脳梗塞の基礎知識
POINT 脳梗塞とは
脳血管の一部が詰まり、その先に十分な血流がいかず脳細胞がダメージを受ける病気です。診断を確定するために、頭部MRI検査・頭部CT検査・心電図・心臓超音波検査などが行われます。主な治療には薬物治療とリハビリテーションがあります。また、再発を予防するために手術をすることもあります。脳梗塞を起こして一定の時間以内に適切な治療を受ければ、後遺症が残らない可能性が高まります。そのため、一刻も早く治療を受けることが重要な病気です。片方の手足が動かしづらい・片方の手足がしびれる・喋りづらい・突然片方の視野が暗くなるといった症状がある場合は必ず速やかに医療機関にかかってください。その際は脳神経内科・脳外科・救急科にかかることをおすすめします。
脳梗塞について
- 脳の血管の一部が詰まり、その先にある脳細胞に十分な血流が行かず、脳細胞がダメージをうけた状態
- 血流が通わないと脳の細胞は酸素やエネルギーが足りなくなり、
壊死 してしまう - 一度死んでしまった脳細胞が蘇ることはない
- 血流が通わないと脳の細胞は酸素やエネルギーが足りなくなり、
- 血管の詰まり方によって、脳梗塞は大きく3つのタイプに分類される
- 脳卒中は、高齢者が寝たきりになってしまう主な原因である
脳梗塞の症状
- ダメージを受けた脳の部分が、何の役割を担っていたかで症状は変わる
- 主な症状
- 片方の手足の動かしづらさ(
麻痺 ) - 片方の手足のしびれ(感覚障害)
- しゃべりづらさ(舌がもつれる、言葉がでてこない)
- ふらつき(歩きづらい、めまい)
- 自分の体を認識できない(例えば、手が車椅子の車輪に巻き込まれていても気づかない)
- 片側から呼びかけられても気づかない
- 片方の手足の動かしづらさ(
梗塞 を起こしている脳の部分が大きいと、意識障害 を起こす- 脳梗塞で
失神 が起きることはまれ
- 脳梗塞で
- 脳梗塞の前兆として一過性脳虚血発作がある
脳梗塞の検査・診断
脳梗塞の治療法
- 脳梗塞が起こってから、出来るだけ早くに治療を開始することが重要
- 基本は、薬による治療とリハビリテーション
- 脳梗塞を
発症 してから4.5時間以内であれば、t-PAという血栓 を溶かす薬(血栓溶解薬)の使用が可能な場合がある- 原因や状況によっては手術や
カテーテル治療 も検討される
- 原因や状況によっては手術や
- 急性期の薬物治療
抗血小板薬 、抗凝固薬 :血液を固まりにくくして、それ以上の悪化を予防する- 血栓溶解薬:血栓を溶かす
- その他:脳保護薬(エダラボン)を使用することもある
- リハビリテーション
- 一度死んでしまった脳細胞は蘇らないため、リハビリテーションによって生きている部分の脳で、失われた機能を補うことを目指す
- リハビリテーションはできる限り早くから開始することが望ましい
- 治療が安定した場合には、早期に
リハビリテーション病院 へ転院すべきこともある
- 再発を予防するための治療について、以下に記す
- カテーテル治療、手術
- CAS(頚動脈
ステント 留置術)- 足の付け根の血管からカテーテルを入れて、首の血管を広げる治療
- CEA(頚動脈内膜剥離術)
- 首の血管に溜まった
アテローム を取り除く治療
- 首の血管に溜まった
- バイパス手術
- 頭の表面の血管を脳の血管につないで、血流を増やす手術
- CAS(頚動脈
- 再発予防目的の薬物治療
脳梗塞に関連する治療薬
FXa阻害薬(抗凝固薬)
- 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
- 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
PDE阻害薬(抗血小板薬)
- 血液をサラサラにすることで血液が固まって血管がつまることを防ぎ、血栓の形成を予防する薬
- 体内で血小板凝集が起こると血液が固まりやすくなる
- 体内にホスホジエステラーゼ(PDE)という血小板凝集を進める酵素がある
- 本剤はPDEを阻害するなどの作用により血小板凝集を抑え血液の流れをよくする抗血小板薬の一つである
- 慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛、冷感などを改善する作用もある
- 嚥下障害の改善効果なども期待できるとされる
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)
- ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
- 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
- ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
- 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
