やくざいせいきゅうせいしゅっけつせいちょうえん
薬剤性急性出血性腸炎
抗菌薬の使用後に発症することがある、腹痛・下痢・下血を生じる大腸の炎症
6人の医師がチェック 30回の改訂 最終更新: 2023.08.11

薬剤性急性出血性腸炎の基礎知識

POINT 薬剤性急性出血性腸炎とは

薬剤性急性出血性腸炎は抗菌薬の使用後に発症することがある大腸の炎症です。主な症状は突然の発熱・腹痛・下痢・下血などです。 症状や身体診察に加えて、血液検査・画像検査・内視鏡検査などを用いて診断されます。また感染の原因となっている細菌を調べるために、便の細菌培養検査やCDトキシン迅速検査が行われることもあります。治療は抗菌薬を中止することが基本になりますが、人によってはメトロニダゾールやバンコマイシンを用いた治療が必要になります。薬剤性急性出血性腸炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。

薬剤性急性出血性腸炎について

  • 抗菌薬の使用後に発症する突然の腹痛、下痢、下血を生じる大腸の炎症
    • ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が原因となりやすい
    • ペニシリンによるアレルギー反応や、腸管のダメージが原因と考えられているが詳細は不明である
  • 比較的健康な若年者に多くみられる
  • 偽膜性腸炎になると、メトロニダゾールあるいはバンコマイシンを用いた治療が必要になる

薬剤性急性出血性腸炎の症状

  • 抗菌薬内服から数日後に突然症状が起きる
  • 主な症状
    • 腹痛
    • 下痢
    • 下血(トマトケチャップのような血便や、血混じりの下痢など)
    • 発熱  など

薬剤性急性出血性腸炎の検査・診断

  • 薬の内服歴と経過から診断されることが多い
    • 場合によっては大腸内視鏡検査を行う

薬剤性急性出血性腸炎の治療法

  • 原因と考えられる薬を中止、変更する
    • 脱水症状が強い場合には点滴を行う
  • 通常は抗菌薬の使用を中止してから、約1週間程度で改善することが多い
    • 偽膜性腸炎の場合はメトロニダゾールあるいはバンコマイシンを用いた治療が必要になる

薬剤性急性出血性腸炎の経過と病院探しのポイント

薬剤性急性出血性腸炎が心配な方

薬剤性急性出血性腸炎では、発熱と下血、下痢、そして波のある腹痛が見られます。症状だけでは感染性腸炎など他の腸の病気と区別がつきづらいものですが、この病気は、抗生物質(ペニシリン系やセフェム系と呼ばれるもので多い)の内服から数日後に発症するのが特徴的です。もともと持病のない方(特に若い方)で下血が出ると、まず考えるのは痔や感染症で、感染症の中でも食中毒の類や、衛生状態のあまり良くない国で感染するようなものが主体になります。そのような心当たりもなく、また抗生物質を飲み始めた数日後に下血が出たとなると、この薬剤性急性出血性腸炎が疑われる病気の一つとなります。

ご自身がこの病気でないかと心配になった時、もしかかりつけの内科クリニックがあれば、まずはそこで相談してみることをお勧めします。特に普段かかっている病院がなければ、一般内科、あるいは消化器内科のクリニックであれば対応可能です。

薬剤性急性出血性腸炎の診断は問診と診察が中心です。特別な検査は行わずに仮の診断をつけて、治療を行います。治療とは言っても、使用していた抗生物質の内服を中断して、下痢への対応(脱水にならないよう水分摂取に気をつけるなど)を行うくらいです。

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薬剤性急性出血性腸炎でお困りの方

薬剤性急性出血性腸炎は入院が必要なほど重症化することはあまり多くありませんが、腸からの出血が止まらない、下痢が止まらずに脱水が強い、薬剤性急性出血性腸炎が疑われるが他の病気と区別がつかないといったような場合が入院になるケースです。入院の上で点滴で水分を補ったり、必要に応じて大腸内視鏡で診断をつけたりします。

現在の日本の医療体制では、「通院は近所のかかりつけ医、入院は地域の総合病院」といった分業と、医療機関同士の連携が重視されています。重症の患者さんが安心していつでも総合病院にかかれるように、総合病院でなくとも診療が行える病状の方は、できるだけ地域のクリニックを受診してもらうことで、住み分けを行うという形です。これには、地元に自分のかかりつけ医(主治医)を作ることで、その人の病状全体が把握できるというメリットもあり、必要あればその都度、病気ごとに専門の医師や医療機関と連携して診療を行います。薬剤性急性出血性腸炎は基本的にはクリニック通院で対応できる病気です。しかしもともと持病のある方や高齢の方を中心に入院が必要となることもありますので、その場合ははじめに受診したクリニックから診療情報提供書とともに入院先の病院を紹介してもらうことが良いでしょう。

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