2016.01.25 | ニュース

インフルエンザでオセルタミビル(商品名タミフル)を飲んでも神経症状は増えないのか?

インフルエンザ患者の症状を分析

from International journal of adolescent medicine and health

インフルエンザでオセルタミビル(商品名タミフル)を飲んでも神経症状は増えないのか?の写真

インフルエンザの代表的な治療薬であるオセルタミビル(商品名タミフル)によって、精神神経症状が起こるのではないかという意見があり、現時点でも議論が続いています。この点を調べた2009年の論文を紹介します。

◆オセルタミビル使用後の精神神経症状

この研究よりも前に、日本でオセルタミビルを飲んだあとに異常行動を起こした未成年の患者の例が報告されていました。インフルエンザの症状としても精神神経症状が現れることがあるため、因果関係は特定されませんでしたが、オセルタミビルの影響がまったくないという根拠も見つかりませんでした。

 

◆過去のインフルエンザ患者の症状を分析

インフルエンザの診断を受けた、アメリカの1歳から21歳の患者を対象に分析しました。

インフルエンザの治療にオセルタミビルを使った場合と、使わなかった場合における精神神経症状が起こる頻度を比較しました。

 

◆オセルタミビルで精神神経症状の頻度は増えなかった

調査の結果、以下のようなデータが得られました。

インフルエンザの診断を受けた後の全体で精神神経症状の診断を受ける確率は.3.5%、治療を受けたグループでは3.0%、治療を受けなかったグループでは3.8%だった(p<0.05)。

つまり、今回調査対象とした集団においては、インフルエンザに対するオセルタミビル治療によって精神神経症状のリスクが増加するという証拠はありませんでした。

 

今回の研究では、オセルタミビル治療を受けなかった対象者にも精神神経症状が見られ、インフルエンザによる症状が精神神経症状を引き起こしている可能性が考えられます。このような分析結果からも、オセルタミビルは現在でもインフルエンザの治療薬として使用されています。

ただし、精神神経症状との関係が完全に否定されてもいないことから、タミフルの添付文書には次の記載があります。

10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。

また、この研究よりあとにも同様の研究は多数行われ、中には精神神経症状との関連性を指摘したものもあります。まだ研究者の間でも意見が一致していない点であり、今後の研究に課題は残されています。

執筆者

鈴木あいか

参考文献

The association between oseltamivir use and adverse neuropsychiatric outcomes among TRICARE beneficiaries, ages 1 through 21 years diagnosed with influenza.

Int. J. Adolesc. Med. Health., 2009 Jan-Mar.

[PMID: 19526698]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る