◆蚊は二股の道のどちらを選ぶか
この研究には、一卵性双生児の姉妹と、二卵性双生児の姉妹が参加しました。
研究班は、「Yチューブ」というY字型に分岐した管を使って、デング熱などを媒介するネッタイシマカが管の端から、二股に分かれた管のどちらに進むかを観察しました。それぞれの管の先に、実験に参加した双子の姉妹が手を差し込んで、匂いが管の中に入るようにしました。
一卵性双生児と二卵性双生児はともに年齢や生活環境などの背景がよく似ていると考えられますが、遺伝的要因については、一卵性双生児がほぼ同じであることに比べて、二卵性双生児では違いがあります。もし遺伝的要因が蚊を惹きつける程度に影響するなら、一卵性双生児の間ではあまり差がなく、二卵性双生児の間では比較的差が大きいと予想されます。
◆二卵性双生児ではばらつきがある
実験から次の結果が得られました。
[...]飛行活動性の絶対差については、分散が一卵性双生児での5.39よりも二卵性双生児で15.91と大幅に大きい分散があり、これらは有意に異なっていた(P=0.03)。
蚊が飛ぶ活動性について、一卵性双生児の間よりも二卵性双生児の間で、結果がばらつく傾向が見られました。
研究班は「この結果は、人間の匂いの構成要素のうちに潜在する遺伝的成分、すなわち蚊が我々の匂いを通じて探知可能な、また宿主選択に利用する遺伝的差異を示している」と結論しています。
蚊が媒介する感染症は、日本でも最近デング熱が話題になったように、今でも世界で多くの感染者を出す大きな問題となっています。蚊の行動を動かす要素が解明されれば、感染症対策の役に立つかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。