しきゅうきんしゅ
子宮筋腫
子宮の壁の筋肉の層にできた良性腫瘍。健診や過多月経の精査などで見つかることが多い
15人の医師がチェック 173回の改訂 最終更新: 2022.04.20

Beta 子宮筋腫のQ&A

    子宮筋腫の原因について教えて下さい。

    子宮の筋肉である平滑筋に由来する良性腫瘍です。根本的な原因は不明ですが、卵巣などから分泌されるエストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンが発生・発育に関わっているとされ、妊娠中に増大する、閉経後に縮小すると言われるのはこのためです。。

    子宮筋腫は遺伝しますか?

    子宮筋腫には複数の遺伝子異常が関わっており、遺伝性があることが認められています。自分の両親及び子供に子宮筋腫の方がいた場合、その発生頻度は約2.5倍になるとされています

    子宮筋腫の種類について教えて下さい。

    子宮筋腫は発生する場所によって4つに分類されます。子宮の一番外側(内臓側)にできる漿膜下筋腫、子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫、子宮内膜のすぐ下にできる粘膜下筋腫、子宮頚部にできる頚部筋腫です。漿膜下筋腫は大きくなることで腹部膨満感や、子宮との付着部が捻れて痛みの原因になることもあります(捻転)。一方粘膜下筋腫は子宮内膜に近いため、生理の量が多い(過多月経)、生理でないときに出血する(不正出血)など生理に関係した症状を引き起こします。筋層内筋腫は腹部膨満感、生理に関する症状の双方の原因となります。頚部筋腫は子宮口を圧迫するため、生理が来なくなったり、内部に月経血が溜まることで腹痛の原因になったり、出産時に邪魔になったりすることがあります。

    子宮筋腫は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    子宮筋腫は非常によくみられる病気です。生殖可能年齢である女性の約25%,顕微鏡で見つかるものまで含めれば80%の割合で認めると報告されています。

    子宮筋腫は、良性の腫瘍ですか?

    子宮筋腫は良性の腫瘍であり、サイズが非常に大きくなったり、筋腫の内部が浮腫んだり出血すること(変性)はありますが悪性化することはありません。ただし子宮筋腫とよく似た腫瘍に子宮肉腫があり、こちらは悪性腫瘍です。子宮筋腫と子宮肉腫は症状や採血、画像検査では区別が難しいこともあり、術前に子宮筋腫と考えられていたとしても、摘出後の検査で子宮肉腫と判明するケースもしばしば認めます。

    子宮筋腫は、どんな症状で発症するのですか?

    サイズが小さな頃にはほとんど症状を呈さず、検診で指摘されたり、大きくなってから腹部膨満感で気づかれる方が多いです。その他生理の量が多い(過多月経)、重い(月経困難症)、生理でないときに出血する(不正出血)など生理に関係した症状も多く認めます。不妊治療中に指摘される場合も多くなっていますが、必ずしも子宮筋腫が直接不妊の原因となっているとは限らないため注意が必要です。

    子宮筋腫が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    子宮筋腫がとても大きくなるとお腹や骨盤の血管を圧迫することで足のむくみの原因となり、血流が悪くなることで足に血栓を生じることがあり、この血栓が肺の血管に飛ぶと命に関わることがあります。(肺塞栓症)また、生理の出血が多くなることで重度の貧血となり、ふらつき、動悸、失神などを引き起こすこともあります。

    子宮筋腫は、どのように診断するのですか?

    大きなものは腹部の触診や内診でわかります。経腟的な超音波検査では小さなものも描出可能です。MRIの検査では子宮筋腫の詳しい位置や、変性しているかどうか、子宮肉腫の可能性はないかなどについて調べることができます。子宮粘膜下筋腫の場合は、子宮の中を直接カメラで覗いたり(子宮鏡)、子宮の中に生理食塩水を注入することで子宮の中に突出する粘膜下筋腫を見やすくする方法もあります。

    子宮筋腫の治療法について教えて下さい。

    子宮筋腫の治療法には一般的に手術加療、薬物療法、経過観察の3つがあります。根治的な治療は手術加療のみであり、症状がないか軽い場合、閉経が近く今後自然に寛解が見込める場合は一時しのぎの方法として薬物療法、経過観察が選択されることもあります。手術加療には筋腫のみを摘出する筋腫核出術、子宮ごと摘出する子宮全摘術があり、それぞれ開腹手術と腹腔鏡手術で行うことができます。粘膜下筋腫のみ、膣からカメラや手術器具を挿入し筋腫を摘出する子宮鏡手術を行うこともあります。それぞれの適応については筋腫のサイズ、個数、位置などで決定します。薬物療法には主にGnRHアナログと呼ばれる体を閉経状態にする薬剤を用います。子宮内膜の肥厚を抑える薬剤を放出する器具を子宮内腔に挿入する方法も出てきていますが、まだ一般的ではありません。

    子宮筋腫の手術の方法(術式)はどのように決まるのですか?

    子宮温存希望の有無、筋腫のサイズ、個数、位置などで決まります。子宮温存希望がない場合は、子宮全摘術が一般的です。筋腫核出術では肉眼的にわからない病変は取りきれず、再発の可能性があります。子宮温存希望がある場合は筋腫核出術を行いますが、個数(あまりにも多い)や位置(頚部筋腫)によっては困難な場合もあります。開腹か、腹腔鏡かについても同様、あまりに個数が多い場合やサイズが大きな場合は出血量が多くなりすぎる、核出しても体外への搬出が難しいなどの理由から腹腔鏡手術が困難な場合があります。

    子宮筋腫は、不妊症、不育症と関係がありますか?

    不妊症・不育症と最も関係があるのは子宮筋腫の発生する場所です。子宮粘膜下筋腫のある人はない人と比べ有意に妊娠率が低く、自然流産を多く起こします。また筋腫を取り除くことで有意に妊娠率が上がると言われています。一方筋層内筋腫は、ある人はない人と比べ妊娠率が低いとの報告がありますが、その切除により妊娠率を有意に向上させたとの報告はほぼなく不妊症や不育症への影響は確たるものとは言えません。漿膜下筋腫は一般的には不妊症・不育症への影響はないとされています。

    子宮筋腫は妊娠中にどのような影響がありますか?

    子宮筋腫は妊娠中に増大し、時に変性することで疼痛を伴います。変性痛のほとんどは鎮痛剤でコントロールできます。子宮筋腫の部位によっては分娩進行の妨げになる可能性があります(特に頚部筋腫)。また子宮筋腫によって早産や骨盤位などの胎位異常、分娩時の大量出血のリスクが上昇するという報告もありますが、子宮筋腫の核出自体によるデメリットもあるため、妊娠前に必ずしも筋腫核出を行うべきであるとは限りません。核出が必要かどうか、担当医と十分に面談を行ってください。

    子宮筋腫核出後妊娠では帝王切開が必要になりますか?

    核出した子宮筋腫の部位により帝王切開が必要となります。筋層内筋腫を核出した場合は妊娠時に子宮破裂のリスクが高くなるため一般的には帝王切開が推奨されます。漿膜下筋腫を核出した場合、粘膜下筋腫を子宮鏡で核出した場合は筋腫の大きさや具体的な位置、手術内容により帝王切開が必要となるかどうか異なるため、必ず術後担当医に尋ねるようにしましょう。