2015.08.02 | ニュース

骨粗しょう症の薬で乳がんの生存率が改善、閉経後に有効

1万8千人のメタアナリシス

from Lancet (London, England)

骨粗しょう症の薬で乳がんの生存率が改善、閉経後に有効の写真

骨粗しょう症の治療に使われるビスホスホネート製剤は、骨の代謝に作用するほか、全身に影響があると考えられています。乳がんの治療に使った研究もあり、これまでの報告を検証した結果、乳がん手術後の閉経後の女性で死亡率を下げる効果が見られました。

◆早期乳がんの手術後

研究班は、文献検索で見つかった過去の研究を集め、早期乳がんの手術後にビスホスホネート製剤を使ったときの効果についてのデータを取得し、統合して統計解析を行いました。

 

◆乳がんによる死亡が減少

解析から次の結果が得られました。

18,766人の女性についてのデータが得られ(2年から5年のビスホスホネートの試験において18,206人、97%)、フォローアップの中央値は5.6人年であり、3,453人に最初の再発があり、2,106人の死亡があった。

閉経前の女性では、治療は結果に対して効果が見られなかったが、閉経後の女性11,767人の間では、治療により高度に有意な再発の減少(リスク比0.86、95%信頼区間0.78-0.94、2p=0.002)、遠隔再発の減少(0.82、0.74-0.92、2p=0.0003)、骨再発の減少(0.72、0.60-0.86、2p=0.0002)、乳がん死亡率の減少(0.82、0.73-0.93、2p=0.002) が見られた。

閉経前の女性では効果が見られませんでしたが、閉経後の女性では、ビスホスホネートを使ったとき、乳がんの再発が減少し、乳がんによる死亡率も減少する効果が見られました

 

ビスホスホネートの効果がもし確かなら、今後乳がんの治療に取り込まれることも考えられます。また、閉経後の女性では骨量の減少に対してビスホスホネートが使われることも多く、こうした場合に乳がんに対する影響があるかも気になります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Adjuvant bisphosphonate treatment in early breast cancer: meta-analyses of individual patient data from randomised trials.

Lancet. 2015 Jul 23 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26211824]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る