2015.06.06 | ニュース

子宮脱のメッシュ手術、副作用も

ニューヨーク州3万人の調査から

from BMJ (Clinical research ed.)

子宮脱のメッシュ手術、副作用もの写真

子宮脱など、臓器が体の外に押し出されてしまう骨盤臓器脱は、重症だと手術が必要になります。人工素材のメッシュを骨盤の中に入れる手術もそのひとつです。子宮を取らなくてよいなどの良い面がありますが、良くない結果(合併症)も指摘されています。アメリカのコーネル大学の研究班が、手術を受けた人の記録を統計解析し、メッシュ手術では再治療が必要になる場合や尿閉(尿が出なくなること)が多かったことを報告しました。

◆ニューヨーク州の記録から

研究班は、ニューヨーク州の手術情報データベースを使って、「ニューヨーク州で2008年から2011年の間に骨盤臓器脱の修復術を受けた女性」を対象に、手術後の経過を調べました。

 

◆再治療と尿閉が増えた

統計解析から次の結果が得られました。

 合計27,991人の患者のうち、7,338人がメッシュありの手術を、20,653人がメッシュなしの手術を受けた。

傾向スコアをマッチングすると、メッシュ群では1年以内の再介入が3.3%と、メッシュなし群の2.2%に比べて多く(ハザード比1.47、95%信頼区間1.21-1.79)、90日以内の尿閉はメッシュ群7.5%に対してメッシュなし群5.6%(リスク比1.33、95%信頼区間1.18-1.51)とメッシュ群が多かった。

約3万人の対象者のうち、メッシュを使う手術を受けた人では1年以内に再治療が行われた割合が3.3%、90日以内に尿閉が起こった割合が7.5%と、いずれもメッシュを使わない手術を受けた人よりも多くなっていました

 

アメリカ食品医薬品局(FDA)はメッシュ手術について「骨盤臓器脱に対する経腟修復のためのメッシュ手術に関連した深刻な合併症はまれではない」、また「骨盤臓器脱のメッシュによる経腟修復が伝統的なメッシュ以外の修復法よりも有効かどうかは明らかでない」という見解を示しています。

http://www.fda.gov/MedicalDevices/ProductsandMedicalProcedures/ImplantsandProsthetics/UroGynSurgicalMesh/ucm345201.htm

メッシュを使う手術は日本でも行われています。骨盤臓器脱の治療を検討されている方には、治療法の狙いと効果、合併症のリスクなどについて、医師とよく相談されることをお勧めします。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Use and risks of surgical mesh for pelvic organ prolapse surgery in women in New York state: population based cohort study.

BMJ. 2015 June 2

[PMID: 26037077 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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