変形性膝関節症にヒアルロン酸の関節内注射は実際に効くのか?2万人のデータで検証
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変形性膝関節症は重症では人工膝関節全置換術が必要になりますが、軽症の段階での治療にもいくつかの選択があります。そのひとつに、関節軟骨に多く含まれる成分のヒアルロン酸を関節内に注射する方法があります。アメリカの研究班が、ヒアルロン酸関節内注射の効果を報告したこれまでの文献を検証した結果、偽薬の関節内注射に比べて痛みと機能を改善する効果が認められたと報告しました。
◆過去の研究を検証
研究班は、文献検索によって、ヒアルロン酸関節内注射(IA-HA)の効果を偽薬の関節内注射などほかの場合と比較した研究を集め、内容を検証しました。
◆痛み・機能に改善
見つかった14件の研究で、合計20,049人の対象者についての情報が得られ、そのうちIA-HAと偽薬の関節内注射の比較について次の結果が得られました。
10件の研究がIA-HAの効果を偽薬の関節内注射に対して試験していた。そのうち5件ではIA-HAが痛みを改善し、4件ではIA-HAが機能を改善したとされていた。痛みと機能について、IA-HAと
NSAIDs の効果に臨床上意義のある差は見られなかった。Jadadアルゴリズムを適用したのち、適合した2件の質が高いメタアナリシスが選ばれ、いずれもIA-HAが偽薬の関節内注射に比べて、痛みと機能に対して臨床的に意義のある改善をもたらしたことを示していた。
質が高いと見られた2件の研究を含め、複数の研究で、IA-HAに痛みまたは機能を改善する効果が認められていました。
研究班は「IA-HAは良好な安全性プロファイルを持ち、その使用は早期の変形性膝関節症の患者に対しては検討されるべきである」と結論しています。
ヒアルロン酸関節内注射にはある程度の効果があるのかもしれません。変形性膝関節症は非常に多くの人に起こり、有効な治療の探索は今後も期待されます。
なお、この治療は関節内注射によって効果を期待するものであり、健康食品として市販されているヒアルロン酸は関係ありません。国立健康・栄養研究所は「経口摂取によるヒトでの有効性については信頼できるデータは見当たらない」「経口摂取での安全性については信頼できる十分なデータが見当たらない」としています(http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail573lite.html)。
変形性膝関節症の手術以外の治療についてはほかにもいくつか紹介していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。
「変形性膝関節症にキネシオテーピング、膝の痛みが軽減 」
http://medley.life/news/item/5594b134abe97c3501f24fd3
「変形性膝関節症の新治療になるのか?幹細胞で膝関節の
http://medley.life/news/item/559402adabe97cfa00f25173
http://medley.life/news/item/55771519e77f61f500bd9edc
「変形性膝関節症に対する陸上の運動療法は長期的な効果あり」
執筆者
Is Local Viscosupplementation Injection Clinically Superior to Other Therapies in the Treatment of Osteoarthritis of the Knee: A Systematic Review of Overlapping Meta-analyses.
Arthroscopy. 2015 May 18 [Epub ahead of print]
[PMID: 25998016]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。