そうぼうべんきょうさくしょう
僧帽弁狭窄症
僧帽弁が狭くなってしまった状態。左心房から左心室へ血液が流れにくくなり、左心房に負担がかかり症状が出る
11人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta 僧帽弁狭窄症のQ&A

    僧帽弁狭窄症の原因について教えて下さい。

    僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間に位置する弁です。その僧帽弁の狭窄により、左心房から左心室への血流の流入が妨げられている病気です。原因としては、リウマチ性のものが最も一般的ですが、僧帽弁や弁周りの組織の石灰化、先天性の弁奇形、結合組織病などによっても生じます。

    僧帽弁狭窄症のメカニズムについて教えて下さい。

    僧帽弁は、左心房が収縮すると開いて左心室へと血液を送り込み、また左心室が収縮すると同時に閉じて左心房へ血液が逆流しないように働いています。僧帽弁が開きにくくなると、肺および左房から左室への血流の流入が妨げられ、左房の圧が上昇し、肺の血圧も上がり、肺高血圧、肺水腫、さらには右心不全を引き起こします。また左室に入る血流が減り、心臓の拍出量が減少するため、左心不全をひきおこします。

    僧帽弁狭窄症が発症しやすくなる、または僧帽弁狭窄症の人が他に注意すべき病気はありますか?

    僧帽弁狭窄症では、左房で血流がとどまり、左房内に血栓が生じやすくなります。また、左房が大きくなるので心房細動という不整脈を起こしやすくなります。そのため、血栓が脳や末梢、他臓器の血管に入り詰まらせると、脳梗塞や末梢・他臓器の血管の塞栓症を引き起こすことになります。特に脳梗塞により片麻痺など神経症状が出現します。

    僧帽弁狭窄症は、どんな症状で発症するのですか?

    呼吸困難、動悸、ときに肺のうっ血症状(喀血など)といった症状があらわれます。疲れやすく、チアノーゼもみられます。心房細動による脈不整を感じることもあります。病状が進行していると肺高血圧をきたします。

    僧帽弁狭窄症は、どのように診断するのですか?

    確定診断は心エコーでなされます。心エコーで僧帽弁の面積の減少、僧帽弁の開放制限、弁周囲の構造の変化を確認します。また左房血栓の確認には経食道心エコーを行います。(経食道心エコーは口からプローブを挿入し心臓の後ろの食道から観察します。) 胸部X線像では、左房の拡大がみられます。進行すると、肺動脈、右室右房までも拡大します。心不全をきたすと肺うっ血や胸水が出現します。心電図でも左房に負荷がかかっている所見がみられます。

    僧帽弁狭窄症の、その他の検査について教えて下さい。

    聴診上、心臓の底辺で(心尖部)心音が大きく聞こえ(Ⅰ音亢進)、心臓の拡張期(心臓が拡大し、血流を取り込むタイミング)に血流がうまく左房から左室に流れ込めないため、心雑音(低調なごろごろとしたランブル音)が聴取されます。また面積が狭くなった僧帽弁が開くのは硬いため、僧帽弁解放音が聴かれることもあります。

    僧帽弁狭窄症の治療法について教えて下さい。

    薬物療法としては、利尿薬を使用し、肺うっ血や浮腫を改善させます。また心房細動に対しては、不整脈薬のほかに血栓予防として抗凝固療法を行います。 手術療法としては、重篤な症状や肺高血圧があったり、僧帽弁の面積が有意に狭くなっている場合(僧帽弁の通り道の面積が1.0cm2未満)は、弁を置き換える僧帽弁置換術または弁を切開する交連切開術を行います。 カテーテル治療として、血管内にカテーテルを通し、僧帽弁まで誘導し狭くなった弁口をバルーンを膨らませて開かせる方法もあります。(経皮的僧帽弁交連切開術)

    僧帽弁狭窄症の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    手術療法にて、僧帽弁置換術を行う場合、置き換える人工弁は2種類あります。カーボンやチタンから作られた機械弁か、ウシやブタの心臓弁を加工した生体弁です。生体弁の場合、血液が弁にこびりついて血栓化してしまう可能性はとても低いです。そのため、血液が固まらないようにする抗凝固薬という薬(ワーファリン)は、術後数か月たてば不要になりますが、機械弁の場合は、常に血栓ができる可能性があるため一生飲み続けなければなりません。

    僧帽弁狭窄症に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    とくに心房細動を合併している場合など、血栓のコントロールが重要となってきます。抗凝固療法は、効きすぎると出血しやすくなり、逆に効果が不十分だと血栓ができてしまうので、適切な効き具合を維持するよう常に採血等でチェックしなければなりません。また、進行した僧帽弁狭窄症では、労作時に呼吸困難やチアノーゼが悪化しますので、激しい身体活動は避けた方がよいでしょう。

    僧帽弁狭窄症は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    手術が行われた場合、合併症が起こってしまいそれが後遺症となる場合もゼロではありません。たとえば、心臓の手術操作中に脳の血流に血栓が入ってしまい、脳に器質的な障害が残ってしまったり、置換した人工弁がうまく機能せず心不全を発症したり、手術中からの他の臓器の血流障害で臓器が虚血に陥ってしまったりといったケースが考えられます。