- 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
脳梗塞の経過と病院探しのポイント
脳梗塞が心配な方
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまう病気です。突然手足に麻痺が出現して動かしづらくなった、舌が回らなくなったなどの症状があれば、すぐに救急車を呼びましょう。数時間から1日かけて徐々に症状が出現するのではなく、ある瞬間から急に変化が生じる、というのが脳梗塞の特徴の一つです。脳梗塞の対応ができるかどうかは病院によって異なることと、脳梗塞は他の病気にもまして特に一刻も早く治療を受けることが重要な病気であるため、医療機関選びは救急隊の判断に任せるのが結果的に最も治療の結果が良くなると考えられます。
病院によっては神経内科と脳神経外科(脳外科)が両方あることがあり、病院ごとにどちらの科が脳梗塞を診療しているかがおおむね決まっています。しかし、どちらの科を受診しても適切に案内してもらえますので、まずは受診の上で、もし迷ったら窓口でどちらの科を受診すべきか確認してみてください。
脳梗塞を主に診療する専門医は、脳神経外科専門医、神経内科専門医です。この専門医の中でも、脳梗塞を多く見ている医師もいれば、そうではなく脳腫瘍やパーキンソン病などの病気を中心に診療している医師もいます。しかしこれらの科の医師であれば、脳梗塞についても一定の経験があると考えられます。
なお脳梗塞は脳卒中の一種です。脳卒中センターのある病院は専門性が高く高度な医療を提供していることが多いです。SCU (stroke care unit) といって、脳卒中専門の病棟を設置している病院もあります。
従って、脳梗塞ではないかと心配になってご自身で受診するような場合には、MRIの検査を行える医療機関を受診することが勧められます。MRIの機械があっても、たとえば夜間は専門の放射線技師が不在の場合がありますので、機械さえ病院にあれば土日や夜間でも行える検査だというわけではない点に注意してください。
脳梗塞でお困りの方
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまう病気です。その治療は大きく3つに分かれます。t-PAと呼ばれる血管の詰まりを解消する注射薬、同じく脳の血管の詰まりを解消するためのカテーテル治療、そしてその他の点滴薬や内服薬です。
t-PAの治療は、脳梗塞を発症した瞬間から4.5時間以内でないと行うことができません。副作用に脳出血があり、それは時間が経てば経つほど可能性が高まるため、4.5時間を越えてt-PAの治療を行うことは逆効果です。4.5時間ぎりぎりだから良いということではなく、早ければ早いほど効果が高い治療です。t-PAの治療を行える医師は限られているため、神経内科専門医や脳神経外科専門医がいる医療機関の受診が勧められます。
カテーテルの治療は、足の血管に針を刺し、そこから脳まで細いワイヤーを通して行う治療です。詰まった血管を広げることができますが、これもt-PAと同じく行える医師が限られています。脳神経外科専門医がいる医療機関を受診する必要があります。
t-PA、カテーテル以外については、内科で一般的に行える点滴や内服による治療です。脳梗塞の大きさや発症からの時間によっては、そもそもt-PAやカテーテル治療が行えない場合も多く、そのような場合には点滴、内服薬での治療を行うこととなります。
脳梗塞を起こした場合、その後に血液をさらさらにする薬を飲み続ける場合があります。こちらについては、もし入院したのであればそちらの科の外来に退院後もかかり続けることもありますし、すでに高血圧や脂質異常症などでかかりつけの病院、クリニックがあるのであれば、そちらで薬をまとめて処方してもらうことも可能です。
脳梗塞については、内科のクリニックであれば、特に専門を限らずに定期的な通院での対応が可能な病気になります。
また、脳梗塞で後遺症が残ってしまった場合、長期間のリハビリテーションが必要となります。後遺症が大きく一人で日常生活を行うことができないような場合には、急性期病院から回復期病院(リハビリ病院、療養型病院)に転院して、リハビリに専念することになります。
急性期病院にも一般的にリハビリの施設はついていますが、回復期病院の方がリハビリに専念しやすい環境が整っています。一緒にリハビリを行うことになるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったスタッフです。患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を選ぶ上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、1日に受けられるリハビリの総時間、土日はどうかといった点は、回復期の病院を探す上でのポイントとなります。