はちししょう(はちさされ)
ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)
刺された箇所の異常だけでなく、刺されたことをきっかけに全身のアレルギー反応が起こることがある
11人の医師がチェック 177回の改訂 最終更新: 2023.07.28

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)の基礎知識

POINT ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)とは

ハチに刺されることです。多くはスズメバチによるもので、7-10月頃にかけてスズメバチは攻撃的になりやすいため特に注意が必要です。症状としては、刺された部位の痛みや腫れ、赤みが主であり、多くのケースでは数時間くらいで症状は改善してきます。しかし、刺されて数十分〜1時間以内くらいでハチ刺傷によるアレルギー反応が出てきて、広範囲に刺された部位の周囲が腫れてむくんだり、全身に蕁麻疹が出来る、息苦しくなる、めまいや吐き気がする、錯乱する、意識がぼんやりする、などの症状が出現することもありえます。ハチ刺傷の診断は、何らかの検査を行うわけではなく、病歴と皮膚の見た目などから行います。治療としては患部を挙上して冷却し、痛みや炎症を抑える塗り薬や飲み薬を使用することが一般的です。アレルギー反応が出現している場合にはアレルギーを抑える飲み薬や注射を行い、程度によっては入院しての治療が必要となります。ハチ刺傷が心配な方や治療したい方は救急科や皮膚科を受診してください。刺されてから上記に挙げたアレルギー反応の症状が強く見られる人は、救急車で速やかに病院を受診しましょう。逆に、局所の症状のみであり、痛みも大したことがない人は、必ずしも医療機関を受診する必要はありません。

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)について

  • ハチ刺され
    • ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチなどに刺される
    • 刺すのはメスのみである
    • ミツバチは比較的おとなしく、こちらから巣に近づいたり、袖から衣服の中に入ってしまったようなケースでなければあまり刺されない
    • スズメバチは攻撃的であり、7-10月ごろに特に攻撃的になる
    • 約8割のハチ刺傷はスズメバチによるものである
  • アレルギー反応
    • 刺された箇所の腫れや痛みだけでなく、刺された際のハチ毒が原因となって全身のアレルギー反応が起こることがある
    • 中には窒息の危険のある症状も含まれる(アナフィラキシー
    • 同じ種類のハチに2回目以降に刺された場合に重症になりやすい
      • 1回目で体内にハチに対する免疫ができて、2回目に刺された時にその免疫が活発になりすぎてかえって強いアレルギー反応を起こしてしまうことが原因
      • 一度刺された後に、それ以降も再び刺されるリスクが高い人(ハチ駆除業者の方や、山林で仕事を行う方など)の場合、アナフィラキシーを起こした時に備えて自分で打てる注射製剤(エピペン®)を持っておくという手段がある

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)の症状

  • 刺された箇所の異常
    • 痛み
    • かゆみ
    • 腫れ
    • 熱をもつ
    • しびれ など
  • 刺されたことをきっかけに生じる全身のアレルギー反応(アナフィラキシー
    • 全身のかゆみ、じんましん
    • 息苦しさ、声枯れ
    • 胸の締め付け感
    • 腹痛、下痢
    • 意識がぼんやりする、錯乱する
    • 力が入らない など

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)の検査・診断

  • 局所の腫れと、ハチそのものの目撃状況から判断する
  • 刺された虫がハチだったかどうかを、検査で調べることは難しい
    • ハチと同じように大きく腫れる原因となりやすい虫には、アブやムカデなどがある

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)の治療法

  • 初期治療
    • ミツバチの場合には毒針が傷口の残ることがあり、速やかにつまんで引き抜く
      • 毒針をつまむことで余計に毒が入ってしまうという心配はないとされている
    • 手足を刺された場合には患部をなるべく心臓よりも高く挙上しておく
    • 刺された患部は冷却する。温めてはならない
    • 手や腕を刺された場合には、後から腫れてきて問題になることがあるので、指輪をつけている場合には直ちに外す
  • 軽症の場合の治療
    • 塗り薬(主にステロイド薬や抗ヒスタミン薬)や痛み止めの飲み薬を用いる
    • ハチの種類に応じて、症状が強くなりそうな場合には、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬も追加する場合がある
    • アナフィラキシー症状がなく局所の症状のみであり、痛みも大したことがない場合には、必ずしも医療機関を受診する必要はない
  • アナフィラキシーを起こしている場合の治療
    • 呼吸が苦しい、意識が低下してぼーっとするなどの症状があれば、直ちに救急車で病院を受診して治療を受ける
    • アドレナリンの注射を行った上で、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬を使用する
    • 同時に点滴を行い、血管内の水分を補う
    • 軽い急性のアナフィラキシーであれば数十分で改善することが多い
    • 重症の場合は亡くなることもあり、半日から1日ほどは油断できない。程度によっては入院が必要となる
  • 再発予防
    • 虫除けスプレーなどはほとんど効果がないとされている
    • 一度刺された後に、それ以降も再び刺されるリスクが高い人(ハチ駆除業者の方や、山林で仕事を行う方など)の場合、アナフィラキシーを起こした時に備えて自分で打てる注射製剤(エピペン®)を持っておくという手段がある

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)の経過と病院探しのポイント

ハチ刺傷(ハチ刺症、ハチさされ)でお困りの方

ハチに刺されて症状が強い方は、受診先として皮膚科や外科クリニックをお勧めします。刺された箇所の痛み、腫れ、かゆみ、しびれといった皮膚表面の症状が一般的です。しかし2回目以降、同じ種類のハチに刺されるとアナフィラキシーといって強いアレルギー反応が出ることがあります。呼吸苦やのどの詰まり、腹痛や下痢など、アナフィラキシーのような反応がある場合には、すぐに救急車を呼んで下さい。

アナフィラキシーを予防するためにはアレルギー専門医と相談の上で応急処置としてのアドレナリン自己注射キットを処方してもらうこともあります。

ハチ刺傷の診断に有用な検査はなく、問診と診察で診断をつけます。患者さんが刺されたハチを目撃していない限り、後から原因がハチなのか、その他の虫なのか、それ以外なのかを判断することは困難です。アブやムカデといった虫でも同様の症状が出現します。特にCTなどの検査を行うわけではないので、診断のために大病院を受診しなければならない、ということはありません。

刺された箇所の痛み、腫れ、かゆみ、しびれといった皮膚表面の症状のみの場合は、軟膏と内服薬が治療の中心です。しかし例えばハチ駆除が専門の方、山登りや森に入ることが多い職種の方や趣味のある方などは、ハチに複数回刺されるリスクがあり、アナフィラキシーに注意が必要です。このような場合にはアドレナリン自己注射キット(商品名エピペン)といって、万が一の際に自分で足に注射するための注射キットがあります。医療者ではなくともマニュアル通りにやれば自分で確実に注射ができるように工夫されたものです。山中でハチに刺されてアナフィラキシーになったら、そこから下山して救急車を呼ぶのでは対応が間に合わないため、このようなものが用意されています。

このアドレナリン自己注射キットを処方するためには、医師も事前に講習を受けて登録をしていなければなりません。どの医師でも処方できる薬ではないため、受診する際には事前にエピペンの処方が可能かどうかを確認しておくと良いでしょう。アレルギー専門医であれば処方できる医師は多いですし、皮膚科や救急科などでも対応が可能な医師がいます。

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