◆16万人以上を16年間に渡って観察
著者らのグループは、1995年から2010年のあいだ、下記の調査を行いました。
60歳以上の糖尿病を発症しておらず1年以上ビスホスホネート製剤を服用した35,998人と、年齢、性別、BMIや一般診療での条件が揃いかつビスホスホネート製剤を服用していない126,459人に関し調査を行った。[...]ビスホスホネート製剤の服用者群と非服用者群での発症割合を、調査結果とした。
つまり60歳以上でビスホスホネート製剤を飲んでいる人約3万6千人と、そうでない人約13万人で、新たに2型糖尿病を発症した人の割合を計算しています。
◆ビスホスホネート製剤の服用で、糖尿病発症率が半分に
著者らの観察の結果、以下の関連が見つかりました。
ビスホスホネート製剤服用者の方がマッチングした非服用者よりも2型糖尿病発症割合が低かった(補正した発症割合は0.52で、95%信頼区間は0.48 - 0.56)。[...] 治療期間の解析をおこなったところ、やや2型糖尿病発症リスクが増加した(投与1と2.5年の比較)。
ビスホスホネート製剤を服用すると、2型糖尿病の発症率が約半分になりました。ただし、長期間服用すると逆にやや発症率が上がるという傾向もありました。
著者らは、「この観察結果はビスホスホネート製剤の服用が、2型糖尿病の発症率を50%低下させることを示唆する」と結論づけています。もしビスホスホネート製剤に予防効果があるのだとすれば、そのしくみにも興味を引かれます。ビスホスホネート製剤の刺激で骨から糖代謝を調節する物質が分泌されるのか、ビスホスホネート製剤が脂肪や筋肉等で糖代謝を直接調節するのか、まだ知られていない体内の反応が働いていたのかもしれません。
ただしこの研究で見られた関連が本当にビスホスホネート製剤の効果と言えるかどうかはまだ明らかではありません。ビスホスホネート製剤を使う人と使わない人をランダムに振り分ける研究が行われればより確かになりそうです。
執筆者
Bisphosphonates and glucose homeostasis: a population-based, retrospective cohort study.
J Clin Endocrinol Metab. 2015 May
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。