たのうほうせいらんそうしょうこうぐん
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
卵巣内部に球状の空間(のう胞)が複数生じる病気。月経異常や不妊などの原因になる
7人の医師がチェック 68回の改訂 最終更新: 2022.11.11

Beta 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のQ&A

    多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療について教えてください

    多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中に卵胞を多数認める病気で、月経異常や不妊などが起こります。

    多嚢胞性卵巣症候群の治療は、肥満(BMI≧25)がある場合は症状の改善と排卵率を改善するために、まず減量を行います。(肥満がある場合、体重の5%程度減量するだけで、排卵率の改善を認めます)その後、妊娠の希望があるかないかで治療の方針を選択します。

    【妊娠を希望している場合】
    ◎薬物療法(排卵誘発法)

    • クロミフェン療法(第1選択):エストロゲンが少ないと勘違いさせることで、脳の本来の指令によってホルモンバランスが改善します ※クロミフェン療法が無効の場合、糖尿病治療薬のメトホルミンを加えると多嚢胞性卵巣症候群の原因であるインスリン抵抗性(インスリンに反応しにくい状態)が改善し排卵が起こります

    • ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法):hMGとhCGという物質により月経のホルモンバランスの変化を再現することで排卵を誘発します

    • ART治療:ゴナドトロピン療法で卵胞の発育をコントロールできない場合にはART療法を行い、重症化しやすい遅発性卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症を防ぐことができます

    ◎手術療法

    • 腹腔鏡下卵巣多孔術:多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣を取り囲む白膜が厚くなり、排卵しずらい状態であるため、腹腔鏡下で直接卵巣の白膜に穴をあけることで排卵しやすくします

    【妊娠を希望していない場合】
    ◎ホルモン療法

    • ゲスターゲンの投与:第1度無月経にはゲスターゲンという黄体ホルモンを投与することで月経のホルモンバランスを再現し、生理の出血を引き起こします。第2度無月経にはカウフマン療法という、エストロゲンとプロゲステロンを両方投与する方法を用います。

    その他、多毛症、ニキビに対して低用量経口避妊薬を用います。

    腹腔鏡下卵巣多孔術を行う場合は、腹腔鏡下手術が行うことができる専門施設に、また、ゴナドトロピン療法とART治療を行う場合も、専門的な治療が必要になるため、多嚢胞性卵巣症候群の治療に詳しい不妊治療専門施設に紹介していただくことが良いかと思います。

    PCOSはメタボリックシンドロームのハイリスク群と言われています。治療が終わっても肥満に対しての生活習慣の改善と栄養指導は3か月から6か月ごとに行い、適正な体重を維持につとめることが再発予防につながるため大切になります。