せきずいせいきんいしゅくしょう
脊髄性筋萎縮症
脊髄にある身体の運動に関与する細胞が変性することで、徐々に筋肉が弱くなっていく病気
6人の医師がチェック 83回の改訂 最終更新: 2023.09.28

脊髄性筋萎縮症の基礎知識

POINT 脊髄性筋萎縮症とは

脊髄に存在する身体の運動に関与する細胞が変性し、徐々に筋力が低下していく病気です。成人期に発症するタイプと小児期に発症するタイプがありますが、小児期に発症する場合は常染色体劣性遺伝によることがほとんどです。 診断を確定するために血液検査・筋電図検査・遺伝子検査などを行います。進行を遅らせる効果がある薬がいくつか登場していますが、現在のところ根本的な治療は確立されていません。リハビリテーションを行い筋肉の衰えを遅らせることも重要です。子どもに、身体を動かすことが難しい・座ることが難しいといった症状が出た場合や、大人に手や舌がピクピクと震える・関節が固まるなどの症状が出た場合は、医療機関にかかってください。その際は脳神経内科にかかることをおすすめします。

脊髄性筋萎縮症について

  • 脊髄にある身体の運動に関与する細胞が変性することで、徐々に筋肉が弱くなっていく病気
  • 以下の4つのタイプに分類される
    • 小児期に発症するもの
      • I型:重症型(ウェルドニッヒ・ホフマン病)
      • II型:中間型(デュボビッツ病)
      • III型:軽症型(クーゲルベルグ・ウェランダー病)
    • 成人期に発症するもの
      • IV型
  • 小児期に発症するタイプは遺伝性であることが知られている
    • 常染色体劣性遺伝の形式であることがほとんど
  • 10万人あたりおよそ1-2人程度と考えられている
  • 小児慢性特定疾患に指定されており、申請を行えば症状の進行具合によって医療費の補助を受けることができる
  • 英語のSpinal Muscular Atrophyの略でSMAとも言う

脊髄性筋萎縮症の症状

  • 全身の筋力が落ちていく
  • タイプによって発症する時期が異なる
    • I型では、生まれてから半年までに発症することが多く、体を動かしたり座ることも難しい
      • 哺乳や呼吸が自力でできずサポートが必要
      • 誤嚥性肺炎を起こしやすい
    • II型では、座ることは可能であるが立つことは困難
      • 手や舌がピクピクと震える
      • 関節が固まったり側弯症が起こる
      • 誤嚥性肺炎を起こしやすい
    • III型は、もともとできていた歩行や立位が困難になっていく
    • IV型では手足の筋力が落ちていくが、日常生活を送れる場合も多い

脊髄性筋萎縮症の検査・診断

  • 主な検査
    • 血液検査:筋肉が破壊されると上昇するCK値などを測定する
    • 筋電図検査
    • 遺伝子検査
  • 成人発症では筋萎縮性側索硬化症ALS)との鑑別が重要である
  • 新生児マススクリーニング(赤ちゃんが生後数日に受ける血液検査)により、早期の診断・治療が可能である。現時点では、全員が受ける通常の新生児マススクリーニングの項目には含まれておらず、希望者のみの有料の検査である

脊髄性筋萎縮症の治療法

  • 根本的な治療は確立されておらず以下のようなサポートを行う - 母乳が飲めない場合は鼻から入れるチューブを用いて胃に栄養を送る - 呼吸が難しければ人工呼吸器による呼吸の補助を行う - 筋力低下を防ぐリハビリテーションを行う - 歩行を助ける器具を使用する
  • I型は多くの場合乳幼児の時期に死亡することが多い
  • 薬物療法
    • オナセムノゲンアベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)
      • 遺伝子の機能欠損を補う遺伝子補充療法
      • 条件(SMN1遺伝子の両アレル性の欠失または変異、2歳未満など)を満たした患者さんに適応がある
      • 病気の進行を抑え、余命延長の効果が期待される
    • ヌシネルセン(商品名:スピンラザ)
      • 遺伝子治療薬の一種
      • 4ヶ月ごとなど定期的に脊髄周囲に注射する
      • 症状が出ていなくても遺伝子検査で確認されていれば使用可能
    • リスジプラム(商品名:エブリスディ)
      • 経口薬(飲み薬)

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