炭酸水素ナトリウム製剤の解説
炭酸水素ナトリウム製剤の効果と作用機序
- 炭酸水素ナトリウムを主成分とする製剤で、
アシドーシス の改善、胃酸の中和(健胃)、下剤として使用するなど剤形(剤型)の違いなどによって色々な用途で使われる薬- 炭酸水素ナトリウム(重曹)は体内で重炭酸イオンを放出する
- 重炭酸イオンは酸を中和する作用をあらわす
- 炭酸水素ナトリウムは二酸化炭素(炭酸ガス)を発生することで発泡・膨張作用をあらわす
- 炭酸水素ナトリウムの坐剤は主に下剤(便秘改善薬)として使われる
- 炭酸水素ナトリウムは
消化管 検査時の造影 補助剤(発泡剤)の成分としても使われている - めまいなどの改善に使われることもある(主に注射剤)
- 含嗽(うがい)・吸入などの
外用薬 の成分としても使われることがある(主に散剤)
炭酸水素ナトリウム製剤の薬理作用
炭酸水素ナトリウム(重曹)は化学式NaHCO3であらわされる化合物で、体内でNa+とHCO3-に解離する。HCO3-は重炭酸イオンと呼ばれ、酸を中和し体液をアルカリ性に傾ける働きを示す。
健常状態においてヒトの血液は酸塩基平衡といって肺や腎臓の働きによる血中のH+(水素イオン)を体外へ排出する仕組みによって弱アルカリ性(pH7.35-7.45)に保たれているが、肺や腎臓の機能になんらかの異常をきたした場合やインスリンの不足による高血糖の持続状態などでは、アシドーシスといって血液を酸性にしようとする病態が引き起こされる。
本剤(炭酸水素ナトリウムを主成分とする製剤)は体内に重炭酸イオンを補充することで、CKD(慢性腎臓病)などの腎機能障害による代謝性アシドーシスや糖尿病によるケトアシドーシスなどの改善が期待できる。また胃内において胃酸を中和する制酸成分(健胃成分)として胃炎などの治療に使われたり、尿のpHをアルカリ性にし尿酸の排泄を促進させることで尿路結石を予防する効果も期待できる。
なお、炭酸水素ナトリウムは日常生活においてふくらし粉やベーキングパウダーの成分としても活用されているが、これは炭酸水素ナトリウムの発泡・膨張作用を利用したものである。炭酸水素ナトリウムの坐剤は主にこの作用を利用したもので、直腸内で融解し二酸化炭素(炭酸ガス)を徐々に発生することで直腸に刺激を与えたり直腸を拡張することで排便刺激作用をあらわしたり、直腸粘膜に対する拡張刺激がS字結腸に伝達され、大腸の蠕動運動を誘発し排便を促すため、炭酸水素ナトリウムの坐剤(新レシカルボン坐剤)は下剤として使われている。
また炭酸水素ナトリウムを内服した場合、胃内で炭酸ガスを発生させるが、このガスが胃や十二指腸内壁を伸ばし、バリウム造影剤が胃や十二指腸の粘膜へ均一に付着させる効果が期待できるため、造影用の発泡剤の成分としても有用となる。
そのほか、耳石に対する加速刺激感受性を低下させたり内耳血管を拡張する作用により動揺病などに伴う吐き気やめまいなどの改善に使用する、外用薬として含嗽・吸入することで上気道炎の補助療法(粘液溶解)に使用する、耳垢液(耳垢をふやかし取り除くための薬液)の成分として使用するなどその用途は多岐に渡り、それぞれの用途に合わせて適切な製剤が選択される。
炭酸水素ナトリウム製剤の主な副作用や注意点
- 消化器症状
- 下痢、
腹部膨満 などがあらわれる場合がある
- 下痢、
代謝 異常- 頻度は稀とされるが、
アルカローシス や浮腫 などがあらわれる場合がある
- 頻度は稀とされるが、
炭酸水素ナトリウム製剤の一般的な商品とその特徴
炭酸水素ナトリウム,重曹,重曹錠
- 炭酸水素ナトリウムの散剤や錠剤
内服薬 としての用途:アシドーシス の改善、尿酸排泄促進、胃酸を中和する制酸剤などで使われる外用薬 としての用途:粘液溶解のための含嗽(うがい)・吸入薬、耳垢液などの成分として使われる
メイロン
- 炭酸水素ナトリウムの注射剤
高血糖 などによるアシドーシス の改善、薬物中毒の際の排出促進、メニエール病などによる吐き気・嘔吐やめまいの改善などに使用する
新レシカルボン
- 剤形は坐剤(
坐薬 )- 肛門内へ挿入して使用する
- 腸内で炭酸ガスを発生し、蠕動(ぜんどう)運動を亢進させることで排便を促す
- 一般的に安全性が高いとされる一方、頻度は非常に稀とされるが
ショック 症状が引き起こされる可能性があり注意が必要
ビットサン
- 炭酸水素ナトリウムにゲンチアナ末(苦味健胃成分)とジアスターゼ(消化
酵素 )を配合した製剤- 食欲不振、胃部不快感、胃もたれなどの改善に使われる