2型糖尿病の基礎知識
POINT 2型糖尿病とは
生活習慣病の一つで、遺伝的に糖尿病になりやすい人が肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発症します。ほとんどは成人が発病しますが、まれに子供にもみられます。症状は、口の乾き、多尿、体重減少、身体のだるさなどですが、無症状のことも多く、健診などで見つかることも少なくありません。自覚症状がほとんどないので生活への影響は少ないですが、高血糖が続くと合併症が起きます。主な合併症は、主に手足のしびれ(神経症)・失明(網膜症)・腎臓の機能低下(腎症)などです。腎臓の機能が低下すると透析治療が必要になり、その他でも心臓の病気(狭心症・心筋梗塞)や脳卒中の原因にもなります。糖尿病の治療は、食事療法、生活習慣の改善を中心にして必要に応じて内服薬やインスリン注射が用いられます。
2型糖尿病について
2型糖尿病の症状
2型糖尿病の検査・診断
2型糖尿病の治療法
- まず第一に生活習慣の改善が必要
- 運動療法
- ウォーキングなどの有酸素運動と筋肉トレーニングを行う
- 運動は1回に50分程度を週に3−4回程度を行う
血糖 値が変動することで体調が悪くなることがあるので、体調が悪くなったら休むようにする
- 食事療法
- 1日の中の運動量と身長・体重から適切なカロリー摂取量を決める(管理栄養士に相談することが望ましい)
- 血糖値を直接上昇させる炭水化物を減らしすぎてはいけない
- 炭水化物は1日のカロリー摂取量の50-60%にすると良いと言われている
- 嗜好習慣とその他の改善
- 禁煙:喫煙は糖尿病
発症 の危険性があると言われている - 飲酒:多量の飲酒を行わない(日本酒1合程度の定期量であれば構わない)
- 睡眠時間:規則正しい睡眠をとる
- 禁煙:喫煙は糖尿病
- 生活習慣の改善で対応できない場合は薬物療法を追加する
- 各々の薬は効き方が異なるため、病状にあった薬の使い方が必要
- 血糖コントロールが悪い場合は
インスリン 注射による治療を行うことも多い - 糖尿病を治療するだけではなく、
合併症 が出ないようにしていくことが重要- 合併症を予防するためにはHbA1c7.0%未満を目指すことが良いとされる
- 食事療法や運動療法は非常に重要であり、それらを行わないと薬物療法の効果も十分でないことが多い
2型糖尿病に関連する治療薬
GLP-1受容体作動薬
- 膵臓からのインスリン分泌を促し、分泌されたインスリンによって血糖値を下げる薬
- 糖尿病は血糖値が高い状態で、この状態が続くと様々な合併症がおこる
- インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、GLP-1などのインクレチンというホルモンの働きにより膵臓から分泌される
- 本剤はGLP-1と同じような作用により、血糖に応じて膵臓からインスリン分泌を促す
- 単剤(本剤の成分を単独で)投与した場合の低血糖はおこりにくいとされる
グリニド系薬(速効型インスリン分泌促進薬)
- 服用後にすばやくインスリンを分泌させ食後の高血糖を改善する薬
- 食事後の高血糖状態が続くと体に対し毒性を示すようになり糖尿病の合併症へつながる
- 血糖値を下げるホルモンとしてインスリンがあり膵臓から分泌される
- 本剤は服用後すばやく膵臓に作用し、インスリン分泌を促す作用をもつ
- 服用方法に関して
- 通常は食直前(一般的には食事を摂る前の10分以内)に服用する
スルホニルウレア系薬(SU剤)
- 膵臓の細胞に作用し、膵臓からのインスリン分泌を促し血糖値を下げる薬
- 糖尿病は血糖値が高い状態で、この状態が続くと様々な合併症がおこる
- インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、膵臓のβ細胞から分泌される
- 本剤は膵臓β細胞のスルホニルウレア受容体(SU受容体)に結合しインスリン分泌を促す
2型糖尿病の経過と病院探しのポイント
2型糖尿病が心配な方
2型糖尿病は普段の食生活や遺伝などの要素が重なって発症しますが、自覚症状としては喉の渇きや尿量の増加といったような症状がみられます。
上記のような症状に該当してご心配な方は糖尿病内科、もしくは一般内科のクリニックの受診をまずはお勧めします。糖尿病の傾向があるかどうかは簡単な検査で分かりますので、深くお悩みになる前に一度検査を受けた上で、医師に対応をご相談下さい。
2型糖尿病でお困りの方
慢性期の糖尿病の治療は特殊な設備を要するものではなく、内科のクリニックでも十分に行うことができます。その中でも担当が糖尿病専門医であれば、よりきめ細やかな治療や、合併症の早期発見が可能となります。
糖尿病では、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症と呼ばれる3つの合併症があります。神経障害では、手足のしびれや感覚の低下が生じます。網膜症では視力が徐々に低下し、そのまま放置すると失明につながります。腎症では腎臓の機能が徐々に低下して、自覚症状のないまま症状が進行し、放置すると血液透析といって、週3回3時間などで、日々医療機関で血液中の老廃物を抜く処置を受ける必要が生じます。
初めて糖尿病と診断されたタイミングでは、これらの合併症がないかの検査を行うため、または必要あればインスリンの自己注射方法を学ぶため、そして糖尿病についての理解を深めてその後の自宅での生活の工夫に役立てるためなどの目的で、数日から1週間など、短期の入院が必要となることがあります。この場合、糖尿病と診断されたのが地元のクリニックであったとしたら、入院先として地域で連携している医療機関を紹介してくれるはずです。
また、その後も定期的に眼科の診療を受けるために眼科のクリニックでかかりつけ医療機関を作ることになります。糖尿病の合併症による失明は、日本の成人失明原因の第1位であり、こまめな検診が必要です。また、もし血液透析が必要になった場合には、透析クリニック、透析病院と呼ばれるような、血液透析に力を入れている医療機関が全国各地にあります。そのようなところで通いやすい場所を見つけることが重要です。
長期的な通院が必要となりますので、何よりも主治医との相性や病院の通いやすさが重要です。信頼できて食事や運動など日常生活の悩みをしっかり相談できる主治医を見つけることはとても大切で、細かな薬の使い分けなどよりも影響が大きい部分かもしれません。
糖尿病の治療の中心は血糖値が上がらないように注意すること(運動療法、食事療法、薬物療法)ですが、それと同時に、上記の合併症が生じた場合に早期発見することも大切です。症状が出てからでは遅いので、1年に1回以上眼科を受診する、定期的に尿検査や血液検査を受ける、手足の感覚がにぶっていないかや足先に切り傷や水虫がないか(糖尿病の方では、これらの傷から菌が広がって悪化しやすいためです)を確かめる、といった点が大切になります。また、特に高齢者では血糖のコントロールが悪いと、認知症、肺炎や尿路感染症などの感染症、サルコペニア(全身の筋肉が減る)、うつ、骨粗鬆症・骨折といったさまざまな病気にもかかりやすくなることが知られています。主治医を作り定期的な検査を受けることと、それと同時に自身でも糖尿病についての理解を深め、食事の工夫を含めたセルフケアを行っていくことが、他の病気にも増して重要になるのが糖尿病です。