり、耳が塞がる感覚(耳閉感)がしたりすることがあります。これらの不快な現象を抑える機能がいろいろと開発されているので、一部紹介します。
なお、補聴器によって搭載している機能が異なり、多機能なほど高価格な傾向があります。はじめからたくさんの機能がついたものを購入すると、使いこなすことが難しい場合もありますし、自分には不要な機能が備わっている可能性もあります。高いものが必ずしも自分に適しているというわけではないので、試聴したうえで不快と感じた部分についてよく相談し、機能を吟味してみてください。
雑音を抑制する:ノイズリダクション
聞きたい言葉だけでなくまわりの雑音まで大きく聞こえてしまい気になる、という状況は多くの人が経験します。ノイズリダクション機能は入力された音を分析して、雑音と認識された成分が大きく聞こえないようにしてくれます。
ハウリングを抑制する:ハウリングキャンセラー
ハウリングとは、耳から漏れ出た補聴器のイヤホンから出る音を、マイクロホンが拾ってしまい、自分の音を繰り返し増幅してワンワン(もしくはピーピー)する音が出る現象です。対策として、物理的に耳から音漏れをしないような耳栓が作成されてきましたが、最近ではデジタル信号処理でハウリングを抑制する機能が開発されています。
特定方向の音のみを聞こえるようにする:指向性処理
会話でよく聞きたい声は前方から届くものが多いことを利用して、後方からの雑音をデジタル処理で減らす機能です。正面の相手の話のみを大きく聞こえるようにしてくれます。
衝撃や風などの雑音の低減する:衝撃音抑制機能、風雑音抑制機能
イヤホンから出る音自体が大きくなくても、食器のぶつかる音、モノが割れる音、モノを叩く音、子どもや赤ちゃんの泣き声など、想定していない音を不快に感じることがあります。こうした雑音をデジタル処理で抑制して不快感を和らげてくれます。
耳栓による耳閉感を改善する:オープンフィッティング
補聴器が耳の穴を塞ぐことで、耳閉感が強く起こることがあります。特に軽度難聴の人で起こりやすいことがわかっています。耳栓部分に穴を空けたり、耳の穴との隙間を作ったりしてこの違和感を減らす方法をオープンフィッティングといいます。この機能で耳閉感は改善しますが、音漏れが起きてしまうため、中等度以上の難聴ではハウリングが起こりやすく、ハウリングキャンセラーの併用が多くの場合で必要になります。
3. まとめ
ここまで補聴器の種類と選び方、補聴器に搭載されているさまざまな機能について説明しました。選ぶ際にチェックしたい大事なポイントをおさらいします。
- 聞こえの改善に十分な大きさの音が出せる
- 装着時に不快な音を感じない
- 操作が自分でできる
- 自分に必要な機能がついていて、使いこなせる
- 見た目や価格が自分の考えに合っている
繰り返しになりますが、このなかで補聴器選びで最も重要なのは、聞こえの悪さを十分に改善させることです。そのうえで不快感を感じないものや、見た目や価格などを考慮して選んでみてください。
自分の聴力を最大限に活かせるように、ぜひ新しい補聴器との生活に取り組んでもらえたら幸いです。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。